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2011_10
12
(Wed)22:30

"夜明け前"・1-04

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prologue・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【四.入学式】

 島大介は、堂々としたものだった。

 片目と顔を腫らしたそのまま壇上に上がり、近年稀にみる立派な答辞を述べ
て、在校生の代表(全員が揃ったわけではない――各クラスの代表だけが式に
は出るのだそうだ)たちと教官たちを唸らせた。
 その後ろに並ぶ新入生一同――百余名。

 新入生、総代――そうかこいつ。
進は改めて同室になったその相棒を見つめていた。

 軍人なんかにはぜんっぜん似合いそうもない雰囲気のお坊ちゃまくんだが、
ただものじゃない、と思った。
そして食堂での一件以来、それがあっちの連中にも幅を利かせる結果になった。

 総代の島っての、喧嘩も強いらしいぜ――
 なかなかやるな――

 全寮制のこの学校で、入学式を待たずに進と大介のコンビは有名人になって
しまった。
 まったくありがたくないことに……進の“お嬢ちゃん”というニックネーム
もそのままに。
 だがそれは古代進のまだ開花していない才能を助長することになる。


- ☆ -

 「おー、いたいた」

 何故かあれ以来、加藤三郎がまとわりついてくる。
 殴られて、逆恨みするようなヤツでなかったのは幸いだが、鶴見二郎と2人、
クラスは違うくせに、しょっちゅう懐(なつ)きにくるのである。

 訓練学校とはいえ、最初は普通の高校生と変わりはない。
寮での朝から時間割が決まっていることを除けば、少し専門性の高い専門学校と
いうところか。
入学したての彼らは、一般教養というべき高校および大学程度の科目の授業があった。
だが、午後になると少しそれらしい雰囲気がある。体力つくりのための基礎教練が
組み込まれ、これが1日目、2日目、と日を追うに従って急激に厳しくなっていく。

――体力ないとアウトだな。

(兄ちゃん、感謝だ)
 進はそう思いながら激変した環境の中に、それでも馴染んでいく。

 窓枠に寄りかかって加藤三郎が言う。
 「なー、今夜、仲良いので歓迎会するからさ、お前らも来ない?」
部屋に集まってジュースで乾杯っていうわけ。

「おう、来いよ」
行くとも行かないとも返事をするまでもなく、勝手に決め付けられて。
ちぇ、なんだよ。
そう思いながらも結局、行くんだろうな、とそう思う進である。


- ☆ -

 聞いてみたら加藤(こいつ)は二つ、年上だった。
高専に行ってたんだとかで。……飛行専門学校と航空大のくっついたみたいなやつ。
「今だったらさ。戦闘機の方が早かろ」
そんなことをお軽く言って、ひょひょうとしている。
真面目なのかふざけているのかわからないやつだ。
 加藤の仲間――といってもここに来てからだけどさ――は見るからに体育会系
のやつが多い。皆、飛行機乗りか砲術志望で――島も聞いてみたらそうなんだ
と言っていたが、やつらとはちょっと雰囲気が違っていた。

 「俺、航法もいいかなって思ってんだ。パイロットなら何でもいいんだ。
要するに宇宙に自分の手で飛んでいけるならね」
大介は言った。

 ふうん…みんな、決まっているんだ。

 進は少しびっくりする。
 敵が憎い――父さん母さんを殺したあいつらが。
その、ギラギラする、吐き気に襲われそうな想いを外に出したことはないけれど。
それでも進の底には、そのなんだかわからないけれどもマグマのような衝動があって。
 時々それに焼かれるような気がする――。
まだ、始まったばかり。
 先は、長すぎる道のりのような気がした。

くしゃ、とコップをつぶす。
焦っても、仕方ない。――だけど。



- ☆ -

 苦しかった1か月を忘れることなんかできない。
――今はこうやって、しているけど。
学校は雰囲気も悪くないし、いいやつが多いみたいだけど。
ぼくは――俺は。違うんだ。
 戦うためだろう?
 相手をぶっ殺すために、此処にいるんだろう? なぁ、そうじゃないのか!?

