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2011_09
27
(Tue)22:00

完結編&復活篇

 こんばんは。

 妙にご無沙汰ですねぃ。
 その間に、なんやら涼しくなって参りました。
 涼しくなると、ちっと仕事しようかなぁという気にもなるし、夏の疲れも出るしで、土日は演奏会(仕事よ)の合間にバテて寝転がり、平日はただひたすら走り回り。。。ということで更新も滞っております。こ~んなblogなのに毎日大勢の方にいらしていただき、感謝のきわみでございますわ。すみません。

                      ・・・
 この連休、本当は西の方に行くはずだったのですね。
 ところが、べったりと自宅のベッドの上。。。う~ん、死んだ。
 おかげで、「ハリー・ポッター」は全7巻を見終わり、さらにDisc2で俳優たちのインタビューまで見まくり、さらには記憶の中で「最終話」を引っ張り出して回想してみる(<これが結構できるんですね、私。『復活篇』も買ってから一度もDVDを観てないのですが、頭の中で場面をリフレインして、けっこう楽しんでいます)。
 それで、ごろごろしてました(くーくー眠ったりもしたので、休みも足りなかったのでしょうきっと)。

 連休初日の某日。某ヤマトお友だちと、某演奏会へ参りましたのでした。
 後楽園。先日、彬良さんたちがコンサートをおやりになった場所です。ここを拠点にしている某Tフィル(<ってぜんぜん伏字になっとらへんけど)に某若手天才ヴァイオリニストの演奏を聴きに行った。
 彼はひそかにワタクシが、自分ちの山本くんのイメージモデルかい、と思っている若者です。もちろんうちの話を書いてからあとから名前の出てきたヒトで、私も知り合ってまだ1年経ちませんので、単に「イメージにハマるわぁ♪」と思っているだけなんですけどね(笑)。
 なにせ16歳で最難関といわれている国際コンクール最年少で優勝!国際評価の方が先に来て、日本では徐々に人気上昇中。先般、リサイタルデビューしたばかり、という、まだ18歳の少年演奏家であります。高校中退してウィーンに飛んでっちまったというのもすごいけど、そのエピソードもまたなかなかなもので(ここでは書けませへん)、最近、私の個人的期待度・大の演奏家なのです。

 ということで、定点観測に付き合ってくださってる某女史とご一緒に演奏を聴きに行き、、、やっぱり素晴らしかったです♪ この日は、こういう企画だけに、某Tフィルのコンサートマスターのうち、彼の親父さまがコンサートマスターというおまけもあり、私はわくわく、前半の彼のコンチェルトと、後半の親父様の「シェヘラザード」のコンサートマスターのばりばりのソロを聴き比べるという贅沢に浸っておりました。

 さてその後のこと。
 仕事で某楽器店へ。なんと、その日のソリストくんの兄弟子(同じくウィーン在住)という方がお客でいらして、店長と仲良くおしゃべり。楽器談義、ソリストくん談義に花が咲き、私も親しくお話させていただいているあいだに、「これからセンセイが来る」とおっしゃる。へ? ソリストくんの兄弟子っていうと、なんですかい。もしかしてそのセンセイ、というのは、、、

 ここにおいでの皆さんならお心当たりがおありでしょう。
 『完結編』のハネケンさんのピアノとともに体当たりのヴァイオリンソロを弾かれたT永T男さん。当時はN響のコンサートマスターでしたが、現在はフリーランスの演奏家として、後進の指導やら演奏活動にまい進中のあのお方です。。。ひゃぁぁ。
 ごく気さくな方なのですが、前回お会いした時は、マネージャーさんもご一緒だったし。まさかヤマトの話はできないじゃないですか。これは天の采配か? というので、途中からは「完結編」「復活篇」の話に。復活篇のラストシーン、地球へ向かっていくヤマトのあそこは、彼のヴァイオリンソロと、ハネケンさんの怒涛のようなピアノだったですよね。そのへんの話で盛り上がりました。話の見えない周りの3人、目を点にして、「その音楽、今でも聴けますか」と仰るので、DVDと作品の紹介をしましたさ。彼らはT永さんの大ファンでもありますから、きっと見るんでしょうね。

 某プロデューサーの思い出話を始めると尽きることがないようでした。懐かしむというよりも、面白いエピソードがいっぱいあるみたいでしたねぇ。何か「例えば…」って書こうと思ったけど、ぜんぜん書けない(笑)。内容はご想像ください(爆)。
 それにしても桁違いなヒトだったなぁ、としみじみ仰る。
 まぁ内容をお知りになりたい方は、オフにいらして、私をつかまえて一緒に飲んでくださいね(笑)。

 というので、その愛弟子くんが世界的演奏家として巣立とうとしているところです。全力で応援するっきゃないです。…でもそのうちテレビとかでも出てくると思いますよ。なんたって、顔もいい、スタイルも抜群、ヨーロッパナイズされていて、「本当に18か?」という感じでございます。ちょいとぶっきらぼうでシャイめなところも○かもしれませんね。リサイタルの時に、目をはぁとにした若いヒトや親子づれがいっぱいいらしたのもよくわかります。はい。

 次のコンサートは大きいのが、2012年3月11日(日)にサントリーホール。プラハの来日する楽団の客演ソリストとして登場予定です。ご興味のおありの方は調べてみてね。
 ちょこちょこしたコンサートは年内年始にもありますが。

              ・・・
 あ。
 しまった。

 タイトルの意味ですか?

 いや最近、この二つがちょいと「マイ・ブーム」だということです。
 『復活篇』ものは書かない、と決めていました。私は続きやら事前が書きたくて仕方なかったのですが、「続きが出るまでは」と我慢していましたが、皆さんけっこう書いてるし。自分だけ我慢することないやんか、というのが一方と、もう一方は、「続きは無いな」です。
 もし、作られたとしても、それは魂の部分が違うものになるでしょう。あの続きではありえないと思います。

 だから、いっか。と思うし。
 あとは、どちらの作品も、私は「分析」する気持ちにならないんで。初期の頃、ともかく語りたくて、その方法として、感想を並べるよりも、いろいろな「解釈」や「分析」を話し合って盛り上がるのはすごく面白い手法だと思っていました。ただ、自分にはあんまり向かないかもなーとも思うんですね。
 私は、ものすご~く、「分析したがり」です。
 だから、その分析した結果は、ヒトに言うより、自分の作品に生かすか。そんな気分で。どう解釈したか、っていうのは読めばわかりますもんね。二次小説書きは、それでいいと思うんです。ヒトによりいろんなあらわし方があるんで、それで。

 なにが「マイ・ブーム」かというと。
 ちょいと、その2作について。書いてみようかなってことです。
 いまの周りのが一段落したら、ね。

 というようなことでした。

2011_09
22
(Thu)10:58

ハリ~~ポッター♪

 先般、友人と一緒に『死の秘宝 Part2』を観に行き、久々に“映画の醍醐味”のようなものを味わう。う~ん、ハマる人がいるのもわかるなぁ。

 ワタシ的には、最初のを見て、それ以降はとびとびに2作くらいはDVDで観ている。ちょっと仕事で必要だったりしたので観たとかそういう視点だったのは、ハマりもしなかったし、映画の方が原作より面白い(と個人的には思った)という程度の認識で、ストーリーの骨子に興味が沸かなかったのである。
 俳優たちの変化やホグワーツ(魔法学校)を中心とするファンタジーと現実のロンドン世界の虚実ないまぜの構築がとても面白いと思ってはいたものの、ストーリーには興味がなかった。…『指輪』マニアなんてそんなものよ、ふふ。

 ところが、最終話を観たとたん、すべての話がひとつにつながった、ということもあり、「ん? じゃぁ途中はどうなっていたのか?」という興味が沸く。映画が単純に面白かったこともありますねぇ。

 ところが、その“一緒に行った友人”。ぜんぜん、そういう方面には興味がないフリをして(?)たくせに、次に会った時に、1~4巻を持ってきた。「後半は、次にね。荷物になるから」…おいおい。
 その日と翌日(週末だったんで)で2作、あとは一日1作ずつ観て、寝不足(爆)。いまは週末に続きを借りてくるまでのつなぎで、Disc2の特典ディスクをぼちぼち眺めているところ。。。という程度には、ハマりましたさ。

 一本一本が、エピソードの完結で、その年の魔法学校とハリーと友人たちを描いている。と、同時に。事態が徐々に進行していく様子を表している。護られてばかりいた初作のハリー、戸惑いと“大切なもの”に目覚めが二作目(だがまだ力はない)、、、このあたりまでは観たので、今回、成長し、自分の力で護り・決断していく彼を観て、「おおお、ファンタジーの王道だ」と再認識。ハマるひともいるのはわかるようなぁというように、映画本の特集号を買ってオベンキョしてみたり、、、一気でした(_ _;)。

 う~また今週末。続きを観られる(かも)なのは楽しみである。
 たまたまその間に、最新作DVDの発売解禁! 同時にコンプリートboxが出るのって、なんてタイミングのよさなんでしょう!! もちろん、速攻でポチ! でした。本当は、貸してくれた彼女と同じように、2,000~3,000円の廉価版を1本ずつ買ってもいいなとか中古でもいいなとか思ってたんですが。コンプリートboxっていろいろお得なのよね。1~7話まで入って17枚組。さらには最新作だけ別売りでございます♪ うふふふ、のふ★(<最近、こればっかり)。

                     ・・・
 実はワタクシ、原作を途中で放り出した経験があり(笑)。どうしようかなぁと思っていたのですが、これはやっぱり原作を読まなくちゃなぁ。。。と思った次第。そうすると【しばらく持つ】。もつ、ってのは、保つですかね。シリーズものを好きなのは、どんどん読んでいき、どんどんその世界を深めていくのが楽しいので、それぞれの物語と全体の背景や歴史がかみ合ってなんともいえない物語を作る(思うに、ワタシはそういうのがすきなんだと思います。だから自分の話もそうやってしか作れない)。
 これまでハマったほとんどのものがそうですね。
 で、書き手の作家自身も、その世界にハマってないとだめで、ハマれる世界観を作れるかどうかが、才能や能力だろうと思います。(一番最近にハマったのは『十二国記』のシリーズと『守人』シリーズだったな)。

 そういった意味では、ハリーポッターはダメだったんですが。。。ひとつに文体とかありまして(<うわぁ、暴言)。原作かな、こうなると。原作だと、語学のダメなワタシは、物語の展開する速度に語学力が追いつかなくて、実にいらいらしますね。このシーン、どうなっとんやー! という部分が、読み飛ばせなくて、いちいち辞書とお友だち。けっこう勘違いしたままキーワードを落としたりもするので、『指輪』を初めて原書で読破(といっても最初の3分の1だけですが)した時に、絶対に「ガイド役(この場合は先生でした)が必要だ!」と思った次第。語学は勉強しといた方がいいですよ>若い方 絶対に、世界が広がります。

 ということで、連休中は仕事が半日ずつ×3日 入っているので(それでも半日ずつ×3は休める)、紀伊国屋書店か丸善にでも行こっと♪(東京に住んでいて、なにが一番嬉しいかというと、大きな書店と楽譜屋があることですねぃ)
2011_09
21
(Wed)17:43

台風。

 台風が関東直撃(?)なのかな?
 Twitterとかで、帰宅途中の知人友人から「電車止まってる」報告が入っているのでテレビをつけた。

 さっき・・・17時ごろだったかしらん。急に部屋の空気が薄くなったような気がして、皆で顔を見合す。頭がくらん、としたそうな。私だけぢゃなかったのか。
 外は大嵐で、殴りつけるような風と雨がごぉごぉと通り過ぎ、平和にマンションの一室にある会社の中にいる私たちは「外に出る日じゃなくてよかった」と不届きなことを言い合う。
 午前中はでも、ロケハンに行ったから、某駅あたりで半身ぐしょ濡れにはなったのだが、嵐の中を歩くよりはマシである。昨日は機材もってたから、昨日でなくてよかったなぁ、、、楽器もあったし。

