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2011_10
11
(Tue)19:57

"夜明け前"・1-03

夜明け前 -before dawn-

【プロローグ:西暦 2195年】
00 prologue・・・新入生

【第一章】(2007-06)
01 入寮
02 食堂01
03 食堂02
04 入学式

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【三.食堂 02】

 ちっこいなー、俺こんなのに負けたかと思うとショックだぜ。

 加藤と名乗った男がそう言うと、鶴見が
 「もともとデキが違うんだろ、ひがむなよな」と、笑いながらつつき返し
 なにおー、など言い返す処はガキっぽい。
 ――こいつらも同い年かな?

 放っとけ。俺たちまだ伸び盛りなんだからな。

 進は内心口をとがらせると、夕飯を食べる方に戻った。
それが拗ねてるように見えたのか。
「お、こっちのお嬢ちゃんはお気に召さなかったらしいぜ」
もう1人がそう言って、その“お嬢ちゃん”にぴき、ときた進は目を上げた。
――くっそ。人が気にしてることをっ。

 進は小柄である。
 いや、14歳で160cmというのはけっして小さい方ではないと思うのだが、兄の
優れた体格に並ぶとまるで小柄で、しかも色白で綺麗な顔立ちは人目を引いた。
骨格も比較的華奢である。
 ただでさえ親戚や近所の人たちの間でも“末っ子で優しい進くん”だった。
女の子とよく遊んでいたし、1人で静かにしていることも多かったので、余計に
その印象が目立ったのだろうか。

「綺麗だよなー、色なんか白くってさ。仲良くしようぜ、次席のお嬢ちゃん」
――それが引き金になった。

 誰が言ったのだったか、カオも上げないまま拳を繰り出した進は、自分の手が
相手の顎にヒットする前に、相手が派手な音を立てて椅子を跳ね飛ばし、倒れた
のを見た。
呆然として自分の拳と、横を見ると。

 ふん。
 表情はあまり変わらないまでも、キツい目をして立っていたのは大介だった。
一瞬先に、相手を殴り倒していたのである。

 ひゃ。
 なかなかやるねー。
 だけど、さ。最初のゴアイサツとしちゃ、随分なんじゃないの!?

 食べるものは大切に――。
ほぼ食べ終わったトレイを隣の机に避けて、2対2の喧嘩が始まった。
――2対4のはず? いや、鶴見と九重は傍観を決め込んだらしく、声援する
ばかりで手は出さない。
加藤三郎、吉岡英vs古代進、島大介。
 乱闘になるのに時間はかからなかった。


- ☆ -

 「元気のいいのはこの学校の伝統だがな…」

 舎監室に呼び出され、6人は並べられて直立不動の姿勢のまま、前を行き来
する教官のお小言を聞かなければならなかった。

 そのうち4人のカオには痣、頬は腫れ、引っかき傷もあちこちにあった。
「君らでこの、少年宇宙戦士訓練学校は正式発足して第4期になる――だがな」
教官は背に持った棒のようなもので自分の肩を叩きながら苦りきった声で言った。
「防衛軍訓練学校としての心得は――? お前。そのちっこいの」
棒の先で差された大介が宙を見たまま、一言一言区切るように言った。

「規律遵守、品方公正、沈着冷静、使命完遂――」

反対側で、くす、という声が漏れて
「お前っ! ふざけてんのかっ!!」
ぴし、とその棒が加藤三郎の足許に飛んだ。
ひゃ、と首をすくめるも、怖がっている風はない。神妙な顔を作る。

 「入学式もまだだというのに――入寮日初日から乱闘したなんてのは、始まって以来だっ!」
そこのっ!
今度は吉岡がひょい、と首をすくめた。
「よりにもよって優等生ばっかりか。島っ」
「はいっ」
「――お前、少しは首席入学の自覚持ったらどうだ。明日、その顔で新入生総代
読むんだな。恥ずかしいと思えよ」
 返事はなく、進がチラリと横目で見ると、殊勝な顔をして、微かに頭を下げた大介がいた。
 あーこいつ。全然、反省してねーや。

 「慣れぬ集団生活に放り込まれてはしゃぐ気持ちもわかるが」
教官は立ち止まり、真面目な顔を6人に向けた。
「――状況は逼迫している。……先輩たちは次々と戦場に出、我々を守るために日々、
戦っておるんだ。お前らには、一刻も早く、戦力になっていただかんと困る」
わかっとんのかっ!
 手に持った棒で、端から肩をつつかれた。
 動くなっ!

――はぁこれが、聞きしに勝る軍隊ってとこなんだな。

 進はなんだか“場違いな処に来ちゃったかもしんない――”
そう思いながら、立っていた。
 だが。

 面白いヤツらもいるんだな。
 内心、ちょっと嬉しい気もする進であった。

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