 「――別にさ。すぐに決めることなんかないんじゃない」

 加藤がやいやい言うので皆、告白大会みたいになっていたけれど、進が答え
ようとしないばかりかその会話に加わりもしないので、大介がそう言った。
「俺たち来たばっかりだろ。…まだ、わかんないじゃないか」
 あ、加藤は違うんだろうけどさ。航空専門学校から転校ならさ、そう言って。

 お、俺だってまだ、一般教養2年やっただけだし。そりゃ宇宙(そら)飛びてー
けどよ、その前に、あいつらやっつけないと話になんねぇ。
 ふっと真面目な顔つきになって加藤もうそう言う。

 その部屋にいたのは加藤三郎、鶴見二郎、吉岡英のほか、豊橋至(いたる)、
平田一(はじめ)。それに進と大介である。
 皆、戦闘員志望なの? ふうん。
……そう言って大介は涼しい顔をしてジュースを口に運んだ。

 案外マイペースなのな、こいつ。

 進はその様子を見てちょっと驚いた。
 自身は迷いもなく言い切るくせに。冷静なのか、慎重なのか――それとも。
あり得なそうだけど、日和見か?
静かだけどけっしてそれだけの男やつじゃない。
進は、同室がこいつでよかった、とその偶然と幸運に感謝した。

                   --pre-army I・fin

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2011_10
11
(Tue)19:57

"夜明け前"・1-03

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prologue・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【三.食堂 02】

 ちっこいなー、俺こんなのに負けたかと思うとショックだぜ。

 加藤と名乗った男がそう言うと、鶴見が
 「もともとデキが違うんだろ、ひがむなよな」と、笑いながらつつき返し
 なにおー、など言い返す処はガキっぽい。
 ――こいつらも同い年かな?

 放っとけ。俺たちまだ伸び盛りなんだからな。

 進は内心口をとがらせると、夕飯を食べる方に戻った。
それが拗ねてるように見えたのか。
「お、こっちのお嬢ちゃんはお気に召さなかったらしいぜ」
もう1人がそう言って、その“お嬢ちゃん”にぴき、ときた進は目を上げた。
――くっそ。人が気にしてることをっ。

 進は小柄である。
 いや、14歳で160cmというのはけっして小さい方ではないと思うのだが、兄の
優れた体格に並ぶとまるで小柄で、しかも色白で綺麗な顔立ちは人目を引いた。
骨格も比較的華奢である。
 ただでさえ親戚や近所の人たちの間でも“末っ子で優しい進くん”だった。
女の子とよく遊んでいたし、1人で静かにしていることも多かったので、余計に
その印象が目立ったのだろうか。

「綺麗だよなー、色なんか白くってさ。仲良くしようぜ、次席のお嬢ちゃん」
――それが引き金になった。

 誰が言ったのだったか、カオも上げないまま拳を繰り出した進は、自分の手が
相手の顎にヒットする前に、相手が派手な音を立てて椅子を跳ね飛ばし、倒れた
のを見た。
呆然として自分の拳と、横を見ると。

 ふん。
 表情はあまり変わらないまでも、キツい目をして立っていたのは大介だった。
一瞬先に、相手を殴り倒していたのである。

 ひゃ。
 なかなかやるねー。
 だけど、さ。最初のゴアイサツとしちゃ、随分なんじゃないの!?

 食べるものは大切に――。
ほぼ食べ終わったトレイを隣の机に避けて、2対2の喧嘩が始まった。
――2対4のはず? いや、鶴見と九重は傍観を決め込んだらしく、声援する
ばかりで手は出さない。
加藤三郎、吉岡英vs古代進、島大介。
 乱闘になるのに時間はかからなかった。


- ☆ -

 「元気のいいのはこの学校の伝統だがな…」

 舎監室に呼び出され、6人は並べられて直立不動の姿勢のまま、前を行き来
する教官のお小言を聞かなければならなかった。

 そのうち4人のカオには痣、頬は腫れ、引っかき傷もあちこちにあった。
「君らでこの、少年宇宙戦士訓練学校は正式発足して第4期になる――だがな」
教官は背に持った棒のようなもので自分の肩を叩きながら苦りきった声で言った。
「防衛軍訓練学校としての心得は――? お前。そのちっこいの」
棒の先で差された大介が宙を見たまま、一言一言区切るように言った。

「規律遵守、品方公正、沈着冷静、使命完遂――」

反対側で、くす、という声が漏れて
「お前っ! ふざけてんのかっ!!」
ぴし、とその棒が加藤三郎の足許に飛んだ。
ひゃ、と首をすくめるも、怖がっている風はない。神妙な顔を作る。

 「入学式もまだだというのに――入寮日初日から乱闘したなんてのは、始まって以来だっ!」
そこのっ!
今度は吉岡がひょい、と首をすくめた。
「よりにもよって優等生ばっかりか。島っ」
「はいっ」
「――お前、少しは首席入学の自覚持ったらどうだ。明日、その顔で新入生総代
読むんだな。恥ずかしいと思えよ」
 返事はなく、進がチラリと横目で見ると、殊勝な顔をして、微かに頭を下げた大介がいた。
 あーこいつ。全然、反省してねーや。

 「慣れぬ集団生活に放り込まれてはしゃぐ気持ちもわかるが」
教官は立ち止まり、真面目な顔を6人に向けた。
「――状況は逼迫している。……先輩たちは次々と戦場に出、我々を守るために日々、
戦っておるんだ。お前らには、一刻も早く、戦力になっていただかんと困る」
わかっとんのかっ!
 手に持った棒で、端から肩をつつかれた。
 動くなっ!

