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2011_08
14
(Sun)18:09

tit:龍の棲む30 [あとがき:新月の時系列]

 龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入

= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
= 20 = 回天
= Epilogue =
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

[あとがき]です。

長い間お読みいただき、ありがとございました。
最初のアーティクルを見てみると、4月にスタートしていますから、私にしてもとても長い連載になったと思います(もっと長いのはあるのですが、これは紙ベースでした)。

 blog連載というのは面白い手法で、これはインタラクティヴなんだなぁと思います。
 読者の皆さまと、やり取りしながら進めていくのが楽しい。もちろん、それゆえの不備もあり、あとから直したり(こっそり)もしていますし、こっそり「××は…」とお知らせしてくださる方もいらっしゃる。感謝感謝です。

 アップするたびに数人の方々から拍手コメントをいただくのも楽しかったし。
 実は、まぁそのおかげで完成したようなものですな。細かいエピソードなどは、少しすっ飛ばしたものもあります(臨場感を出すためと、「説明」しても仕方ないでしょ。<これは私の物語作りの基本方針)。「全編版」を出すのはまた紙かなんかに落とす時にして、これはこのまま完結としたいと思います。

                    ・・・
 さて、いただいたコメントにもありましたが、最近、お読みになるようになった方たち(ここ1年ほど)には、新月の、複雑に絡まった物語群はわかりにくいのかもしれません。
 たいていの人には興味がないだろうと、ワタクシ、勝手に思っていたのですが、案外に好評だったり、尋ねられたり怒られることも多くて(^_^;)(<これは実際にお逢いする人ね)、ここで少し簡単にご説明しておこうと思います。
 前の「続きを読む」では、【この物語時点での現状】をお知らせしましたが。
 コメントいただいた某さまも仰っていたように、この「エピローグ」との古代とデスラーの会話は、今後の銀河を占う試金石なんですよ。

 コダイススムは盟約の要にいる

 これは、『ヤマト3』において、古代とデスラーの、ある種の友情というものが決定的になった。それを示唆したのは、『完結編』で、重水を積んでふらふらになったヤマトの前に、「戦闘は引き受けた、ヤマトはヤマトの仕事をしろ」(そう言ったわけではありませんが)とデスラーが立ちふさがる…この時点で、彼は地球を二度、(実際は三度なのですが)救っている。
 かつて自分がツブそうとした相手を、です。
 それは、古代進と、亡き沖田や自分の懐にいたドメル、そうしてヤマトの面々やスターシャ故なんでしょうね。

 それがヒントでした。
 それ「だけ」が、といってもいいかもしれませんが。

 さて、生き残って『艦載機隊の長』となり、月基地=地球の最終防衛線を統括している加藤四郎と、うちのキャラクターでヒロインである佐々葉子は、2208年、本当に本当の意味で結ばれます。つまり、葉子が「四郎の子ども生んじゃおっかな~♪」という決心をし、勝手に手配して(だまくらかすともいう)妊娠しちゃうわけですね。これが、加藤大輔という長男坊。
 新月worldでは、次世代の主役の1人で、もう1人の主役は、長男・古代守ではなく、次男坊・古代聖樹(こだい・せいじゅ)です。よりオリジナル度の強い話で、次世代以降はもはや、「ヤマトをベースにした世界の中にあるオリジナルの物語」ともいえるんですが、ただし、実際、この世界からヤマトを取ったら何も成立しない、という矛盾を抱えています。

 この戦後の世界、「島大介を失った古代進」の物語であり、
 「加藤三郎を失った佐々葉子」の物語
 だからです。

 思えば、暗い(^_^;)。

 加藤大輔の名前は、もちろん、佐々の親友であり大切な男だった「島大介」から貰っています。どう“大切”だったかは、本編読んでください。わかりにくいです。でも、男女の恋愛じゃありません。しかも、その「名前をくれないか」と言った相手は古代進です。守はすでに生まれていましたから、もしかしたら次男坊の名前は本当は「大介」にしようと思っていたのか、、、それとも。いや私は古代は自分の息子にはその名は付けなかったと思っているんですよ。男の子三人居たら、三人目は「三郎」だったかもしれませんけどね(笑)。