 酸欠? と不安になったので恐る恐る窓を少し開けて、空気がひゅうっと入ってくる気配。皆、ほっとしながら、「これって気圧?」と言い合う。面白がってはいかんのだが、そういう連中ばかりなのだが仕方ない。ちょいと盛り上がって、またデスクに向かい、黙々と仕事しているわれわれって。。。

 宅配を呼ぶ時間になって、あっちの部屋のおねーさんが「ひどい電話をしてしまいました」とおっしゃる。何かっていうと、「集荷お願いしま~す」だそうで。確かにこんな日に、集荷頼むの申し訳ないよなぁと思いつつ、どうせうちに来なくても回るんだからいいやとか思い、取りに来てくれたいつものおじさんに、気持ちだけ「こんな日にすみません」と言って、でも大荷物押し付けるわれわれであった。

                    ・・・
 都内の交通網、相当に麻痺中らしい。
 早めに帰った人たちは正解。だけどTwitterやつぶやきを見る限り、早い時間でもかなりヤバかったらしく、現在、東京駅とかどうなってんのかな?
 先ほど、今夜のコンサートの中止が電話来た。アーティストが動けず、ホールへたどり着けないのだそうだ。来てしまう人もいるんだろうなぁ、、、と思うとかなりお気の毒。延期だそうですけども。私は実はホッとしたとこ。

 西の方で育った自分は、台風の日というのはワクワク感と不安のないまぜになった感覚を味わう。子どもの頃の思い出に直結するからだ。被害のひどい地域の方々のことを考えると、こんなのは不謹慎のきわみなのだろうが、九州にいた頃なんかは、本当に戸板を打ちつけたりとかした覚えもあるのだけれども、錯覚のような気もして記憶は定かではない。
 川沿いの母の実家は水没の心配をしなければならなかったし、作りの古い父の実家は、かわら屋根が落ちてきたり戸板の心配をしなければならなかった。現在、どちらの家も、存在しない(市内の一等地だったために、跡を継いだ長子一家が転売して移転したためだ)。現代風の住宅と、一方はホテルになっている。

 …渋谷駅周辺で街路樹が倒れたそうだ。タクシーが巻き込まれたとかで、これは気の毒。怖いです。大丈夫だったのだろうか。

 う~ん。
 現在、静岡近辺にいるらしい台風は、抜けるまで仕事してりゃいいんだけどさ。問題は、お腹が減るということだなぁ。。。此処はある種、陸の孤島なので、震災の時もコンビニから食べ物が消えた。たぶん今回もそうだろう(近くに大規模マンションがあるしね)。食えないと思うとお腹が減るのよね。。。(^_^;)

 ヘタに地方に回って増水や土石流などの被害をもたらすよりも、東京でヒトビトが帰宅の足止め食ってる程度の方がまだいいか、などと思います。神田川の治水工事前は大変だったんですが、いまは、動かずにいれば安全なのだし。…ただ、外に出なければならない立場の方々は本当に大変です。事故なく、怪我がありませんように。
 避難勧告地域は大丈夫でしょうか。

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2011_09
21
(Wed)00:15

"夜明け前"・1-01

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prelude・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【一.入寮】

 ぼん、とずた袋のようなナップザックを机の上に置き、ジャケットを掛けて上着を脱いでしまうと、もうすることがなかった。
 進はどさりと壁際の机の前の椅子に腰掛けると、はぁと息を吐いた。
 ぼぉっとしていたに違いない。
 ここ数日間の、めまぐるしいような環境の変化は――望んで入ったものとはいえ、
まだ現実味を伴ってはこなかった。

 (訓練学校の、寮に――いるんだなぁ――)

 何も、考える気力がない。

 (疲れた――)


- ☆ -

 ガタン、と扉が開いて、小柄な姿が視界に入ってきた。

 「あっ。……とと。済みません、先客が居るとは思わなかったものですから」
 やはり肩にザックを背負った男が立って、一歩部屋に踏み込んできていた。

 最初からきちんと説明書を読んでいればわかったことだったはずだった。
訓練学校の寮は2人~4人部屋なのだ。
古代進は、2人部屋をあてがわれていた。
同室者がいる――そんなことにも気が回っていない進である。

 病院から出、兄と別れ、そうして宇宙へ出て留守をするため住む者の無くなってしまう地下都市のアパートを出てくるのは、それなりに気を遣うものだったのだ。

 (( 私物は制限があるからな――本当に大事なものだけにしろ))

 兄の守にそう言われて、進は、小さなフォトスタンドと、いつも持ち歩いている少し厚手のノート。そして様々なチップカードだけにした。

(( おいそれでいいのか? 生活必需品はいいんだぞ))
(( 備え付けがあるんでしょ? いいよ――訓練生が贅沢言ってられないから))
それでも、服の何着かくらいは持っていけ。
そう言われて。
そうだな、ついでだから――お前はいくら子どもだからって格好に構わなさすぎだ。
俺が見立ててやる――そう言って買い物に引っ張り出された挙句の入寮だった。

 時間、一番遅かったんじゃないかしら。
 もう夕食になろうかというところ。

 進はギリギリに動くのは嫌いだった。
早めに行って、余裕を持ってゆっくりしたい。
わりあい几帳面な子どもだったことと、焦るのが嫌いな所為。
その点、兄の守は、いつもなるべく時間を有効に使おうとし、無駄が出るのを
嫌うような傾向があった。必然、ギリギリ。
またはオンタイムになる。


- ☆ -

 「古代、進くんですね――」

 まだぼぉっとしていた進に、侵入者が声をかけた。
 最初は謝ったくせに、つかつかと入ってきて、反対側のベッドに荷物を放り出すと
「島、大介――同室です。よろしく」
 そう言って、手を出し、握手をうながした。

 まだ椅子に座ったままだった進は
「あ、あぁ――よろしく」
 そう言って目を上げると、立ち上がって手を差し出した。

 「ふぅん……君か。古代守さんの、弟って」
 人懐こい笑みを浮かべてその島大介はまっすぐ人を見る。
 からかうようではない――。

 (育ちの良さそうな坊っちゃんだな)

 進の側の、第一印象はそれである。
 きっちり櫛の入った髪。やわらかな素材のコットンの上下に身を包んで。

 「兄貴はそんなに、有名なのかい?」
 軍にも世間にもあまり興味のなかった進である。
「あったり前だよ。もう、憧れさ――俺、ラッキーだな」
島は邪気のない笑顔でそう言うと。
「君、そっち側でいい? 俺、こっち使わせてもらうよ」
そう言って、バタンとロッカーの扉を開け、またデスク上のPCにカードを差し込んだ。

 あ。と――。

 夕食、なんだってさ。皆、もう集まってるみたいだから、行かないか?
 島がそう言った。
「あぁ。そうだね。……どんな人たちが集まるんだろうな。これから、
よろしく、島くん」
 進が言うと。
 「島、でいいよ。さ、行こう、古代」

 頷いて、2人は少年宇宙戦士訓練学校、第一日を踏み出した。

←before ↑contents →next(02・食堂)
2011_09
20
(Tue)00:15

"夜明け前"・0-2 プロローグ

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prelude・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【Prologue】

 地球は、かつてない脅威にさらされていた。

 2193年から降り始めた放射能を帯びた隕石は、人工的に投与されていることが判明し、人はそれを“謎の敵”と呼んで当初は恐れ、次に撃退しようと試みた。
 だが、太陽系の果てから飛来するそれを避けるどころか、大地は次々に犠牲になり、海は沸騰し、地脈はずたずたに切り裂かれ、大陸は失われ、多くの都市機能も麻痺したまま、人々は地下へその生存権を求めていくようになる。

 宇宙開発の充実と、太陽系へ勢力圏を広げつつあった地球連邦政府は、そのふるさとの星に閉じ込められつつあり、出撃した艦隊はことごとく失われ、人々もまた失われていった。
 希望は無いのか。

 宇宙開発に力を注いだ訓練学校も、軍事的な要素を強め、また戦時徴集と年齢制限をぐっと下げるため、少年宇宙戦士訓練学校が併設されていた時代。

 古代進と島大介らはそんな時代に少年期を過ごし、その[少年宇宙戦士訓練学校]第四期生として登録された。

 多くの少年少女たちの中から選りすぐられたエリートではあったが、選んだのか、選ばれたのか。それはどちらの"選択"だっただろう?
 しかし2195年。
 少年たちの--地球の運命は、回り始める。

←before ↑contents →next(01・入寮)
2011_09
20
(Tue)00:06

"夜明け前"・0-1予告

三日月小箱百之御題 2005 「No.100 夜明け」より

・・夜明け前・・[訓練学校にて]

 古代進&島大介、少年宇宙戦士訓練学校1年生時の目次です。
 ほとんどこれは既出なので、随時あげていくのもどうかとも思いますが、ご興味のおありの人だけお読みください。基本的に、うちのオリジナル・キャラはがんがん出ますので、それがいやな方も避けてくださいね。
 また、前にも書きましたが、「訓練学校を描くこと=当時の地球や軍事・政治の設定を書くこと」でもある。ほんと、“新月設定”ですんで、そこんとこも、よろしく。

 なお、設定のベースに「ラジオドラマ・宇宙戦艦ヤマト(パート1のみ)」を結構参考にしています。
 それと、森雪と出会う前の古代進にGFがいたとかいう設定がお嫌な方も、お読みにならないでくださいね。いや、正確にいえば、GFというステディな相手はおりませんが、、、なぁんとなく、そんな感じ、といいますか。

 目次の番号がズレているのはそれぞれを「短めの物語」にしたかったが無理があったものです。

 また、非常に、他の私の話とは筆致も違いますので、あまりご期待なさらず、どうぞ。
 第6章あたりがもう少し増えるかもしれません。
 ただ、まだいいんだな、1年生は、まだ。問題は2年生以降だなぁ(^_^;)
均等に、いろんな時期を書くの、苦手なんすよね。カリキュラム作るまでの根性は無いし。誰か好きな方、いらっしゃるんじゃないかなぁ(>軍事学校のカリキュラム作り)。

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prelude・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

【第二章】(2007-06)
05 寮生01
06 授業01
07 授業02

【第三章】(2007-06)
08 病気01
09 夢01
10 病気02
11 兄弟01
12 兄弟02
13 兄弟03

【第四章】(2007-11)
14 兄弟04
15 追憶01
16 追憶02

【第五章】(2007-11,2008-03,2011-08)
17 女子訓練生01      
18 女子訓練生02
19 女子訓練生03      
20 寮生02
21 寮生03
22 寮生04
23 訓練01

【第六章】
24 家族01   shima05
25 家族02   shima06
(25 授業03   susumu07)

【第七章】(2007-11)      
26 行軍01      
27 行軍02
28 行軍03    
29 行軍04

【・・Intermission・・】
30 仲間たち(member)      

では、どうぞ(_ _) >>2195年の世界(地下ですが)へ。
2011_09
19
(Mon)17:56

でも。

 会社です。

 頭が超絶痛い、と思っていたら、やっぱり台風か。
 「あやちょん(<と呼ばれている)天気予報は当たり」とカレシに言われて、車で会社にやってきました。

 途中、新宿あたりで車が止まって動かない。別段急いでもなかったので「なんだろーね」と見ていると、横をデモ隊が通る。見れば「原発反対!」のデモで、参加者は労組関係ですね。
 私が以前、関係していた労組の姿も見える(けっこういっぱいいた。そりゃそうだろ)。整然と、ぞろぞろと歩いて延々と続き、いやぁこれ何千人参加したんだろう? という珍しく大きなデモですね。行く方向と反対側からくるから、のぼりがよく見えて、若い頃は“そういうことやっていた”脛に傷持つわれわれは、ふぅんと眺めながら「それにしても大きなデモだ」と言っていた。

 大きなテーマは原発反対。のようだ。原発撤退、という人と、原発依存はやめようという人といる。一枚岩にはまとめなかったらしい。で? とは思うんだけど、共闘なんだろう。
 先頭の方の集団に「われわれのふるさとを返せ」という謳い文句があって、これはFukushimaのヒトビトが中心のようだった。太鼓たたいて法被着た人たちもいる。