――はぁこれが、聞きしに勝る軍隊ってとこなんだな。

 進はなんだか“場違いな処に来ちゃったかもしんない――”
そう思いながら、立っていた。
 だが。

 面白いヤツらもいるんだな。
 内心、ちょっと嬉しい気もする進であった。

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2011_10
10
(Mon)22:14

"夜明け前"・1-02

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prologue・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【ニ.食堂 01】

 食堂へ向かいながら、2人は互いの情報を交換した。

 「古代はどこから? 俺はメガロポリス東区の黎明ジュニア出身。適正検査受けたらさ、
向いてるってことになって。もともと宇宙(そら)飛びたかったしね、まぁこんな時代だし」
 明るく言い放つ島大介の目に憂いはない。
 進はどう答えようかと迷った。
 「ぼく――俺は、三浦半島のA村」

 …遊星爆弾でやられちゃってね。
という科白を進は呑み込んだ。そして、これだけ言った。
「ちょっとあって…入院してたんだ」

 え、と大介は足を止めた。
 ――それじゃぁ…。

 何か、気づいたかな――。

 両親も、親戚も――皆、居ないよ。――死んだんだ、爆弾(あれ)で。
 言ったわけではない。
進はそのまま黙った。

 こくりと頷いた大介は――そしてそれ以来、後々までそのことに触れることはなかった。


- ☆ -

 そういえばさ。
 俺たち最年少だぜ――。

 どこからそういうことを知ってくるのか、料理を摂るためのトレイをほい、と
渡してくれながら大介は耳打ちするようにそう言った。
 「中学新卒って何人かいるらしいけどね――半分くらいは転属か民間からだって。
 高校からもいるみたい」
 「へぇ、そうなの…」
 進はわりあいそういうことはどうでも良かった。

 高校を卒業して、ある程度の学力があれば、防衛軍訓練学校――つまり、兄の卒業
した学校へ入ることは、此処へくるためにいろいろ調べた進も知っていた。
そして、現在は旧防衛大に当たるその機関が休校状態にあるということも。
 要するに、非常時である。
――高校からの編入は此処、併設された少年宇宙戦士訓練学校の新入生となるらしい。

 だけど。
 大人の中か――そんな思いもある。

 俺たち同い歳なんだよ――まぁ俺の方が半年お兄さんだけど?
 いたずらっぽい目を輝かせながら、島大介はそう言った。


- ☆ -

 「おっ、学年1番と次席がお揃いだなっ」

 でかい声がして、見るとガタイの大きさが目立つ男が目の前に立っていた。
 いいか、ともいわず、大介と進のテーブルにどっかり座り込む。
それに続いてぱらぱらと2~3人が囲んできた。
 「邪魔するよ」「僕らも新入生なんだ」

 「俺は、加藤三郎。こいつは」
 「鶴見二郎だ」
 「吉岡英(すぐる)」
 「九重ここのえ隆一」
わいわい、と囲まれて目を白黒する進と大介。
 「俺たち四人部屋なんだぜー」「ひいきだよな」
「うるさいから集められたとか?」
 「皆、飛行機乗り志望だ」「お前らは?」

 あ、あぁ――と進は大介と目を見合わせた。
喉に食べ物詰まっちゃいそう。
「古代、進――」
「島大介だ。よろしくな」
チビで年下はわかってるのに、それに臆せず、すでにツルんでいるらしい
そいつらを真っ直ぐ見返すと、穏やかな口調で大介はそう言った。
 内心、進は――こいつ、ただもんじゃない。そう思った。

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2011_09
21
(Wed)00:15

"夜明け前"・1-01

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prelude・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

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【一.入寮】

 ぼん、とずた袋のようなナップザックを机の上に置き、ジャケットを掛けて上着を脱いでしまうと、もうすることがなかった。
 進はどさりと壁際の机の前の椅子に腰掛けると、はぁと息を吐いた。
 ぼぉっとしていたに違いない。
 ここ数日間の、めまぐるしいような環境の変化は――望んで入ったものとはいえ、
まだ現実味を伴ってはこなかった。

 (訓練学校の、寮に――いるんだなぁ――)

 何も、考える気力がない。

 (疲れた――)