 2208年に加藤大輔が生まれ、この頃、加藤四郎は月基地の若い総司令を任命されます。この年は出産ラッシュで、南部家に南部勇人が、相原家に相原祐子が生まれて、三人は同級生として育つ設定です。
 同じ年、2208年から2209年にかけて、本文中で出てくる『新・ガルマン=ガミラスへの大遠征』が行われます。これは、真田志郎を遠征隊長に、古代進が護衛隊長に、地球連邦政府から正式の通商条約開通への使者で、ここで“対等条約”を結んで古代らは帰還する。
 このときの条約が、「日米安保条約」と貿易条約を足したみたいな条約なんですな。

 銀河系中央域での星間帝国間の争いは、地球-テラ系を含む“オリオン腕”には手を出さない。その場合はガルマン=ガミラス帝国の艦隊をもって阻止する。
 その代わり、一定の自由貿易を許可する。

 ・・・果たしてこれが対等条約なのかどうかは、距離があまりに遠いので現場判断に任せるしかないのですが、これにまつわるいろいろな話も、作ろうと思えばできますって、はい。現に古河くんとかが…(むにゃむにゃ)
 
 2209年、古代聖樹誕生。
 2210年-2211年は、古代・相原・真田・島次郎その他何人かの元ヤマト隊員とその弟妹たちがアンドロメダへ長征を行う、、、というプチ長編が挿入されます。新月worldの最も古い物語、ベースになった1979年ごろ書いたもので、「完結編」以前ですから島大介が生きていまして。外には出せませんでした。リライトして連載にする手もあるのですが、、、ちょっとまぁ考えさせてください。完璧に「70年代SF」してます(<あうあう)。土門竜介みたいなヤツが出てくるし、徳川愛子ちゃんも大活躍する(16歳設定)。時々、わがwoldに名前の出てくる聖樹の艦隊の長・東克彦は、この時の主人公で、島次郎の親友です。
 
 そうして、古代守・聖樹の2人、加藤大輔・飛鳥の兄妹、南部の末娘・瑞希、相原の長兄・航(わたる)、太田の三姉妹のうち次女。物凄い割合ですが、次世代を次ぐ者として地球防衛軍に入隊します。もちろん全員が戦闘員ではなく、相原航と太田詩織は航行部ですけれども。
 「留学」が実現するのは、関係者の間では遅いです。真田の家の双子の男の子の方、太田の娘のうちの1人。ただしここらへんは「三日月設定」なので、直接私は書いていません(その「出発」の話は発表済み。三日月小箱の中に掲載してあります。相当に後の話ですね)。あと、南部瑞希はガミラスへ行き、数奇な運命を辿ります。

 古代聖樹加藤大輔は、名コンビとして知られるようになり、「防衛軍の若鷹たち」と呼ばれて大人気…という短編はいくつか書きましたっけ。その中心になった話は、NOVELに置いてあります 「時空の果て」 です。
 このとき、彼らはすでに「第三次星間戦争」に加わっていまして、ガルマン=ガミラス艦隊と共闘して敵に当たっている様子がちらりと書いてあります(この作品書いたのって2006年ですからねぇ。最初から設定済み)。

 星間戦争が起こる顛末は、間接的にですが、相原祐子のGrowing Upに書いてあるのですが、ちょっと探してみたところ、リンク切れしているようです。読みたい方がいらっしゃれば、またアップいたしますので、どうぞ。
「タイムアウト」「風が吹く」とかそのあたりです。祐子のLoveものですから、あまり人気はなかったんで、下げちゃったかな。
 ところで、先にオチを言ってしまって申し訳ないですが、祐子というのは時空の間にぽつ、ぽつとしか登場しません。彼女を主役にした話はもちろん多くないです。しかし時代の変わり目にいる。なぜなら、彼女はその先、従軍記者となって、戦場に行き、かつて父が「見て・その中にいた」戦場を、第三者の目で見続けるからです。

 星間戦争勃発は2229年。
 そういうことになっています。

 古代進は不思議な立場にいる。地球の中枢で偉くなっていくには、あまりにも複雑な背景を持っているのでしょう。ずっと宇宙へ出ている。下手すりゃ前線に立っている。ただし、2229年以降しばらくは地球にいて、采配を振るいます。
 この「星間戦争」には、古代自身は戦いに行きません。ね? 斬新でしょ?(笑)
 そのかわり、息子たちが戦うんです。こりゃ辛いですわよね。守も、航も、聖樹も、大輔も、飛鳥も。瑞希は遠くまで行かない部隊なので行きませんが(南部のとーちゃんが裏で手を回した説あり)。