 真ん中より後ろくらいには、スピーカーで時々趣旨を語りながら「後通行中の皆さまっ! われわれはぁ~」とやっている“正しい”デモ隊もいたけど、たいていはそうでもない。う~ん。「シュプレヒコール!」ってのはないのか?(笑)。
 歩いてる人たちは、皆。淡々とした表情で、ご家族連れもいる。正しいデモの姿ですが、、、これが何か起こった時は、実はあぶないんだけどねぇ。

 最後にデモとかに参加したのは「憲法九条改悪反対」のマスコミ・デモで、いつだったろう、10年近くも前かも。そういう手法を取らなくなってずいぶんになる。人がものを伝える手段というのはたくさんあるなと思うし、自分の立つ位置でできることをする、というのも、こうやって何かに参加するのもひとつの方法だろう。
 今、単純に原発に反対しても問題が解決するとは思えなくなっているけども、個人的意見としては。
 暑い中、整然と続く隊列は、途切れることなく、新宿の方まで続いていた。どこから来てどこへ行くのかな。

 ということで、台風の気圧の変化で頭が痛いのに、まだ会社です(泣)。

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2011_09
18
(Sun)19:59

続きが、、、

 PCは、復活しません。
 つーか、そろそろ寿命かなと思っていたところでしたし、復活させられないことはないけれども、その手間隙とか体力がぜんぜんありません。
 いずれにせよ、「いろいろ問題あり、そろそろ代えなさい」指令も来ていたところだし、データで移行できなかったのは、数日分(その中に、ヤマトの二次小説関係のもろもろが入っていますが)だけなので、あきらめました。

 ということで、「温泉」は、書きかけのデータを引っ張り出せるまで(または頭の中を再検索するまで)お待ちください。

 衝動買いしました。
 なんといってもモニター21インチが付いて、5万円台(デスクトップ)。いずれにせよ、私があちこちで使ってるOSは全部XPでして。一台くらいWin7つかっておかないと、まずいだろう。それもあったし。

 セットアップする元気、無し。

 ということで、多忙期間突入により、こちらはストップです。ただ、もしかすると、すでに半分以上作っておいてある「夜明け前」をぼそぼそあげていくかもしれませんが。
2011_09
17
(Sat)23:29

うふふふ、のふ(^.^)な話。

 先週は映画に行った。
 実は、『ハリー・ポッター』の最終話を見てきたのである。「死の秘法・PartII」。すごくよかった、と思います。いいなぁ、こういう感動って、なんて思いながら。映画って見始めると映画づくんですよねぇ、毎日とか週何日とか通っちまう。
 実はここのところ試写会の通知が続いていて、全部見たいのですが、見るとどっかになんか書かないといけないので、それもめんどうくさいな~(笑)(<ごめんなさい送ってくださった方)。でも見たいものほど、なかなかタイミングが合わず、いけない。

 この間、突然飛び込んできた「ベルリン・フィルのシンガポール公演 ルポ映画」。これ、どうやら単館上映の全国展開と、DVD/Blue-rayで発売されるらしいけど、3Dで見て、面白かったけど酔った。演奏はよかったけど、どうにもサー・サイモンのマーラーとは相性が悪い。後半の「シンフォニック・ダンス」の方がよかったな。

                    ・・・
 なぁんてのは全部、前振り。

 14日にオペラを見て。この人、演劇出身です。演劇の劇伴といわれるものからメジャー作品を書き始め、映画音楽やダンス、ミュージカル、オペラ。もちろんアカデミックな弦楽ものとかもけっこう書いていますけれど、蜷川組で長くやっていた。鴻上尚史や野田秀樹とも仕事をしていた人ですから、舞台づくりがものすごく演劇的だ。芝居としてみてもおもしろかった。もちろん、耳には素晴らしい音楽が聞こえてくるんだけどね。

 で、一日置いての16日。
 当日追加券、というのがあるんですね。どう~しても取れなかった「劇団☆新感線」のチケット、なんと、S席が取れまして、行って参りました青山劇場。
 うふふ。うふふふの、ふ。
 その日なんてけっこうヘビーな仕事だったんだけど、もう、だめだこりゃな気分で。
 実は職場から青山劇場ってめっちゃ近い。近くでやっているだけに、毎日なんだか悔しい気分でいたんだけど。そりゃ大阪公演は見ましたさ。でも劇場が変われば芝居も演出も変わるし、あれから一月経ってるんですよ。“進化”が見たいじゃないですか。

 で、念願の、青山劇場、でございます。

 まだ、ぼぉっとしていて。まとまらないんですね。此処にコメントする部分は(二度みたらさすがに細部まで覚えてしまいますので)ないことはないんですが、演劇評価したいわけじゃないし、基本的に、主役某氏の半径3m以内しか見えてない(笑)し。
 わたしゃ一回目は芝居全体を見ますし、ストーリー、音楽、演出、役者すべてを見たいと思いますが、二回目見られたときは欲望に忠実になることにしてます。はい。目を(はぁと)にしているかもしれませんわな。

 中央真ん中の少し左よりの席。
 真正面に彼の立ち回りが見えます。すらりとしてて、歌舞伎メイクはあんまり似合わないのですが、やっぱり芝居はうまいよなぁ。うまいということでいえば、兵庫役のKくんや、三五役のKさんの方が上手いと思うんだけど。でもなんか光が当たる感じなのは、××だだ漏れ、、、なんだろうか(爆)。
 それにしても早乙女太一さんのタテは、噂どおり、すごいです。ものすごいです。美しいし。特に登場シーンが最初から刀振り回しながら切り込んでくるシーンなんで、それまでの役者さんたちの迫力ある殺陣が半分くらいのスピードに見えるくらいすごいです。それと、キメるところが抜きん出て美しいのは、商売柄なんでしょうなぁ。本職を見に行きたくなりました。

 感想?
 まだ見てない方でこれから行かれる方もいらっしゃるかもなので、やめときます。。というよりはまとまりません。思っているよりは冷静ですが、信長の死を引きずった三人による戦国末期の物語、というシチュエーションが私ごのみだったこともあり、、、面白かったよぉぉ。この劇団に対する認識を一切、改めました。はい。反省。

 ということで、単なる自慢でした(^_^)。うふふふ。いいだろう♪
2011_09
15
(Thu)23:51

オペラとオフ

 9月14日に、東京文化会館で「モノ・オペラ」というジャンルの新作が上演され、私のお勧めし続けている某作曲家作品+出演者が超絶よいので、また皆さまをお誘いして、オフライン・ミーティングなど、久しぶりに実施いたしました。

 新しい方にもお声をかけてみようと思い、本当なら此処に公開アップしたかったのですが、この前がむちゃくちゃ忙しくて、その余裕が無く。旧知の方にメールするにとどまったのが少し残念。というのも、そのオペラが大変に素晴らしく、「いやもう一回見たい」というくらいだったからでもあります。
 題材は『人魚姫』。
 ソプラノとバリトンと弦楽四重奏+ハープによる演奏と芝居でした。

 照明も演出も素晴らしかった。歌がまたさすがです。今日、埼玉の北本でも上演されていて、あとは、9月24日に兵庫県立芸術センターでもありますので、ご興味がある方はお問い合わせくださいませね。私も兵庫まで行きます。

                  ・・・
 さて東京文化会館でのオフはいつものことながら、平日夜、というのはわりあい珍しい。
 来たくても涙を呑んだ方もいらっしゃったり、ドタキャンせざるを得なかった方もおられ、プレオフが4人、オフそのものは7人とこぢんまりしたものになりました。
 ですが、個室で存分に美味料理を食い、プレオフでは思いっきり音楽業界裏話&読書の話で盛り上がったのはとても楽しかったです。

                  ・・・
 ところでオフの方。
 なんと、赤矢印1、青矢印3、緑矢印2、黄色1.
超珍しい構成ではないですか? なかでも、「どの班ですか?」と尋ねられた初参加の2人(私の音楽仲間ですが、ヤマト演奏したりしちゃうヤツ)が「私は真田さんが好きかな~」「…私も工作班です」という意外な答えに、全員から「え~~っ!」。中でも、超工作班の某Pは大興奮で、すっごい喜んでいました。

 確かになぁ。
 楽器のメンテナンス自分でやっちまうとか、楽器につける器具に異様にこだわりがあるとか、そういうのは工作班であろう。ちまちまと××したり、○○したり、▼▼しているくせにすばっと「こんなこともあろうかと」準備していたりする頭が論理的な女もやはり工作班であろう。なるほどー。

 なぜか、古代進の話や同人誌の話で盛り上がり、その日はお開きになったのでありました。
 また10月ごろ開催予定です。いや演奏会は無いですけどね(笑)。
    
2011_09
14
(Wed)23:48

コダイススムを取り巻くヒトビト

 中休み。
 ということにして、「御題二十」は【18.】で一息入れることにしました。
 “とても書きたい話”というのがこの17.と18.だったということもあり、あとの19.20.は、もともとネタも決まっていたこともありまして、ゆっくりでいいや、と思うのです。

 書き出したくて、文章化したくて仕方ない物語と。
 頭の中にあったり目の前に見えているけれど、文章化するのにじっくり向き合いたい話。…いろいろありますね。書き始めたら違う方へ行っちゃう話、とかもときどきありますけど(笑)。
 この傾向、特に、島くんに顕著です、ワタシの場合(あっちへ行っちゃう系)。

 古代進というのは、どこかにも書いたように、ワタシにとっては“情報量の多い男”なので、あんまりブレません。高校生の頃、惚れたあのまんま、です。もうひとつには、ファンの皆さんがたが、「変わってほしくない」と痛切に願っている。だから、たぶん変わらないでしょう。『復活篇』で38歳になったとき、あんまりにも変わっていないというか、そのまんまやんけ、が嬉しかったキャラでした。
 まぁこれについては賛否両論あるでしょうけれども、少なくとも「こうなるんやろな」のまんま、の38歳。相変わらず、カワイクてイイ男ぢゃん(情けないし)。

                     ・・・

 コメントをたくさんいただいています。とてもありがたく、嬉しいことです。
 “たくさん”というのは主観ですから、数の上で多いかどうかはまぁ、客観的にページビューでも取らない限り比較はできません。私の生活タクトや記事アップのタイミングとかに比して、たくさんいただいているなと思うわけで、ありがたいことだと思います。
 特に忙しい時は、「おおこういうことを言いたかったんですようんうん」とか、一言伝わったななんて思うと本当に嬉しいです。もちろん、そうでなくともいただく様々な視点でのご意見やご感想は、「ほぉぉ」「へぇぇ」の連続で、特に古代ファンの方々からの反応は、昔はほとんど無かった(メールをいただいていたの実は約3名くらいでした・笑)だけに、新鮮です。はい。
 blog連載、面白かったですね。

 書くことにはまる時期というのはあるようです。そうすると物事のとらえ方や見方が変わってくるような気がする。…「ような気がする」というのは、私自身はその時期を、nifty-serve全盛期に通り過ぎちゃったわけで、同時期にハマった多くの人たちは、同じような自己抑制と、インターネット時代になってからのネットとの付き合い方を身に着けていると思われます。

 これがwebだろうが、某巨大掲示板だろうが、blogになろうが、Twitterになろうが、同じ感じ。私の周りでは少し前まではTwitterで、関係各位と、「これも面白いのは1年半だろうね」と言い合っていたのですが、半年、、、だったな(笑)。現在は、ソーシャルネットワークに移っているようで、これはまだ個人的には追いついていませんが。。。

 私も個人的にTwitterもGoogleもfacebookもアドレスを持っていて、通常のネットワーカーとしてはそっちに移行しつつありますが、趣味にそれを反映させようとはあまり思いません。こっちはのんびり、じっくり、同人誌とかいうアナログの紙媒体も使いながら、メールとかウェッブとかblogとかで、ゆっくりやっていきたいと思っています。
 どうしても“個人的にオトモダチシタイ”という方は、どうぞお声がけください。ただしジャンルむちゃくちゃですけど、会話が(笑)。