- ☆ -

 ガタン、と扉が開いて、小柄な姿が視界に入ってきた。

 「あっ。……とと。済みません、先客が居るとは思わなかったものですから」
 やはり肩にザックを背負った男が立って、一歩部屋に踏み込んできていた。

 最初からきちんと説明書を読んでいればわかったことだったはずだった。
訓練学校の寮は2人~4人部屋なのだ。
古代進は、2人部屋をあてがわれていた。
同室者がいる――そんなことにも気が回っていない進である。

 病院から出、兄と別れ、そうして宇宙へ出て留守をするため住む者の無くなってしまう地下都市のアパートを出てくるのは、それなりに気を遣うものだったのだ。

 (( 私物は制限があるからな――本当に大事なものだけにしろ))

 兄の守にそう言われて、進は、小さなフォトスタンドと、いつも持ち歩いている少し厚手のノート。そして様々なチップカードだけにした。

(( おいそれでいいのか? 生活必需品はいいんだぞ))
(( 備え付けがあるんでしょ? いいよ――訓練生が贅沢言ってられないから))
それでも、服の何着かくらいは持っていけ。
そう言われて。
そうだな、ついでだから――お前はいくら子どもだからって格好に構わなさすぎだ。
俺が見立ててやる――そう言って買い物に引っ張り出された挙句の入寮だった。

 時間、一番遅かったんじゃないかしら。
 もう夕食になろうかというところ。

 進はギリギリに動くのは嫌いだった。
早めに行って、余裕を持ってゆっくりしたい。
わりあい几帳面な子どもだったことと、焦るのが嫌いな所為。
その点、兄の守は、いつもなるべく時間を有効に使おうとし、無駄が出るのを
嫌うような傾向があった。必然、ギリギリ。
またはオンタイムになる。


- ☆ -

 「古代、進くんですね――」

 まだぼぉっとしていた進に、侵入者が声をかけた。
 最初は謝ったくせに、つかつかと入ってきて、反対側のベッドに荷物を放り出すと
「島、大介――同室です。よろしく」
 そう言って、手を出し、握手をうながした。

 まだ椅子に座ったままだった進は
「あ、あぁ――よろしく」
 そう言って目を上げると、立ち上がって手を差し出した。

 「ふぅん……君か。古代守さんの、弟って」
 人懐こい笑みを浮かべてその島大介はまっすぐ人を見る。
 からかうようではない――。

 (育ちの良さそうな坊っちゃんだな)

 進の側の、第一印象はそれである。
 きっちり櫛の入った髪。やわらかな素材のコットンの上下に身を包んで。

 「兄貴はそんなに、有名なのかい?」
 軍にも世間にもあまり興味のなかった進である。
「あったり前だよ。もう、憧れさ――俺、ラッキーだな」
島は邪気のない笑顔でそう言うと。
「君、そっち側でいい? 俺、こっち使わせてもらうよ」
そう言って、バタンとロッカーの扉を開け、またデスク上のPCにカードを差し込んだ。

 あ。と――。

 夕食、なんだってさ。皆、もう集まってるみたいだから、行かないか?
 島がそう言った。
「あぁ。そうだね。……どんな人たちが集まるんだろうな。これから、
よろしく、島くん」
 進が言うと。
 「島、でいいよ。さ、行こう、古代」

 頷いて、2人は少年宇宙戦士訓練学校、第一日を踏み出した。

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2011_09
20
(Tue)00:15

"夜明け前"・0-2 プロローグ

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prelude・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【Prologue】

 地球は、かつてない脅威にさらされていた。

 2193年から降り始めた放射能を帯びた隕石は、人工的に投与されていることが判明し、人はそれを“謎の敵”と呼んで当初は恐れ、次に撃退しようと試みた。
 だが、太陽系の果てから飛来するそれを避けるどころか、大地は次々に犠牲になり、海は沸騰し、地脈はずたずたに切り裂かれ、大陸は失われ、多くの都市機能も麻痺したまま、人々は地下へその生存権を求めていくようになる。

 宇宙開発の充実と、太陽系へ勢力圏を広げつつあった地球連邦政府は、そのふるさとの星に閉じ込められつつあり、出撃した艦隊はことごとく失われ、人々もまた失われていった。
 希望は無いのか。

 宇宙開発に力を注いだ訓練学校も、軍事的な要素を強め、また戦時徴集と年齢制限をぐっと下げるため、少年宇宙戦士訓練学校が併設されていた時代。

 古代進と島大介らはそんな時代に少年期を過ごし、その[少年宇宙戦士訓練学校]第四期生として登録された。

 多くの少年少女たちの中から選りすぐられたエリートではあったが、選んだのか、選ばれたのか。それはどちらの"選択"だっただろう?
 しかし2195年。
 少年たちの--地球の運命は、回り始める。

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