 デスラーたちは努力したが、10年はもたなかった。
 こうして古代守や加藤大輔らの成長に従って、銀河は再び戦乱に巻き込まれていく。。。あぁ、暗い(^_^;)。

 ところで、守くんが大人になってからの主役の話は、これでおしまいです。
 うち的には彼は「子ども」「少年」時代は主役を張りますが、あくまでもそれ、「古代とユキの息子」役だったり、「子どもたちのお兄さん・長男」的役割だからです。
 もう1本だけ、相棒である相原航との士官候補生時代のエピソードがありますが、それだけです。
 こんなに働かせる予定じゃなかったのに(笑)。

 その分、次男坊と古代・父は凄いことになっとりますが、、、それはまたどこかの時空でってことにいたしましょう。

 どうも、お読みいただいてありがとうございました。
 こぉんな長い「あとがき」を書くのも、blogだということで、お許しください。ではでは(_ _)★
2011_08
11
(Thu)09:50

tit:龍の棲む29 [回天-開戦前夜]

 龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入

= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
= 20 = 回天
= Epilogue =

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= Epilogue =

 古代進は戦艦アクエリアスの艦長室に居た。
 基地のドッグに出発を待つ艦(ふね)は静かで、現在はまだ人の気配もない――。
全天ドームの向こうに土星の輪が、何重にも、細く、蒼く、縦に見えた。

 そうして古代は艦長席に座ると、傍らの小さなパネルを操作する。
目の前には赤いワインと、グラスが置かれていた。
 ぴぃん、と微かな音がした。『――古代司令、ご準備よろしいでしょうか。入電、つなぎます』「あぁ……つないでくれ」
 古代は椅子にゆったりと背を持たせると鋭い眼差しで前方のスクリーンを眺めた。そこに白い光が差したと思うと、突然、空間がつながったように別の宇宙空間が写る。
ある意味、懐かしい光景だった。

 『――古代か……』
「デスラー……」
『老けたな――いや、貫禄がついたというべきか。あれから何年になる』
次男・聖樹の年齢の分――17年が経っていた。
「17年――直接お会いしたのは、あれが最後だったか」
『――そうか』デスラーは相変わらず端正な顔立ちをしていた。年齢の片鱗は感じられたが、老いたという印象はない。地球人年齢で図れるものではないと知りながら、その胆力と気力に、古代は知らず体に力が入るのを感じていた。
 『君は、幾つになった――』
「――40を過ぎた。地球人の年齢では人生半ばというところだろう」
『……』ふっとデスラーは笑い、だがその表情は微笑みというようなものを湛えている。
『――“ヤマトの坊や”も、立派になったな』「なにをいまさら」古代も笑い、デスラーと顔を見合わせた。
 再会を祝して乾杯といこうか。通信のあちらとこちらには何万光年もの隔たりがある。銀河系中央域の対蹠点に新帝国を構えるガルマン=ガミラスは、第二の地球探査の時代より、さらに地球から遠くにあり、だが確かに大きな帝国星団の一方として銀河を統べていた。だが以前と異なるのは、ただ力で征服するだけでなく、連盟とでもいうようなものを形成している。もちろん中央政府を占める二つの民族の直接統治国家は、元のガルマン=ガミラスの性質を持ってはいたが――平和裏に繁栄しているといっても過言ではない。
 少なくとも地球と帝国星は盟約を結び、それは17年間保たれてきたのだ。“大遠征”と名づけられたそれは、元のヤマトのメンバーと中央政府の代表者、通商の大手が船団を組み、半年かけて本星まで交渉に及んだ。それ以降、互いの盟約は護られて来、地球を含むオリオン腕は彼らの政治力によって、銀河系の争いから外されてきたといってもよい。
 地球は――そういった意味では、まだ弱い。
 そうして強くなるべきなのかどうか、古代進には答えがないままである。