 話がズレましたが。
 古代進ファンの方とお話することが最近はとても多いです。誰が好きだからといって人を分けるつもりはありませんが、以前、うちにメールいただいていた、そうでない方々(もちろん今でもオトモダチしていただいてます)とは、明らかに傾向が違っているような気がします。
 そのあたりの感想など語り合いたい方は、ぜひ、生でお会いいたしましょう♪

 そういえば、私は「紙の本」が好きです。
 来月、「宇宙図書館」で、ブックフェア「読書週間」なぞやるのに協力することになっていますが、この間、そのプレもありまして何人かでお茶飲んでいました。その会話は、本当に面白かったですわ。私が聞き手にまわるほど、皆さんすっごい(@ @)。
 「なんでwebで無料で読めるものを、わざわざお金の発生する紙にするのか」というご意見もおありでしょうが。それでも「手元に本としてほしい」という方のみ、お送りしているつもりですし、今後もその予定です。もちろん、「本だけ特典」(ウェッブには載っていないもの)も過去3冊全部、入っていますし、今後も必ず、新作1本以上は掲載予定です(イラストもありですしね)。続刊の企画を考えているのも楽しいので、次はどうしようかなぁ。考えてみれば「古代進特集」というのは組めないのですよね。島や山本や加藤なんかは作る予定でいますが、さらに古河とか佐々まで作る予定ですが、古代進特集は、パラレル以外ではありえないです。
 何故なら、「主人公だから」としか言いようがない。
 あれ? そうすると、やっぱり、真田さんも「主人公に準じる人間」なのかなぁ、私の中では。

 もう少ししたら、「『復活篇』のある世界=Xワールド」にも取り組んでみたいと思い始めました。さて2年先になるか、3年先になるでしょうか。
 
2011_09
13
(Tue)21:53

甘い二十>No.18・Epilogue(出張Up)

古代進のイメージによる「少し甘い二十之御題・出張Up」shingetsu版

【18:僕を叱って】・1・2・3・4

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= Epilogue =

 「守――」
「はい」
今は亡き兄――目の前にいる同じ名の息子には叔父にあたる兄との思い出に浸っていた古代進は、少し柔らかな表情になって息子を呼んだ。
 プライヴェートタイムだ。少し、付き合わんか。
 そう言って目の前のソファに彼をいざなった。
グラスと氷を用意させ、酒を持ってこさせる。

 「いいのですか? 私などがご相伴に預かっても――」
たったいま、弟を追い返したところなのに。本当なら古代進は多忙なはずなのだ。次々と持ち込まれる懸案に、頭を痛めていたところだったから。守が呼ばれたのも、今週行われる銀河系方面探査の会議の件だった――。
「いいさ」
古代進は先ほどとは打って変わった表情でゆるりと座っていた。

 「お前には苦労をかけるが――行ってもらうぞ」
その時だけ、少し真剣な目で。
……だが、寂しいと思うのは父親の方なのだ。
「はい、わかっています」
守は静かに、その母に似たまっすぐな瞳で父を見返した。
「――行けばしばらく戻れん」
「望むところです」

 まぁ、乾杯しよう。
グラスをカチリと合わせて、2人はロックを喉に流し込む(実は守もけっこうな酒豪だ)。
 「父さん――」
「ん、なんだ」
今度はわきまえろ、とは言われなかった。……そういう“場”を読むことにも、守は長けている。長けていすぎる、といってもよかった。それがまた哀しいとも思うのだ。
 「僕が留守の間は、充分ご注意くださいね」
「なぁにをボケたことを。私はお前なぞ居なくても、大丈夫だ」
くすりと笑みを見せる守は、
「――聖樹がいます」
ぴくりと父の眉が動いた。
「あいつは、力になります。絶対に……もしかして、私よりも」
 「……そうだな」
肯定の返事が来たので、守の方が驚いた。
「司令、それでは、あなたは――」
あぁ、と古代は頷く。
 そうか。わかっていないわけではないのだ。古代聖樹が逸材であることも。父の、母の才能を受け継いで、これからの宇宙軍を担っていく才能があることも。
「――あとは、どれだけ我慢がきくかだ。……なかなか、思うようにはならんな」
苦笑というような表情が現れて、古代守はホッとする反面、より身近に父を感じた。
 「銀河系中央域は、遠い――今は安全が保障されているとはいっても、何があるかわからん。気をつけて、な」
「えぇ……でも大丈夫ですよ。(相原)航も一緒です」
「そうだな」
不安なのは父の方なのだった。だが、そうだ、あの人にも行っていただこう。
古代の腹の中にはいろいろ腹案もある。

 「デスラーの息子たちによろしく言ってくれ。奥方にもな」
「はい、もちろん。親書を書かれますか?」
いや、と古代は首を振った。
「何かと憶測の元になるからな」
「そうですね」
 デスラーと古代進を取り巻く状況はいろいろな意味で複雑である。今回もその遠い旅に若年の古代守と相原航が当てられたのは、いろいろな思惑もあるのだ。古代進にしてみれば、自分で行った方が楽だったろう。――だが彼は今、太陽系を離れるわけにはいかない。
 「気をつけて――ゆっくり別れも言えんかもしれないからな」
「父さん……」
2人はそうやってしばし黙ってそこにいた。

              ☆
 23世紀半ば――。銀河系宇宙は広く、その中央域にはいくつかの帝国星団が跋扈していた時代である。
 古代聖樹はまだ、己の果たすべき役割を、与えられていなかった。

【Fin】

――05 Sep, 2011

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2011_09
12
(Mon)00:15

甘い二十>No.18・3(本文へ)

古代進のイメージによる「少し甘い二十之御題・出張Up」shingetsu版

【18:僕を叱って】・1・2

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【18:僕を叱って】= 3 =

【18:僕を叱って】= 4 =

(= Epilogue = へ続く)

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2011_09
11
(Sun)16:54

甘い二十>No.18・2(出張Up)

古代進のイメージによる「少し甘い二十之御題・出張Up」shingetsu版

【18:僕を叱って】・1/・2/・3/

オリジナル・キャラクターが登場しますので、ご自身の「ヤマト」のイメージを壊されたくない方は、速やかにお引取りください☆

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 2 =

 「司令――」
その部屋には、2人きりだった。
古代進は手元のスイッチを操作すると、怒りに燃える次男坊を突き放し、こっそりとため息をついた。
声が静かに追いかける。
「古代司令……あれでは彼は。聖樹は、納得しないでしょう」
「――守……いや艇長。仕方あるまい。いつかわかるときが来る、と思うしかない」
「司令――」
 広い部屋に居るのは古代進と、そのもう一人の息子である長男の古代守だった。
古代は顔を上げて守を見る。
「――だが、聖樹の態度は、どの角度からみても正しくはない」
「もちろん、そうです」
守は突き放されなかったことに力を得て、父に少し近づき、まっすぐ見つめた。
秩序と階位――2人きりでいても、防衛軍に奉職してからの親子は親しみを職場で示すことはない。必要以上に慇懃に振舞っているといってもよいだろう。それが互いの身を護り、規範を守ることにもつながるからだ。
 だが守は、その無言のコミュニケーションを取るにはまだ幼いともいえる弟と、父の“うまくいかなさ”にも心を痛めている。
(父さんと聖樹は、似すぎているのだ――)
その思いもある。
 「しかし、聖樹はあれでは、、、」
古代は無表情のまま息子を見た。
「――君は、努力し、経験を積み、そうして地位と責任を得て、ここに居る。違うか?」
古代の言う言葉は厳しいが声音は柔らかい。お気に入りの息子・守には、これまでも父親のくせに、いろいろ助けられてきた。それがこの古代守という青年の美質でもある。
「はい。……そう仰っていただけるなら」古代守は胸の前に手を上げて敬礼をした。
「――だからそれらを知り、責任を分かち合い、方法も理解している。そうだろう」
「はい」
「だが、聖樹にはまだその資格もなく、権利も――そして義務もありはしないのだ」
「それは……ですが、司令」

 せめて此処にお呼びになって、諭されては。
「特別待遇は、できない――」
冷たい横顔だった。
「――彼は。聖樹は、叱って貰いたいのかもしれない」
え、と古代進は、その言葉が胸に響いた。
僕を叱ってほしい、と、そう願っているのかも……しれない」
「守――」思わず、言葉が零れた。
可哀相な、子。何を求め、誰の手に導かれるのか。

 そうして古代進は、自分が訓練学校の下級生だった時代の。兄・守とのことを思い出していた。

= 3 = へ続く)
2011_09
10
(Sat)23:34

甘い二十>No.18・1(出張Up)

 自宅のPCの調子が悪く、とうとうだめな子になってしまいました。「温泉」の続きが(涙)。
 ですので、web上に上げておいた「こちら」を先に公開することにします。とある事情で、【18】だけ、ここからスタートです。

[甘い二十之御題・出張Up]

 突然ですが、ずっとウェッブで展開中であります この御題、この部分だけblogに出張です。
 理由は…基本、“Original Charactorを出さない”&“本編side storyである”を縛りにしていた御題だったのですが、どうしても。どうしても、此処でこれを書きたくなったので、一部だけ、こちらへ出てきたというわけです。(本体はあちらへつながっています…予定です)
 つまり。

 新月worldの ★オリジナル・キャラクター が出ます★。なので、お厭な方は、スルーしてくださいね。
 これも昔の執筆ものがベース(なんと1982年とかです・笑)なので、若干、プチパラレル気味ですが、まだ矛盾するほどではありません。
 テーマは、ブレてないはずですが。
 よろしければ、どうぞ(_ _)

・・・・・・・・
【18. 僕を叱って】

= 1 =

 この訓練用小型艇は、ぎゅいん、と空中で旋回すると砂漠の真ん中にある中継基地の外れに着陸した。
強引ではあるがその空間に、ものの1mとズレることなく着け、さらにそのスピードときたら「急停止」と言ってもよいくらいだ。
しかもそれは大気圏外から戻ってきたばかりである。その証拠に、外郭が少し熱で黒く溶けていた。
 訓練艇は貴重品であるし、本来なら咎められるか罰則である。だがそれどころではない規定破りはその艇を動かしていた若者にはしょっ中のことで、着陸した途端、スピーカーとインカムからのわめき声を無視すると、ひらりと艇から飛び降り、一目散に基地の中へ向かっていく。
またそのスピードたるや、地球に戻ってきたばかりとは思えなかった。

 「おいっ、セイ! ――聖樹(せいじゅ)!! ま、待てよっ。待てったら」
一緒に遅れずになんとか飛び込んだ基地の中で、ロボット警備に止められる前にそれをすり抜けた若者を、その親友が追う。
 が、こちらは息を切らしており、柱に手をついて、一息ついた。
 「古代聖樹っ。当麻修(しゅう)! またお前らかっ!! いい加減にしろ」
飛んできた駐在の一人に呆れるように怒鳴られて、当麻はその場にへたり込みそうになった。
「――まぁた何か騒ぎ起こしにやってきやがったな、お前ら」
「そ、そんな……」
実直な当麻はいつも聖樹に振り回されっぱなしである。
なだめるのは俺の役目、と割り切ってもいるが、今回は止め切れなかった。

 「どうした。何の騒ぎだ」そこへ通りかかった先任がいた。
はっ、と敬礼して身体を起こす警備員に、「なぁんだ、また聖樹かよ」親しい口を利く。
彼は同情するような気の毒がるような風情で両手を広げると、
「――あいつのは病気だ。……おめぇも苦労するね」
「大輔――なんとか止めてくれ。あいつ……あいつ。重大な軍規違反を」
「あぁ……でもな」
止めて聞くやつじゃあるめ? と彼は言って。
「行こう」と当麻を立たせた。
 加藤大輔――2人より1年先輩の幼馴染。聖樹と自分は親友同士だと思っているが、時折、育った環境も、背負わされた運命も似ているこの大輔と聖樹の絆に、嫉妬めいた想いを持つことがある。
――入っていけない。とはいえこの加藤大輔は卒業し早くも実力遺憾なく発揮し始めている、自他共に認めるエリートだ。
自分――航法の先輩でもあり、それも引け目に思うこともある。だがそれも、“諸刃の刃”なのである。
 当麻は加藤大輔に連れられ、奥へと歩いていった。