 『……このたびは世話になった。礼を言わなければと思ってな』
デスラーからの会話依頼が入ったのだった。古代と2人で話したい、と。
古代進側にも、連絡を取りたい意志がある。それはこの先、もしかしたら太陽系の平和を続けていくための重要な会見になるかもしれなかった。
――そうして、まるでごくプライヴェートな通信のような、この会見はセッティングされている。
「こちらこそだ、デスラー総統。われわれの政府に反発を持つ者との内輪もめであると認めていただいて、感謝している」
デスラーはじっとこちらを見ていたが、グラスに口をつけると微かに首を振った。
 背後には彼が新・スターシア星と名づけた星が今でも見えていた。
当時のガルマン=ガミラス総統府とは異なるため、その窓から見える景色は異なっている。実際、古代たちが訪問した時の新帝国は、巧妙に似せてはあったが違和感があった。だがそこにデスラーはもう20年以上も君臨し、着実に帝国を築いてきたのだ。
 その繁栄ぶりを見る限りにおいて、彼がただの暴君ではなくなったことが察して取れる。そうして外交手腕や宇宙全体を見通す目も――。
 生き様は相容れない。これは古代進がいかなデスラーに心を寄せたとしても、譲ることのできないものだった。だが武人として、認めざるを得ない力量や、人の大きさとして。古代はデスラーを尊敬しているといってもよい。
『――私たちの方は、“不問”というわけにはいかなかったよ』
え、と古代は顔色を変えて見上げた。
「われわれには――地球には、私心は無い!」
此処が肝心だった。地球は現在、他の星系とことを構える気などないのだ。
デスラーは片手を上げてそれを制した。
『わかっている、古代』まぁ飲みたまえ、と酒を促し、古代は一口、グラスを口に運んだ。
『――もともと不穏な動きのあった地域で、監視をつけてあった。今回のことで対処ができる。情報を感謝する』
 以前のデスラーなら、その星ごと吹き飛ばし、担当の者など指の一振りで銃殺にしてしまっていただろう。それだけでも、抱えているものの大きさが違うと古代は理解している。

 『――事前に防いだのは貴方の息子だそうだな』
「デスラー……」話題を転じた彼に古代は驚いた。どこからそのような情報を得るのか。もしかして、あの戦い自体、すべて監視されていたのではないか、そのような恐れさえ覚える。呑まれてはいけないと思いながらも。
『古代、守。――といったか』「あぁ、そうだ。長男で、今年、そちら方面へ向かう艦隊に所属になった。アリオスという艇の艇長だ。お見知りおきいただけると嬉しい」
そうか、と頷くデスラーは満足げに言った。『ユキとの子か――ユキは元気か』
「あぁ。ぴんぴんしてるよ、地球でだがね」
立派な息子だなと言い、そう言ったのは。『――私の子らも艦隊指揮官として各地へ出ている。今回は次男の窮状を救っていただいた結果になった。多くは言えないが、そういうことだ。感謝している』
それではデスラーにも子どもがいるのかと古代は思った。
『――わが星に留学しては来ないか。近々そういう制度を作ってもよい。地球人も、宇宙の隅っこで護られてばかりいないで、こちらへも出てくる義務がある――次世代にそれを託す人材がいれば、送ってもらえば、優遇する』
デスラーのその言葉は、多くの意味を含んでいた。

多くの情報が提示され、古代は一筋縄ではいかない、と思った自分の思いが間違いでなかったと実感する。
「デスラー。……ひとつ、聞きたい」
『なんだ』
画面上のデスラーは、饒舌だった。その言葉と裏腹に少し寂しそうに見える。王者の孤高は彼の特徴の一部ではあったが、さらにそれが色濃く見えたのは古代の感じすぎだっただろうか。
「――そちらは、平和なのか。戦いの種は、無いのか」
じっと黙ってデスラーは古代を見た。
 『――いまは、まだ。数年はもつだろう。地球にも影響があるとは思わない。だが、私たちが成功しても10年以内に。もし失策をおかせば数年内外には――戦いになるだろう』
「デスラー!」それはあまりにもありがたくない予測だった。
『銀河の状況は芳しくない。……ひとつの勢力が力をつけつつあり、われわれはそれを、武力で押さえようか、それとも政治で取り込めるか、真剣に議論している。われわれは大きくなり、もはや以前の武力星間国家だけではいられないからだ』
護るべきものができた――そうしてデスラーはもう二度と。あの、ガミラス本星崩壊から消滅に至るまでの絶望と、新しい大地・ガルマン=ガミラス喪失のような想いを、自分たちの国民に味わわせたくはないに違いなかった。
 開戦前夜――。
 今回の事件は、その火種にはならなかった。古代も、デスラーも。それを回避することができたのだ。
 だが次は――?