                 ★
 聖樹は、いくつかある訓練生用の通信室へ飛び込んだ。慣れた手つきでダイヤルをセットする。
防衛軍本部につながった。
《――受信。要件をどうぞ。所属と市民分類を》
ロボットメッセージに、すぐにコードを打ち込み、いらいらしながら画面に人が現れるのを待った。
《宇宙戦士訓練生、本部所属訓練学校――名前と所属は××-コード▼▼》
「古代、聖樹。宇宙戦士訓練学校戦闘科5年。分類β……オヤジを呼べっ!!」
画面に映った相手は表情も動かさず、《もう一度、聞く。用件を、どうぞ》と返った。
 若い局員だった。よく知っている男である。
「オヤジを、呼べ。と言った。ほかに用件はない。それも、すぐにだっ」
《古代聖樹! 上官を呼ぶのになんと言う言い草だ。きちんと、申告っ!》
「うるさい。さっさとしろ」
《切りますよ――》
 これがもう少し年配の人間だったら即座に切られていただろう。
聖樹はムッとしたが、ギッと唇を噛む。ちくしょう。
「――太陽系外周第七艦隊司令、古代進少将に面談求めます」
《最初から、そうやれ――司令は来客中だ。ちょっと待っていろ》
言い残して画面から離れる――聖樹は内心を抑えてぐっとその数分を耐えた。
まもなく戻った管理官は、古代進の伝言を伝えると言った。
「何故、逢えないんだっ。5分でいい。――直接会って、話したいことがある」
係官は厳しい顔をすると聖樹に対した。
《――君のコードはC-XIIIのグリーンだ。司令にこちらからコンタクトを取るにはG-V以上、ブルーコードが必要なのは知っているはずだ。資格も階位も足りない》
「そ、そんなことは……」わかっている。
と言い放てないのは聖樹の側にも弱みがあるからだ。父親だから――いくら“雲の上の人”でも、血のつながった実の父だ。
現に、兄・守は訓練生の頃から頻繁にあの人と会っていたじゃないか。
だがその聖樹も内心の声を表に出せるほど子どもにはなれない。
 《面談はできない――必要も無いと仰せだ》
「なにっ!? 俺の用件はまだ、話してない」
 一瞬、画面が静止した。
古代進の顔がそこに映った。
《――司令》という声が背後で響くが、すぐに消えた。

 《古代聖樹! 訓練生の身で何という態度を取る。秩序も訓練のうちだろう》
 聖樹は、ようやく現れた数か月ぶりに見た父の顔に、一瞬、ひるんだが、次に怒りで顔を真っ赤にして言った。
「司令! 何故、俺を外すんですかっ。俺のオーロラII世号配属は、すでに決まっていたはずだっ」
古代進は表情も変えず、目の前の少年を見返した。
《決定は発表したとおりだ。お前はαケンウリ方面の主力戦艦ディオニソスに乗艦、訓練の最終行程を終える――そう聞かなかったかね》
「何故だっ! 横暴だ。俺は、そのために今期トップを取った。選抜試験も通過したはずだ。内定もしていたんだ――あんたが反対し、外したって言ってくれたやつがいる。何故だ」
《頭を冷やせ》
古代進は冷静だった。
「……納得、できない。すぐ、そこに行ってやるっ、待ってろ」
聖樹は父親の顔を指差して言ったが、古代は静かに見返すだけだった。
《――来る必要は、無い。来ても同じだ。それに君は、私には逢えんよ……此処ではな》
くそっ。わなわなと震えたが、面と向かっていない以上、通信を切られたら終わりだった。
「――何故、俺は外されたんだ。俺は、あの艦に乗るためだけに…、これまで」
《お前一人ではない。そういう者は沢山いる――それに》
古代聖樹、と父親は言った。
《外された、と言ったな。もしそれが事実だったとして……理由がわからんか。――わからんのならそれが理由だろう》
「なんっ! ……」
 ザラリという音がして、画面は途切れ、管理官の声だけが追いかけた。
《面談は、終わりだ――古代聖樹。あとがつかえておられる。切るぞ》
「――」
くっ、と身体を折り曲げ、聖樹は屈辱に燃えた目を伏せた。
 ばん、とドアを開け放ち、通路へ出たところで加藤大輔と当麻修に会う。
「聖樹--」「セイ……」
 2人の心配はわかったが、くそっ、と彼はつぶやくと、それを押しのけてもときた方へ飛び出していった。

= 2 = へ続く)
2011_09
09
(Fri)17:12

甘い二十>No.17

 一昨日、「こっそり」上げておいたのですが、結構お読みいただいたようで。。。「温泉」の続きがまだ書けないので、先に出来上がったこれについて書いておきます。
 
 書き始めたのは早かったのですが、書き終わったのは18.の方が先で、、、でもだめじゃん>自分

 ともあれ、意外な「赤い糸」をお楽しみいただければ幸いです。
 “こんなの反則やろ”というご意見は、受け付けません(笑)。言葉遊びも、御題の楽しみの一つですからね~♪

 オリジナル・キャラ等は出ません。
 実際、登場人物はほぼ2人だけです(「ガヤ」は出ますけどね)。めずらし~。…って、このシリーズ、それが出来ているだけ、個人的には進歩かなぁ(*^_^*)。

 二十之御題 No.17 【赤い糸が見えた】

                  ・・・

 あとはネタバレになるので、読まれた方のみ、↓「続きを読む」へどうぞ。

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2011_09
08
(Thu)00:06

進捗状況。

 うふふふ、のふ♪

 甘い御題、17も18も出来た♪
 ともかく書いてて楽しいネタだったので、なかなかおいしく出来上がりました。ちょっと調子が戻ってきたかな? 例によって、うまく「甘くなく」出来たぞ。うふふ。

 なのになのに。
 この「温泉」の5と6がしんどいよぅ(^_^;)。
 お話って、連載に向くものとそうでないものがあるのね。どちらも同じように書いていたつもりでも、連載をしているうちに、連載風な作りになってしまうものもある(>前回の「龍の棲む」はまさにこれの典型)。たぶん、紙に落としたりする時には、全面、リライトだわな(笑)。とても書籍に向かない作りです。

 「温泉」が仕上がらないので、ほかのが出せません。
 あうあう。
 辛い話なんですよこれ。しかも、オチが、、、

 ともあれ、がんばってみるか。。。

 「甘い御題・17」は、とてもとても書きたかった話でした。だから早く読んでいただきたい。こういうの好みじゃない方も多いと思いますが、私個人的には、18本書いた中では一番好きな話です。

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2011_09
07
(Wed)01:40

KY100-78・4

古代進&森雪100題, shingetsu版

36.古代君!
65. 海へ
78. 温泉・1・2・3/・4/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 4 =

 翌朝。
 朝風呂を気持ちよく浴びた古代は、昼の弁当を(おにぎりとおかずである)旅館が用意してくれるというのでそれに甘え、早めに旅館を出た。早ければ夕食に南部たちが来るかもしれない。――朝、入っていた携帯メールでは、「どうなるかわからない」と不満げだったが。あいつらのことだ。来なければ来ないでもう一晩一人でゆっくりするか。
 それはちょっと寂しいかもしれない、と珍しく思う古代なのだ。

 朝の光は気持ちよかった。天候も、晴れ。
気になるのは昨日、少年が点検してくれたビスの緩みだったが、なるようにしかならない。あまりふかしすぎないようにし、教えてくれた工場へ立ち寄ってみることにした。

 「おはようございま~す」
朝の光を浴びて木陰にたたずむという雰囲気の小さな工場は、オープンなつくり。店内には何台かのバイクが並べてあるのが外からも眺められた。
古代は声をかけ、「誰かいませんか」と鍵のかかっていない扉を開けた。
 「誰だね」
ひょろりとした爺さんが顔を出して、あん? と言って「お客さんかね、どうぞ」と言われるまま中へ入った。「ミサキ!」と呼ぶ。気づくと土間の床の隅に若者が一人、部品をいじっていた。もっそりと立ち上がり、やってくる。
 「バイク、中へ入れとけ。外、置いとくとだめだ」
「あ、あぁ…」古代のバイクはそれなりに価値のあるものだ。型式がヴィンテージだということもあるだろうが、実際に使えるように改造を重ねてあり、かなり趣味度が高い――古代の趣味、つまり実用的で機動性が良い。古代はこれを、こっそり“地上のコスモ・ゼロ”だと考えていた。――もちろんゼロは官品、このバイクは個人持ちという違いはあるが。
 ミサキと呼ばれた青年が立ち上がって、バイクの横へやってきた。
無愛想な男で、表情も変わらない。だが「触るぞ」と一言断って「どこだ? タケが言ってた車だな」「タケ?」「弟。――会ったんだろ、昨日」
あぁ、これが少年の兄なのかと古代は思い、そういえば彼の名前を聞かなかったなと思った。タケというのがそうで、目の前にいるのが兄か。ミサキというのは名前だろうか。苗字だろうか。
 古代が手で示した場所を見て、ミサキの顔色が変わった。
 昨日、少年もそれを見て表情を変えたのだ。「――そこのビスが緩んでる。錆びが出てるのかもしれない」少年に言われていたのはそのカバーの裏側の部品だった。が、ミサキが……もしかしたら少年も。引っかかったのはそこではなかった。
 「免許証、出しな」
ミサキが言い、古代は一瞬、躊躇した。「何故」と問う。
「あんた、ツーリング行くんだろ」あぁ、と答える。
「――時々いるんだよ、無免許のやつ。機械さえ手に入ればそんなに難しくはないからな、皆、簡単に乗りやがる。それで事故って、あの世行きだ。……うちはそんなやつの整備もしねぇし、部品も出さない」
「――そうだ。だから免許は見せて貰うことにしてんだ」最初の爺がそう言った。やり取りはミサキみ任せて、板の間の帳場でなにやら図面を眺めている。
 古代は仕方なくライダースーツの内側の胸ポケットから1枚のコーティングカードを出した。顔写真入り、シークレットセンサーの付いた特別免許証。
この時代、二輪の免許は普通のエアカーの比ではないほど取得が難しい。だが古代のように軍にいて様々なライセンスを持っている者は、単位を取得後なら講習だけ受ければ免許が出た。一般ライセンスとは色が異なる。見る人が見ればすぐに軍人であり士官だとわかるシロモノなのだ――しかも、いいわけが利かない。当然そこには、「古代 進(森)」と記されてあるからだ。
 AAライセンス所持。その気になればレースに出る資格も持つ(ただしレースは経験値を積まなければコースや大会に出場できないため、古代の免許で出られるわけではない)。運動神経の塊のような古代である。随分若いときに取ったもので、軍務で得た資格ではなく、正規に取得した二輪免許だった(とはいえ、経緯で表示が異なるわけではない)。
 バイク乗りは戦闘機乗り(パイロット)と同じく、力量の上の相手の前では、掛け値なしの敬意を示す。通常なら、これを見れば尊敬の眼差しを向けるか羨ましがるところ、ミサキはひと目見ると、付き返すようにそれを返して寄越した。
 「帰ってくれ!」
急に、無愛想さに拍車がかかる。
「――森、という名前も嘘だな」
「……それは、わけがあって」古代が何か言おうとすると
「そんなことはどうでもいい。あんたにやる整備は無い」
「だが……」
「部品はやる。金も要らない。早く、それを持って出ていってくれ」
「君……」
「早くっ! 塩まくぞ」
 けんもほろろに工場を追い出されるように古代は其処を出た。
言ったように部品だけはくれたので、少し転がしてから自分で替えるしかなかった。

 (免許――? 軍人嫌いか? それとも)
古代は突然、はっと気づいた。
(俺の、名前? ――コダイススム、に何か思うところがあったのか?)
考えてもわかりはしなかった。少年は何も言ってなかったではないか。
 気にしていても始まらなかった。
地図はあり、部品も完璧だ。弁当も持っている(宿で握り飯を作ってくれたのだ)。宿へ戻ったらまた少年をつかまえて訊ねてみよう。そう思い、その日の山上りに向かう古代だった。日が随分、高くなってきた時刻である。

(= 5 = へ続く)
2011_09
06
(Tue)00:01

直球真正面勝負! とフォーレ。

 某所で展開されている対抗(違)・「古代進のイメージによる二十の甘い御題」。
 ををを~~出た。直球真正面勝負だっ!!