 第三次星間戦争への予感が、まだ形無く、古代進の胸の裡に広がっていた。
「デスラー……われわれは」
画面の向こうで彼は頷く。
『時間が、ないのだ。――古代。協力してほしい』
古代進は頷かざるを得なかった。
 自分勝手といわれようが、地球をそこから引き離しておきたかった。できるだけ長く、できるだけ遠くに。銀河系中央で済むものならば、そこで。
銀河系中央域へ飛ぶ遠洋航海艦隊と、自分たち――太陽系外周艦隊。新しい時代が近づいてこようとしていた。 

【End】
――09 Aug, 2011

= あとがき = へ)
2011_08
10
(Wed)09:10

tit:龍の棲む28 [回天-開戦前夜]

 龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入

= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
= 20 = 回天

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 後には古代進・守父子(おやこ)だけが残された。――
 椅子の上で身じろぎもしない進と、じっと立って一点を見つめている守。

 父親の方が先に表情を崩した。
「……よく、やったな。初陣の勝利、おめでとう」
古代守には言いたいことがたくさんあった。
怒り、安堵、そうして安心と喜び。それらが交錯し、また(めったにないことだが)自分と相手の立場も混乱して、そのままだったのだ。
――無事だった。これまでならどんな場面でも、父は息子をかき抱き、彼はその父の腕に包まれることを躊躇したことなどなかったのに。
 「どうした? 艇長兼作戦リーダーとして、存分な働きをした。よく統率し、作戦を成功させた。初陣としては立派な士官ぶりだったと聞いている。――だから、おめでとう」
 そうだ、初陣だった、と古代守は改めてその実感を感じていた。

 古代進を守れる男になりたい。
防衛軍に身を投じた理由として、それが最も大きかった。
まさに初陣でその機会に恵まれ(?)たこと、感謝しなければならないのだろう。
確かに、守れた。彼は無事、目の前に居る――だが。だけど。
 「古代司令……」口をついたのは低い声のつぶやき。
「……私は、怒っているんです、わかりますか」他人行儀な言葉が出た。
訓練学校へ入ると、親子兄弟だろうが地位が違えば上官下士官である。
ましてや“雲の上の人”古代進――こうした口調に慣れて、もう何年にもなる。
母がその場にいたら驚いたかもしれなかった。
 「……守」
今度もその“約束”を破ったのは父の方だった。
「勘弁してくれ――心配をかけた。済まない」
素直に彼は頭を下げる。守は怒りと動揺で、何故か、今頃からだが震えてきた。

 「……ひどい、よ」
古代が顔を上げたとき、息子は顔を伏せ、手を震わせていた。
「――どれだけ。僕たちが、どれだけ、心配したと思ってるんだ。いくら父さんが危地に強いからっていっても――僕たちは全滅したって父さんを助けなければならなかったんだよ? 自分でゲリラみたいな真似するなんて。艦隊司令だろ? 父さん」
「……」
古代は初めてゆっくりと笑った。
――息子に叱られたのが嬉しかったのだ、といえば、また守の怒りは倍増するだろうか。
「――大きく、なったな」
「ふざけないでっ」
「……ふざけてなど、いない。お前は立派な艇長で、艦隊のリーダーの一人で、立派な、宇宙の男だ。それを喜ばない親父がいるか?」
「――僕は。僕は、父さんが無事ならそれでいいんだ。……だけど、貴方の勝手な行動で、どれだけの人が心配したと思ってるんだ」
 くすりと古代は笑い、すまんすまん、と言いながら椅子からゆっくりと立ち上がった。

 慌てて守は彼に近づく。
怪我してんだろ? そうして腕を取って、もう一度椅子に座らせる。
「――守。お前こそ無事でよかった。私の無茶な行動で皆を混乱させたのなら、済まん。だが、私にも使命があった」
(わかってる――だから)
誰よりも、それについてはわかっている古代守なのだ。
それでも。もっとほかの方法はないのか? だが、こういったときに、そう動くからこその古代進なのだと。
――守は母・ユキの気持ちがいまさらながらによくわかった気がするのである。

 「守――抱かせてくれ」
すいと手を伸ばし、守はその腕の中に包まれた。
「大きくなった……立派になったな。もう、私がお前を頼りにしてもいいようになったんだな――」
「父さん……」
 ぎゅ、と抱きしめられて。もう何年ぶりのことだろう?
 はっと気づいた。古代は守が訓練学校に正式入学してから、こういう行動を取ったことは無かったのだ。
そういうことにも今、初めて気づいたのだった。
「嬉しいよ……だが。俺がこういうこと言うのは矛盾してるからな、内緒だが…」
古代の声は少しかすれているようだった。温かさが体にしみた。
「――死ぬな。初戦を成功させた、なんていうのが一番危ない。お前自身もだが、大切な人を失うことにもなる。臆病でいいんだ――慎重でいろ。それが良い上官だ」
「父さん!?」
 古代進がそんなことを言うなんて、意外だった。
「死ぬな――生きて、無事で務めてくれ。私や、母さんを悲しませないで」
「はい……」
守は手を伸ばして父の背中に触れた。大きな、追いかけているときは果てしなく遠く、大きな背中だった。
いま、こうして向き合うことも触れることもできる背中だった。

            ★
 古代は丸2日ほど養生すれば大丈夫だというので、その夜だけ守はそこに同宿することにした。

 日向と古河が戻ってきたときは、テーブルを挟んで仲良く酒を酌み交わす2人の姿があった。
「艦長っ! まだお酒はダメですっ!!」
日向が慌ててつかつかと近づき、グラスを取り上げる。
「おぅっ!? いいだろ? 息子の凱旋祝いだ。1杯くらい飲ませろ」
「だめですっ。1杯なんてもうとっくにお飲みになったでしょ?」
ね、と守の方を向いて日向は言う。守も苦笑して頷いた。
 良い人々に囲まれている父だった。
「なぁ守。こいつはお前より口うるさくておせっかいなんだ。人の面倒ばっかりみてないで、早く嫁でも世話してやれって言ってんだが」
「艦長ぉ~~。そんなこと仰っても出ていきませんからねっ。俺は、皆さんによぉっく見張っててくれって頼まれてんですから」
「――それが率先して艦長と一緒に飛び出してんだから世話はねぇや」
古河に茶々入れられて、泣きそうな顔になった日向である。
 わはは、と笑いながら、
(父さんの下で働くっていうのもいいな――キツそうだけど)と思った守である。
だが自分は絶対にそういう立場になることはない。――この命令を与えた風間巳希もそうだったが、遠くから見守り、いざとなった時に守れる立場でいること。
その方ができることが多いと思うからだ。
(――日向さん、頼みます)
こっそり胸の裡に言って、飛ばした目線が、たまたま日向と合った。
――通じた、のかもしれない。守より少しだけ年上の彼は、微かに頷いたような気がしたからだ。
目に光があった。

 無事は伝えた。
 報告書も簡単だが、送った。作戦は成功だ――。
だが、詳しく逢って話さなければならない人々がいる。皆、彼らの無事を祈っている者たちだ。
 母・ユキにはどこまで話しても良いのだろう? いやきっと、何も言わずにおくのかもしれない、と思う。
父が話すだろうから。
 風間少佐――自分を信じ、擁護してくれる先達。そうして父を遠くから護る人。
あの人には、伝えておかなければならないことがたくさんあるような気がした。

 古代守は、近づいてくる時代の足音を確かに聞いている。
宇宙にうごめく不穏な気配と、地球の周りでのざわめきを。
 銀河系へ出向く時期が来ているのかもしれない――遠く、彼方へ。
 父(かれ)や、大切な人々を守るために、自分はより遠く、宇宙へ向かうのだと。
それは守の直感だった。

= Epilogue = へ)

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2011_08
10
(Wed)00:15

tit:龍の棲む27 [回天-開戦前夜]

 龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入

= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
= 20 = 回天

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 20 =

 アクエリアスに収容されたメンバーは、傷の手当てを受けていた。
もちろん、潜入戦と情報奪取、敵工作に大活躍した日向はじめとする近藤・柴田らも怪我をしている。
 古代は“司令としての務め”を盾に、軽い治療(痛み止めと壊死防止)を受けただけで艦橋に立っていたが、実際はかなりの怪我と疲労で、それだけでも相当な気力を要するはずだった。
だが誰が言っても聞かないことも部下たちは周知だったため、事後処理は、なにをそんなに急ぐのだというようなスピードで行われた――部下たちの差配である。