 なんか照れます。照れ照れです(*^_^*)・・・こういうのやられると勝負にならん。ワタクシ、こういう純な心根は失くしてしまって久しいです。なんだかウラワザかけないとダメなんですぅ。で、うっかり読んで感動してしまい、「もーいいじゃん。自分で書くことないじゃん」と思ってやめた話ってけっこうありますよねぇ(笑)(あ、いや此処のblogのことじゃなくって。他所様でも)。

 まっすぐな、登場人物や物語への愛情ってのは、なんかまぶしいものです。
 それがどんどん文章磨かれて、視点も「ほぉ、そうか。そこかー」と思うような場所をピックアップしてくると、なんか感心したり感動したりしますよね。。。って本人へ感想送ればいいんですが、長くなるのと自分の話が多いので、此処に書いてみました。いま現在、[1]がアップされています。続き、請・ご期待。

 比べるもんじゃないにしても、、、自分の、面白くないよなぁ、ううむ。

                  ・・・
 いつもコメントいただく某さまから、フォーレの「レクイエム」について御話いただきました。
 クラシックの世界で、【三大レクイエム】という言い方がありまして、モーツァルト、ヴェルディ、フォーレ、、、だったと思います(J.S.バッハは「レクイエム」は書いていません)。ブラームスの「ドイツレクイエム」を入れる場合もあるけど、これは歌詞がラテン語の「ミサ通常文」じゃないから違うかな。

 現代の三大レクイエム、といえばブリテンの「戦争レクイエム」のほか、なんだろう。ペンデレツキとデュルフレだろうか。

 実は昨日、自分ちのオーケストラの本番でした。そのわりに騒がなかったのは、休団中でして、出演してなかったからです。
 長い歴史の楽団なのですが、合唱団との初共演と相なりまして、メインはブラームス「ドイツ・レクイエム」でした。名曲中の名曲ですが、合唱は、、、たいへんなんですよぅ、これ。ただしとても歌い甲斐があり、涙が出るくらい音楽も歌詞も美しいです。


 フォーレのレクイエムには、確かに「Dies irae」が無いんです。そのかわりに、詩篇から歌詞を取ったりした余分なものがくっついている。「Pie Jesu」とか「Libera me」とかそうです。で、これがまた名曲だったりする。
 うちの話でこの、フォーレのレクイエムをネタにした南部君の部下・山科さんという人の話を書いたときに、どうしても山本にヴァイオリンの旋律を弾かせたかったし、松本にオルガン弾かせて、山科にこの、リベラ・メのバリトン・ソロを歌わせたかったので。涙出てきますよ、いつ聴いても。

 ところが偶然でしょうか。本日、会社にEMIからサンプルCDが届いて、開けてみたらこの曲でした。

 パーヴォ・ヤルヴィ指揮、パリ国立管弦楽団(パリ管)

 ソプラノがカウンターテノールという珍しい盤です。
 それにバリトンはマティアス・ゲルネ! これは素晴らしい。
 9月14日リリースだそうです。いまなら特典付き(<別に回し者ではない・笑)

 仕事中、めったにBGMはかけないのですが、今日は片付け作業が主だったので、皆の許可を得てオープンでかけました。。。むっちゃ“濃い”フォーレクだった(^_^;)。

 個人的な好みとしては、

 ミシェル・コルボ指揮/ローザンヌ声楽アンサンブル

 とかが最近のものでは好きです。昨年の「ラ・フォルジュルネ・オ・ジャポン」でも何度も演奏されました。すんばらしいです。

 EMI盤=息子ヤルヴィ(papaヤルヴィ、という人も有名な指揮者なのですよん)のは、これもいいです。
 さらに同じ盤に入っている「ラシーヌ賛歌」と「パヴァーヌ」、チェロ協奏曲の「エレジー」が素晴らしいですね。本当に、この世で最も好きな曲の一つといってもいいくらい、本当に美しい、天からの贈り物のような曲です。
 「バビロンの流れのほとりに」って聴いたことない合唱曲だと思ったら録音は世界初なんだそうな。

 なんちて。
 久々に音楽の話で終わった。…でも、自分の話もいま読んでみたら結構面白かったのでどうぞ。>「レクイエム」

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2011_09
05
(Mon)00:04

KY100-78・3

古代進&森雪100題, shingetsu版

36.古代君!
65. 海へ
78. 温泉・1・2/・3/
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 3 =

 『だぁからぁ、古代さん。済みませんってば――』

 画面に映っている南部の顔は小さいが態度は慇懃なだけで相変わらず大きい。
自分から誘っておいて、ひどいじゃないか、と古代が文句を言うと、
『俺だって休みたかったんですよぅ。でも親父さんから珍しくSOSなぞあって、ですねぇ。どうにも出かけられなくなっちまいまして……』
「相原は」
『――長官がらみだそうです』
 はぁそうですか、と古代は内心ため息を付く。
どちらもそれ相応の“家”なのだ。
仕事が抜けられると思えば、そっちかと思うと、そういった係累の無い自分は、それはそれで想像するしかない。
 わかった、と言う古代に、キャンセル料その他はこっちで持ちますからゆっくりしてらしてください、と気配りを見せる南部。
『たまには一人でのんびりされるのも良いんじゃないですか――それとも』
そのあとは言わなくてもわかった。どうせ、
「ユキさんや俺たちが居ないと寂しいですか?」とでもからかいにくるに決まっているからだ。
お言葉に甘えることにした古代である。一人なら一人の楽しみ方もあるというものだ。
 “地球に帰ればご家庭優先”の典型だった古代進であるが、久々にバイクを引っ張り出したのもその思いつきの一つ。
たまにはこんなのもいいなと思えるのも、家族あってのことなのかもしれないと思うのだ。
幸せなんだろうな、と思う。

 そんなわけで自宅には戻らず、セキュリティハウスから直行してしまった古代である。
南部たちは後から追っかけてくると言っていた。果たして3泊4日のうちに来れるのかどうかはわからないが。
古代はそれには構わず、このあたりの山道をツーリングしてみようと思っている。
調べてみたらこのあたりには、そういったコースがあるらしく、以前から来てみたいとも思っていたのだ。
――もちろん、再生された地球での新しい山野に、ということだが。
 水惑星アクエリアスは、瓦礫と再生区のまだらだった地表に、多くの水を作った。
必ずしもそれは天然にうまくいったものばかりではなく、一度は削られ、二度の熱で粘土のように固まってしまった地表は掘り起こしても元の地層を残している地域ばかりではない。
だが中には湖や川として再生したもの、地下に注いで源泉を作ったものもある。
地球は三度痛めつけられたが、まだ命を失ってはいなかったのだ。
――中でも幸いにして、日本列島は地力が強かったのか、比較的新しい層だったためか、地力そのものを取り戻しつつあり、それに注がれた水が、元の“列島”の自然を復活させるのに役立っている。
もちろん相当に人工的な手を入れなければならなかったのは当然である。

 この地域(エリア)は“日本の山野”らしきものが早くから再生されていたそうだ。
特別区に指定を受け、熱水鉱床も再生し温泉としてよみがえった。
浄化や再生のため、古い日本の風景に見せながら、地域には最新の技術が導入されているに違いないのだ。
そうまでしても、大和民族は、元の“自然”を取り戻したかった――それは古代らだけでなく人々の共通の思いだったのだろう。

                 ☆
 風呂を終えて夕食までには時間があったので、そろそろ来ればいいがと思いながら預けてある格納庫の方へ行こうと立ち上がったところで少年と会った。
「終わったのかい?」古代が訊ねると、こくりと頷く。
「じゃぁ、見に来るか?」そう問うと、
「本当にいいんですか?」言い、嬉しそうに先に立って前庭にある格納庫へ行った。
馬小屋の横にある倉庫の鍵を開けて其処に大事に止められているバイクを見る。
 「2201年式――」
「あぁ」と古代。もうだいぶん古いものだが、型式そのものは2193年製で、それのレプリカなのだと聞いている。ただ、訓練学校生の頃から自分でチューニングしたりもしたため、排気量その他、規定ぎりぎりの改造ぶりだ。
 「見ても、いいですか?」
おずっと、だが目を輝かせて言う少年に、あぁ、と古代は笑って頷いた。
メカ好きの目をしている。
こういう男になら、いじらせても大丈夫だろうと思う。
 バイク自体は量産品というわけではないので中古(なのだ、古代のものは)でもそこそこの値が付くが、乗る機会がひどく少ない割りに錆びも無く、管理は行き届いていた。

 「すっごいですね~。初めて見ます、本物!」
兄の工場ではそういうレプリカやヴィンテージの好事家たちも集まるため、実際に転がすための二輪も見てはいたが、これだけ乗り込んだものは久しぶりだと言った。
 見て飽かず、古代もあちこちを示しながら、特にエンジン周りには興味が共通しているらしかった。
そのカバーのウラを覗き込んでいた少年の目が、え、と1点で留まる。
だが気にしない風を装って、どうかしたか? という古代をやり過ごした。

 「森さん――でしたよね」
記憶力は良いらしい。
「あぁ――進(シン)っていう」
古代の名を音(おん)読みにした、バイク仲間での呼び名である。
「……ここ、ちょっと。磨耗しているみたいです」
ビスの一つを差して、言った。
「明日、ツーリングとか行かれますか?」と問い、あぁと答えると、
「交換しないと抜けたら危険かも」。
 整備はきっちりしていたつもりだったが、飛び出す時に気が急いていたかもしれない。
せめて旅館に着いてからきちんと調べてみればよかった――予備の部品も持ってきていない。
この時間では、整備工場を探すのも難しいだろうと古代は思った。
「――今日、兄に言っておきます。朝、工場に寄ってってください。どうせこの裏山のコースに行かれるんでしょう?」
そのために集まってくるバイク仲間の溜まり場でもあるらしい。
「……ん、と――」部品を仔細にチェックしはじめた彼は、
「たぶん。このサイズならうちにあるので間に合うと思いますから。場所は、此処――」
紙に簡単な地図を書いてみせた。
車で10分くらいです。僕は自転車で通っているので、と彼は言い、目の保養をありがとうございました、と言った。
 いい子だな――。
古代は例を言うと、
「裏山のコース地図は、帳場にありますので。必ず持っていってくださいね。迷った時の連絡先なんかもありますから」
山を舐めると怖いですよ、と言われ、そうだなと古代は思った。
――宇宙は危険で、予測ができない。だがそう思って地上を舐めてかかると……こんな低い山でも遭難したり事故死する宇宙生活者はいるのだ。――気をつけよう、と思うのだ。

= 4 = へ続く)
2011_09
04
(Sun)00:14

KY100-78・2

古代進&森雪100題, shingetsu版

36.古代君!
65. 海へ
78. 温泉・1/・2

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 2 =

 「こんばんはぁ」
ガラリと昔風の玄関を開けて、古代進は帳場の先から声をかけた。
「はい、いらっしゃいませ」いかにも客商売、といった腰の低い番頭さんが出てきて、
「ご予約ですか?」と訊ねた。彼は頷くと、
「森、といいます。3人なんだけど、連れが今日は来られなくなったそうで、1人に変更可能ですか?」
と訊ねた。
キャンセル料が必要なら、払ってもよい――まったくもう、あいつらから呼び出しておいて、という古代進である。