 そうして、その小さな艦隊は、アリオスの一行に守られ、ヘクトルとも合流して土星基地へ一時帰還した。

                 ★
 古代進の与えられた使命――目的は、一応、達することができた、という報告ができるだろう。
資料はすぐに折り返した土星の基地から厳重なシークレット通信のもとに転送され、本部から照会が行われた。
 “星の石”とされた組織の背景につながっていたと思われる某帝星へも照会がされたが、先方は
「なんのことだかわからない。ガルマン=ガミラス帝星連盟の一員であるわれわれにはまったく意味のないことだ」
と言われ、それを全面的に信用することはできないまでも、今回はその危険は去ったと考えてよかった。

 そうして、土星の輪の間に浮かぶ中間基地――外宇宙への要衝であり、古代たちの艦隊のサブステーションもある――で、ようやく本格的な治療を受けることになった古代進の許を、アリオス艦の数名が訪れた。
 宇宙空間で邂逅し、共に引き上げてくる中では、通信で簡単な会話をしただけだったのだ。

                 ☆
 「入ります」
 事務官の先導を受けて、古代守を先頭に数名が入室した時、古代進は広い部屋の中央にあるベッドの横に椅子を置き、そこに姿勢よく座っていた。
 その脇には古河大地が、部屋の中には日向が居た。
――柴田と近藤はまだ資料の解析に借り出されており、艦の中で治療を受けたと思うと基地に着いた途端、借り出されて戻れないでいるらしい。
 よぉ、と表情を緩めて片手を挙げ、気軽な風情で古河が守に声をかけた。
 ニコと笑顔を見せ、だが軽く敬礼を返して、古代守は父・進の前へ立つ。

「――司令。ご無事でなによりです」
口調は、固い。揃って頭を下げた時、古代進の目にはなんともいえない、微笑というような表情が浮かんだがそれはすぐに消え、守たちが頭を上げたときは、もとのいかつい無表情に戻っていた。
 「このたびは、苦労をかけた。礼を言わせてもらう――」
古代進の言葉は、守のみでなくアリオスのメンバー皆に向けられていた。
はっ、と生真面目に敬礼する一同。
「お怪我は」
 守が口を開かないので、察した下野が部下を代表して古代に話しかける。
このあたりはベテランの特権とでもいうもので、通常の上下関係ではあり得ないが、ヤマト出身の古代たちは、戦場を離れてしまうとさほどそういったことを気にしない方だったろう。
「――大したことはない」
そう言う表情が無表情のままだったので、息子の古代の方の眉間に皺が寄った。
「本当ですか?」
さらにそれを察して下野が問うのに古河が口を挟んだ。
 「古代艦長――皆が困ってるぞ。意地張らないで説明してやったらどうだ。ん? 皆さん、貴方のために此処まで命がけできたのだからな」
まめに世話を焼く、という風情でそこにいる日向も苦笑する。
「そうですよ、艦長」
その場で一番若い日向が口を挟んだので、皆が一瞬彼に注目した。
あ、という顔をした日向だが、それくらいで遠慮する男でもない。
「――敵基地に捕らわれていた時の仕組みで腕にヒビが入っていたのですが、奇跡的にほかに大きな傷はありません。ご無事、という意味で言えば言葉の通りですから、皆さん、ご安心ください」
言葉は慇懃だが、声は笑っている。
「ただちょっとご無理なさったので、お疲れ気味ですけどね」
な、と古河が顔を見合わせる。
 「――何か言いたいことがありそうだな、日向」
古代が仏頂面をしたので、下野まで吹き出しそうになった。
古河はすでに可笑しがっているのが丸わかりである。
「古代艇長――今回の救援隊長の方は何か文句がありそうだがな――」
古河が引き取って、
「俺たちはしばらく席を外そう。その間、面倒は艇長が見てくれるだろ? 行くぞ、日向。よろしいでしょうか、下野副長」
「はい、もちろん」
「われわれはご挨拶が済めばあとは問題ありません。ご無事を確認して艦の者も安心します」
と下野がベテランらしく答えた。
 「艇長――そういうわけでわれわれはお先に」
古代守は相変わらず固い表情を崩さないまま、頷き、言った。
「戻って報告書をデータ送信したら休んでよい。明朝0600まで当直の者を残して上陸許可。これは他艦にも知らせてよい――うちの艦隊だけだがな」
「了解(ラジャ)」と敬礼し、下野たちは古河と日向に促されて部屋を静かに出ていった。