 古代が久しぶりに地球へ戻ってくる。しかもユキさんは仕事で火星から戻れず、守くんも一緒に行ってしまっている、という情報を(どこでかは知らないが)聞きつけて、相原から連絡があったのは、その前に寄航した衛星基地だった。
 『――南部さんが、久しぶりに飲まないかって。良い温泉宿知ってますから、そこでいかがっすか、と言ってましたよ』もちろんいらっしゃいますよね、という口調の元・部下&今でも時々部下の相原義一である。太田は相変わらずガニメデですから、ヤツには申し訳ないんっすけど、3人で飲りましょうよ、と言っても相原は下戸ではあるが。
 古代の下船に合わせて南部が予約した。
3人で――3人とも有名すぎるので、名前は「森」にしたといっていたな。
――“森”もそれなりに有名だと思うのだが、我々の名よりはあちこちにあるからいいのだそうだ。

 ほう、と浴衣に着替えて部屋にくつろぐと、作務衣の若い男性がお茶を淹れに来た。
窓際にくつろいで風を仰いでいた古代は、
「お世話になります――」と言ってありがたく茶を啜ってから、「男性の仲居さんは珍しいですね」と言った。
 自分に声をかけられたと知って、驚いたのか、少しはにかみながらおずおずと顔を上げたのは、まだ少年という年齢を少し出たくらいの年の若者である。
実直そうな瞳と、大人しやかな所作が、旅館の下働きなのかなとも思わせる。
「はい……あの」口ごもるようすに、古代は
「連れがいるわけじゃない。少し話していきませんか」と(珍しくも)声をかけた。
 「あの……お客さんが乗ってらした――あれ」
「あぁ、バイク? 好きなの」
こくりと頷く。興味深そうに見ていたから、それなら茶を持っていけと番頭さんに言われたのだと彼は言った。
「――趣味なんです。自分で作ったりする方ですけど」
恥ずかしそうに言うのに、古代の方がへぇと興味を持った。
 大人しいが暗い子ではない。想像したとおり、ときどき旅館の下働きをしながらお小遣い程度を貰っているといい、この付近に住んでいるのだといった。機械いじりが好きで、自分で部品を集めて動くものを作ったりするのだという。一種の才能もあるようで、若年層部門のロボット製作で賞を取ったこともあるんだそうだ。
(真田さんが小さい頃ってこんなだったのかな――)
古代は微笑ましい想いで目を輝かせてそんなことを語る少年を見ていた。
「お兄さんがいるのかい? 仲がいいんだね」
ううん、とはにかみながら首を振ったが、その様子は兄をとても慕っていると見えた。兄弟も機械が好きでそういった店に勤めているのだそうだ。時々整備を教えてもらうという。
休憩時間になったらおいで、見たければいいよと古代が言うと、
「お許し貰ってから。でも、ありがとうございますっ」と本当に嬉しそうに辞していった。

 湯に行こうと渡り廊下を歩いていると先ほどの番頭さんとすれ違った。
「すみませんね、お客さん。長居しないようにって言ったんですけど」
構いませんよと古代は言った。引き留めたのは自分だから叱らないでやってください、と言って仕事が終わったらの許可もついでに貰ってやった。
 すると、いえね、と話し好きらしい番頭さんは少し寄って、あの兄弟は親がおりませんで、と言う。やはり四度の地球侵攻戦役の犠牲者で――と、あとは言葉を濁した。単なる戦災死ではないのか? と古代が怪訝な顔をしたのだろう。気を取り直したように番頭さんは、「考えてみれば可哀想なんですよ。あの子は素直ないい子ですけど、兄さんの方は。今は真面目に働いていますけどね、まぁいろいろありました」あとは少し笑うと首を振った。
 どこにでも悲劇は転がっている――古代は番頭さんと並んで静かに流れるせせらぎの音を聞きながら、木陰に見える蒔小屋の隅で用具を片付けている少年に目をやった。

= 3 = へ続く)
2011_09
03
(Sat)03:13

台風来たる

 大阪行きをやめて、自宅に居ます。
 本当なら今夜は大阪にいて、昼間はお仕事関係の人に逢ったり遊んだりして、明日は楽しくお芝居見てるはずだったんだけどな~。チケット代勿体無いけど、この折、仕方ないでしょう。
 台風ですね。
 通過地域の皆様、どうぞほんとうにお気をつけください。

 今朝のチケット取り(某追加発売)にも敗退した(;_;)いいもん。ちくそー、でも悔しい。

 は。
 そういえば、先般、ここに毒舌吐いたら、いろいろな方にお慰めいただきました。感謝いたします。……つ~か、皆さまオトナです。ありがたく慰められました、はい。

 そういえば、作品書き書きの裏話など書いてみましたら、侘び入れられたりした方もいらっしゃいましたが、それは誤解というものです。私は、自分が書きたくないものを書いたりしません。リクエストはあくまでも「きっかけ」であって、どうにでもそれに合わせて作品を発表しよう、なんて思っていませんのでご安心ください。

 一人のために書く、ということはもちろんありますけど、それは、「この人を面白がらせてやろう」という、一種のゲームみたいなところがありますね。その、提示したテーマが私と合わなければもちろん、取り上げたりしませんし、自分が面白いと思っていなければやらない。逆に、それはこちらがネタとして利用させていただいているという風に考えていただいてもよいかと思います。

 ただ、書くってことは簡単なことじゃないですよーって話です。
 どなたもがそうだろうとは思いますが、「ヤマト」という作品が皆、大事です。大事、ということへの愛情の表し方はいろいろあるでしょうが、私みたいに「好きなわけじゃない、むしろ愛憎」という人間だとしても、本作を勝手にいじっていいのか? というのは根本的にある考え方です。
 だから、面白い物語を書きたい、という一方で、一方的な思い入れや妄想だけ、というのは、「私は」書けないんですね。だからオリジナル・キャラにそのへんは担当していただく。なるべく本編を読み取り、解説というか、自分の目でみて考えた「解釈」を物語にしたいと考えてきたし、今後もきっとそうでしょう。
 それは、“本家どり”の一種だと考えることにしています。
 ほら、そうすれば日本でも中世の昔からあったし、欧州でも盛んに行われていたでしょう? パロディという形で。

 もちろん多くの同人誌がとってきたように、「本編や登場人物たちで遊ぶ」というのもパロディの正しい姿ではあります。自分がやらないだけで、読むのは楽しいんですしね。アイデアやセンスが良ければ、これは本当に素晴らしい創作物になる可能性もあるので。

 いくら私が[そう]言ったところで、それもまた自分の思い込みなのでしょう。だから共感していただける方だけ読んでいただければいいなと思うんですよ。もはやスタートして6年、ほとんどの人物たちが性格や血肉を持って、すでに勝手に動くようになってしまい…これもきっとある種の“思い込み”なんだろうけどねぇ。

                  ・・・
 さて、連載の方は、さみだれ式にすることにしました。
 とりあえず、この「温泉」は、3か4で終わります。次の「海へ…」は、ちょいと長編になる予定(おまけに、いままでのとはぜんぜん、意味合いが違う話で、、、私には珍しい異世界ものなので)なので、その間に、blog連載の「訓練学校時代」を挟んでいくことにしました。

 ところでその合間に、宇宙図書館の「ブックフェア」がありますからね。それともまた絡んで予定は変わるにちがいない(笑)。
 とまれ、ご遠慮なさらずリクエストはどんどん、どうぞ。
 全部やるわけじゃないし、そんな義務もないので、気軽に言ってみて大丈夫なんですよ♪ 前回の「龍の棲む」なんかは、リクエストがなかったら始まらなかった話で、自分でも意外な方向へ発展して、非常に面白かったでした。そういうこともまたありますしね。

 そろそろ加藤四郎&佐々葉子を出したいな~~。
 古河大地はもっと出したいし続きも書きたいんだけど、さすがにblogには載せられない(_ _;)
2011_09
02
(Fri)00:18

KY100-78・1

古代進&森雪100題, shingetsu版

36.古代くん!
65. 海へ
78. 温泉

・・・・・
【78. 温泉】

= 1 =

 古代進は久しぶりに地球へ帰還した。
 ハンディケースを持ち、いくらかの雑務をこなして最後に一通りの報告事項に目を通すと、艦長室を後にする。――この瞬間の気持ちというのはなんともいえない。
 ほっとするというのでも、名残惜しいというのでもないが。繰り返し、繰り返し……何年経っても、慣れるわけではないのだろうとも思う。

 「艦長、お先に」
「よい休暇を!」
「……失礼します」「お疲れさまでした」
すれ違う部下たちが、敬礼し、だが声をかけていくのは古代艦の特徴でもあったろうか。
(貫禄、足りないのかな…)
と時に思わないでもないが、いつもむっつり難しい顔をして、雲の上に居るだけが艦長のスタイルでもあるまい、とこのごろは古代も割り切っている。
副官や艦橋要員よりも若くて、現場の戦闘員たちと同年代で。からかわれたり笑い合いながら宇宙を飛ぶ艦長がいたっていいだろう――なんてな。言い訳かな。
 上の世代が地球存亡の戦いで失われて久しい――だから、各基地や現場の責任者は同世代前後も多くて――
「古代!」「よぉ、久しぶりだな」……気軽に声をかけあい、呼び捨てにする仲の者も多いのだ。
訓練学校のつながりもあるし。
――いざ事が起これば皆、瞬時に従い、古代ならなんとかしてくれるだろうと信望されるカリスマ……そんな自覚がないのも古代進本人だけであろう。

 「艦長――お疲れさまでした」
 そう言いながら隣に並んでくるヤツがいた。
ここまで図々しいのはさほど多くない。今回、借り出されて戦闘機隊長を務めた加藤四郎である。
「珍しいですね、このまま休暇ってのは」
「あぁ――ちょっとな」
本部勤めを3日、次の出航の手当てをし、その準備までの間を休暇に当てる。
それが古代艦長の通常のスタイルだが――今回は、降りてそのまま休暇に入る。
 「ユキさんと、デートですか?」
ん? と見る顔が笑っている。
「あ?……阿呆。あいつらは火星。しばらく戻って来んさ」
地球へ戻る楽しみといえば、家族と過ごすことが一番であるのは宇宙の男とて例外ではない。
ましてや幾つになっても“究極のカップル”という印象から逃れられない古代進とユキ夫妻。
1子に恵まれてもそのお熱さは噂を呼ぶ――ほどである。
 それに憧れる女子たちも、ただし“めったに会えない”という“宇宙戦士との恋の成就”という現実に目覚めると躊躇するのがほとんどではあるのだが――。なかなか難しい時代になったものだ。

 加藤も恋人と小旅行に出ると言っていた。めったにないことだが休みがぴったり合ったそうで、さらに珍しいことに“恋人からのお誘い”なのだそうだ。ヤツがすっ飛んでいくのも仕方ないというものだろう。
(あいつらこそ、“宇宙一ラブラブってやつ”じゃないか?)と古代はこっそり思うのだが。

                  ★
 古代進はそのまま宙港前からエアタクシーを拾うと、さほど遠くないセキュリティハウスの前へ付けた。
そこで制服を脱ぎ、ラフな格好に着替えると用意してあったらしいバッグを肩にかけ、バイクにまたがる。
 (久しぶりだな――〔これ〕に乗るのも)
バイクといってもエアーバイクではない。昔ながらの、車輪で走るものだ。
古代はこれが趣味で、同じように“オタク”といわれながらいじるのも乗るのも好きだった故・加藤三郎と一緒に、けっこう話し合ったり飛び回ったものである。

 風を受ける感じが気持ちよかった――。

 そのまま東京メガロポリスを外に回り、海岸沿いへ出ると、一気に西下していった。
列島の形は変わってしまった、とはいえ、日本の山野は再生され、また元の南北に長い、民族の土地として栄えている。そこを彼は西へ向かい、ひた走っていく。

 道行く人々が、気づけば振り返った。

 ヘルメットの下の顔にまでは思い至らないが、いまどきガソリンと車輪で走るバイクは、音も小さくない。
エコロジカルではない――といわれてはいるが、なにせ存在自体が珍しいから、問題にされることもなかった。
ただし注目されるのは仕方ない、と諦めている。
ガソリンを手に入れるのが大変なのとコストが高くなること、故障でもした日には自分で治さなければならない、という面倒はあるにせよ――そうした“手間ヒマ”もまた楽しい古代なのである。

= 2 = へ続く)
2011_09
01
(Thu)09:54

迷ってます(_ _;)

 ふぅ。
 やっと、「古代君!」が終わった。

 「~君」を、「~くん」と表記するのは、私の習慣です。例えば「子ども」とか「友だち」とか。このへんはこだわりがあって、御題なんだから本来は「古代君!」って書かないといけないんだけど、あらら、とあとから思う。本文中は、まぁいいやなんですけどね。
 そのわりに、「十分」とか「生かす」とかは、国語表記が変わった時に、相当に抵抗したのだけど、疲れちゃって、“長いものに巻かれて”ますなぁ(^_^;)。本来なら「充分/十分」「生かす/活かす」「込む/混む」って、それぞれ意味が違うんですけどねぇ。あぁ、「全て/総て」もそうです。…ってご存知でした?