= 20 = 後半へ)
2011_08
09
(Tue)00:02

tit:龍の棲む26 [回天-開戦前夜]

 龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入

= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 19 =

 包囲網を簡単に突破したアリオスは(もちろん古河たち先行したCT隊の活躍のおかげもあり――どうやら敵は、だいぶんビビっている模様である。積極的に攻めてこようという気力が感じられなかった)、周りの小さな艦を撃破すると、艦隊の中心部へ向かっていた。
 (なるべく犠牲は少なくしたいのだが――仕方あるまい)
 防衛軍の威厳を見せ付けなければならない、という思いもある。
反乱軍なぞ許しておいてはいけないのだ――広い意味で。深い宇宙の平和のためには。
 たとえそれがまやかしでも、父から聞かされて育ったような、そうして自分たちも繰り返し学んできたような、あんな歴史を繰り返すのはご免だった。そのためにこそ、自分たちは此処にいるのだから――。
 (何としても、阻止する!)
 父・進の援護と奪回。これがあくまでも守たちの第一義である。 
だが、そのまま引き返すような父ではなかったし、彼の目的を遂げなければ、地球の、さらに古代進自身の明日も、無いのである。
(あぁ、父さん――無事でいてくれ)。
 古代守は、出撃し艦橋に立って初めて、心の裡ででもそういう祈りをつぶやいた。

              ★
 やる気のなさそうな砲撃が返ったが当たる気遣いはなさそうだった。

 戦闘員の声にパネルに目を向けると、目前に迫った艦隊の中から旗艦がぐっとせり上がってくるのがわかった。その重量感は半端ではない。
「艇長っ!」悲鳴のような声があがり、「砲撃をっ!! ご許可ください」
「だめだ」古代守は断固としてそう言うと、その近づいてくる様を睨み付けた。

 ――似ている。何かに。

 古代守が考えていたことは形にならなかったが、実際は進と同じであった。
そのあたりはさすがに親子である。
色を変え、外の形を多少はいじったとしても砲塔の位置や全体のフォルム、その艦の持つ雰囲気というものは変えられない。
戦いの歴史を持ち、人の汗が染みたものなら、なおのこと――まぁそれは感傷に過ぎるといわれてしまうかもしれないのだが。
 守は無意識ながらも、これが既知の艦だと気づいていたことになる。
             ☆
 「古代艇長! 司令からですっ、通信が入りましたっ!!」
爆撃が始まり、味方に損傷こそ出ないまでも、戦闘が混戦を帯び始めていた。
 宇宙空間の戦闘は百人・千人単位があっさりと飛ばされる。
最小限の人数で出てきているとはいえ、父がゲリラ戦を挑んだのなら、なるべく早く奪回して戦線離脱したいのも本音だった。
 「つなげ」
守の口調は落ち着いていたが、内心では、(待ってました)というところだっただろう。
いや、(遅いよ、父さん)だったかもしれない。

 『――アリオス艦艇長、こちら、艦隊司令古代進』
「こちら、アリオス。ご無事ですか」
『遠路ご苦労です――この艦はわれわれが占拠した。敵リーダーを捕捉してある。至急、アクエリアス艦とイサス艦と協力し外から捕捉してくれ』
「了解――状況は」
『いま、データでそちらとアクエリアスへ送る。――ただいま艦橋で集中コントロールしている。外のハッチを開けるから突入して武装解除してほしい』
「了解――アクエリアス、聞こえましたか」
『――こちらアクエリアス。眞南、了解した。ただちに救援に向かう』
「こちらも2隊を向かわせます。――古河隊、周辺待機してください」
『おう! こっちも了解だ』

 その間も、周辺からの攻撃は続いていたが、転じた旗艦の動きに相手が混乱した隙に防衛軍側の他艦が押さえた。
降伏を呼びかけたが投降した者はわずかだ。
中には乗員が中でもめたのか自爆したり、動かなくなった艦もあり、指揮系統の混乱――もしくは秩序立った指揮系統が無いことを物語っている。

 戦闘は、短い時間で終わりを告げた。

= 20 = へ続く)