 話が逸れたな(笑)。

 このオハナシ、葵ちゃんてこういう娘の予定はなかったんですけどね。。。守くんが一筋縄ではいかなかった。それに、上級生が訪ねてくるのにクラスメートが来ないってオカシイだろう? ってことになり、微修正。
 実は、もともと(連載前)は、「2」までしか出来ていなかった。要するに、葵ちゃんたち3人が古代家を訪ねてくるところまで。オチは決まっていたんですが、、、これを書いたら守くんが小学校6年生の話をむしょうに書きたくなって、メモ書きしてるところ。だが「御題」がないんだよねー。いまんとこ「武士の御題:10.ようそろ」の予定ですけど、、、あぁこの御題は島くんにしたかった。

 同性からみて、あぁいう女の子はどうなんでしょうか。
 下級生には反発されるし(美人だし、性格もはっきりしてるから)、たぶんクラスメートでも味方とそうじゃない子がはっきり分かれる気がする。先生にはかわいがられるかもしれないけど。中学生くらいのオトコノコとかからはもてそうだなぁ。
 で、守くんは苦手なタイプですが、おとーさま(進くん)は、結構好みだと思われます(笑)。「けなげでかわいい。しかもうちの息子を好いてくれてるし」なぁんて思ってるんじゃないでしょうか。だめだって、小学校4年生の女の子タラしちゃ(<ばき)>コダイススム。

 葵ちゃんは、たぶんたいした大人になると思います。この先、どこかで出てきたらいいなぁとか。で、そのときに守くんがどう思ったかは、ナイショです(笑)。

                    ・・・
 なにを迷っているかというとですね。
 このあと、何を上げようかということなんです。

 やりたいことが重なっている。「二十の御題」続きか、「海へ…」「温泉」か、それとも新・blog連載か。
 最後のは、「夜明け前(訓練学校時代)」にしました。半分くらいはネットに上がっているので、それを流していくだけですので、もうスタートできる。間も少しずつ埋めているので、ほんとうはこれをやりたいんだけど…。たぶん、物凄く時間がかかる&飛び飛びになると思うので、読む方が混乱するか? と思ったりします。
 ならば、ky100を済ませてしまうか? と思うんですが、同じようなネタばっかり残ってしまって、前の連載みたいに冒険活劇がないんだよね。ツマラナクないですか?

 私はLoveものとかご家庭ものは、実は苦手です。書くのにものすごくエネルギーがいります。普通の話って難しいんですよ、それにこれ、一応、SFで、近未来ものですからね。ごく日常の中に、「現代とは違う」「普通の日常とは違う」「ヤマトである」ことがもぐりこんでいなければならない、しかも自然に。
 ね、難しいでしょ?

 もちろん冒険活劇というか、宇宙でのオシゴトを書くのは、作戦とかそういうのを考えるそのものが大変ですが、それとはまた別の大変さです。働いてるときって、ヒトビトはいやでもカッコいいからねぇ、書いてても萌えなんですけど(笑)。

 夜明け前は、“原点に還る”話です。もしかすると、blogに連載するにはシビアすぎ、暗すぎて、グロいかもしれません。まぁいいか、自分ちだし。それに、“思いっきり二次”ですからねぇ、一見、ものすごくオリジナルな感じでありながら、ヤマトそのものに切り込んでます、、、つもりです。いいのかそれって(泣)

 ということで、今夜アップするのを、どれにしようか迷い中(^_^;)。ひとつずつ終わらせろよ、という声がどこかから聞こえてきそうですが、、、だって。もうすぐに多忙時期にそろそろ突入するんですもん★
2011_09
01
(Thu)00:15

職安/O野和士の指揮やらO澤の中国公演降板やら

 ここのところ、頭があんまり回っていない。
 今回の仕事の「山」があんまり高かったもので、放出しすぎて「空っぽ」になっとりますー。休んでも休まないし、いやまぁなんだかかんだかありますし。

 というわけで、blogは開店休業で、連載ばっかりだもんなー。
 それもまたどうよと思いますので、久々にblogらしきことも書いてみようかと思う。

 どうせ愚痴です。また一人辞めたので(泣)、、、さすがにこうなると自分の所為かなとか思ったりして落ち込む。
 人の心根だけはどーにもならんが、この仕事、われわれは叩かれても(精神的にだ)、罵倒されても(実際に)、言い返せるまでがんばるのが普通だったし、そうでなければ「やめれば(仕事そのものを)」という時代。それは今でもおんなじだろうというのは、こういった仕事をやりたい人の数の多さでも想像できよう。だけど、世代の違う「デキる」人って、本当に少ないんだぞ~~~。いるにはいるけど、みぃんな仕事先にちゃんと収まっていて、聞くところによると「不況なんで。仕事なくなると力あっても辞めて故郷へ帰ったって人も多い」んだそうで。昔みたいに「手が足りない~~助っ人!」というパターンがなくなった。
 お金なくなると電話して「またたこ部屋行くか」ってノリ、、、それもないか。
 いま、動かない、ネットで探す、きちんと調べられないようなモンでも使われるからなー。それで全体の質落としてりゃ世話ねーぜ(<と怒る)。

 ともあれ。
 どの業界でも「雑用」ってのは大事なんだよねー。雑用がきちんとできればたいていの能力は持ってるとおもわれる。あとは電話の取次ぎとか。社内で交わされている会話は、耳に入っている範囲できいておいて、何かあったらつなぐ。わからなかった予備知識を入れておく。じゃないと、ばんばん名前のある人から(こういう人=著名人 は苗字くらいしか名乗らないので、たいへん失礼なことをすることになるのである)電話かかってくるような仕事場に、あぶなくてアルバイト置いておけない。
 で、雑用をお願いして、あれこれって指示して、空いてる時間はこれこれやっといてね、と言っておくと、やめる。雑用のやり方とか、質問の仕方とか、日報とか見てて、こちらは割り振りを考えようと思っていたりするのだが。しかも、専門的なことは教えなければならない。それの項目について言うと、「××は出来ます」はぁそうですか。出来るんならやってもらおーやないか、、、とは思わないけど、「出来ます」というと、それをさらに、「それではあかんからこうやって」とは言えないであろう。私はその意味では、私らがぺーぺーの頃、怒鳴り倒してくれた先輩がたほどには親切でも厳しくもない。結果みて、あかんかったらあかん、と言って、「原因考えよ」と言う。大人だから、、、と思ったりするのが間違いかい? こっちだって我慢してんだけどねぇ、待つのってたいへんなのよ、それが商品なんだから妙なもの出せないから。

 ということで、職安に行ってみたりもした、、、ひゃぁってくらい人の山。不況なのね。…しかも働き盛りって年代の人もけっこう多い。
 ほしい人材がいて。喉から手が出るくらいだったとしても。ほしい仕事のある人がいて。だけどうまくマッチングする例が少ないんだろう。

 若い人来て貰ってね、育てて後継にしたいなというのは夢でもあるよね。実際に、過去そうやって関わった後輩は何人かいる。皆さん、リッパにご活躍中だったり、活躍ののち引退されたりしてますけどねぇ。「やりたい」「なりたい」ってそんな簡単に判断するものかなぁ。どれだけ継続できるか、どれだけふんばれるか、だと思うんだけどねぇ。自分がそんなにエラいんだろうか? よくわからない。自分はお莫迦だと思ってたし(いまでも思ってるけど)、なぁんもわからなかった頃、いや少しは仕事できるようになってからでも、違うジャンルだとか違うスキル持ってる人と出会うと、何でも聞いた。雑談してるだけでも勉強になるんだもん。
 そうやって覚えていく、、、のじゃないんだろうか?

 いまの若い人、みんなそうだよ。
 と物分りよく言ってもいいけどねぇ。もちろん言い方とかやり方はあるんでしょうが。でもさ、飲み屋で隣でしゃべってる若者とかの雑談聞いてると、、、時代変わってもあんまり仕事の本質って変わってない、、、と私なんかは思うけどね。実際に、使える人もいるわけだし。

               ・・・
 とまぁそのへんにして。

 サントリーサマーフェスタというのがありまして。毎年、溜池山王方面で、テーマを決めて現代音楽や映画音楽や、いろいろの演奏会がある。その「サントリー音楽賞」の受賞記念で、マーラーの「復活」を聴いてきました。
 この間、演奏したり歌ったりしたばかりだし、特別なんだか素晴らしかったでした。

 友人に誘われて行ったわけですが、「う~ん、Tフィルに7,500円かぁ…」と躊躇したものの(笑)(ごめんなさい)、たいへんに素晴らしかった。乗った時のプロの演奏ってすごい。
 信頼するリーダーと楽員のつながり…っていうと感じすぎかもしれないのですが。この楽団がオペラに精通し、日本でも屈指の劇場で伴奏を勤めて一級、といわれるようになったのは、もとはといえば、ある時期、音楽監督として徹底的にこの楽団と付き合い切った、この指揮者のお陰なのです。そりゃいろいろ問題はあるにせよ、現在の楽団の中核を担う人々と、この人との信頼関係は凄い。現在、世界の楽団で活躍し、日本に拠点を持たない指揮者ですが、彼は常にこの楽団を気遣い、また楽団も彼に信頼を寄せる。

 まぁ指揮者というのは艦隊指揮官になぞらえてもいいのですが、ほぉら、誰かとどっかの艦に似とりませんか。
 なぁんてね。

 実際、音が違うんです。集中力というか、なんだかねー、音楽するヨロコビが溢れてきて、涙がにじみました。受賞の記念にこの曲を演ろう、といったのは。やはりあの3.11からの日本の復興を願い、なくなられた方の魂を悼んで。だということでした。

 演奏会終了後。楽屋を訪ねてから、何故かフランスの国立の楽団で活躍中の二人の演奏家(何故か日本にいる)+αの4人でお食事。一人はサイトウ・キネン・オーケストラで翌日早朝から中国公演の途中、ちょうど東京で休みだったから聴きに来た、ということで。(実際、楽屋裏へ行ったら指揮者だの演奏家だのがぞろぞろ)
 ところが、ラジオのニュースで、「O澤さん降板!」…なんだとぉ?
 なんのための中国公演でしょうねぇ。代役を“信頼できる若手”が振るからといって、それを目当てに高いチケットを買った聴衆はどうすんでしょう? なぁんか人を莫迦にしてないだろうか。
 やりたい気持ちはわかる、尊いかもしれない。だがね。なんか別の方法を考えるべきだと--リーダーなら。

 ということで、さて本日からの中国公演は、どうなっていることやら。まぁ皆さんプロですからねぇ、それなりの演奏はするのでしょうけれども。事故なく戻られてくださいませ、はい。