fc2ブログ
2010_04
01
(Thu)00:15

[First contact:04]

【第一報・・・星の彼方より】(04)

・・・お話(続き)をお読みになる方は、下記からどうぞ。オリジナル度が高いですので、ご興味のない方、嫌いな方は開かないでください・・・

 そういえば4月1日午前中は「エイプリルフール」ですね。って先に言ってしまっては面白くないか(笑)

 一つ質問です。『復活篇』段階で、地球連邦の総人口が何億人だったかどなたか教えてください(本文中○億のままです)。またはどっかに書いてある? 逃げ出した人口はあったけど。。。
【第一報・・・星の彼方より】(04)

【前のお話】 (01) (02) (03)

= 3 =
 飯でもどうですか、ということになり、加藤の方にもそのくらいしか時間がなかった。
打ち合わせは紛糾しており、それをまとめあげないまでも、議論はさらに尽くした上で、急いで
本国に引き返さなければならなかったからだ。
マーメイドからも催促の通信が入り、だがこの将星トランザムにおいて調整もしなければ動けな
かった。
 政治経済の要といわれるネルバ将官とそのパートナーであるカガミ政務次官。彼らを中心に
三つの星から集まった加藤たちは、さらにその懐にいくつもの人口圏を抱えている。

 「地球の人たちが、地球や太陽系だけを中心に置いていることは確かです――」
島は言った。もちろん忘れているわけではないのだ。辺境星域に入植し、開発されたコロニーに
住む者たちのことも。だが実際に、政治の舞台でそれが囁かれたのは、「移住先としてどうか」と
いう意図が働いたからに過ぎないこともまた互いに周知である。
ましてや独立したばかりの国家である。
 島次郎がこうして動いているのは、移民船団を組織し、第二の地球へ人類を移殖することへの
賛同とネゴシエーションのためだが、政府の意図は彼が二番目に言った理由――少しでも有利な
条件で地球人類が移住できる場所を求める。それである。
――手を出さないなら、少なくとも、支援を。財政か、一時避難所か。

 島は此処へくる前に、短時日で地球上のあちこちにもそれこそ身を粉にして飛び回っていた。
「なんとか地球移民事務局を立ち上げることはできました。ただまだ総てがこれから、なのです。
あと3年――長く見積もっても、です。間に合うのか、わかりません。本来なら資材や技術者も
含めて、このまま連れて帰りたいくらいだ……」
そう言う島の、ある種、やはり地球から物を見る意見も、理解できないではなかった。
彼の必死の想いも。

 兄さんたちが守った地球――貴方だってそうですよ。ヤマトで飛び、幾度もの危機を、惑星
ごとの危機を乗り切り、あんな想いをして守ってきた惑星ほしなのに。
「悔しい、です…」
うつむいて、そう言う島は、兄によく似て――だがその熱さは、兄と違う表現方法を持っている
ようだった。

 「大輔」
黙って2人の話を聞きながら、黙々と食事を続けていた息子は、はい、と驚いてその手を止め、
父親を見た。
「――島くんについて、地球へ行け」
「加藤さん」「父さん…」
「――見たこと、聞いたこと。考えたこと。それを私に伝えてくれればいい。そうして庇護は
与える。だが……公務を解く」
「父さんっ!」
加藤四郎は自分でも勘のようなものに頼ってその判断を下していた。思えば最初この子を連れて
こようと思った時からそうだった。息子が何の役に立つというわけでもない。
 じっと見つめる四郎に大輔は驚いたまま。次に次郎の顔を見た。
「……わかりました、加藤さん。私がお引き受けしましょう。後見人として一緒に地球へお連れ
します」
「島くん――頼めるか」「はい……その代わり、少しお手伝いいただくかもしれませんがね」
笑いの混じった口調がその場の緊張を解いた。

 その夜は遅くまで将星の中枢たちと加藤ら各星の者たちとの話し合いは続いた。大輔はそれ
に付き添い、ある時刻になると先に休むように言われた。――簡単に結論が出ることではない。
だが、どう考え、動くかを決め、そうして動き始めなければならなかったのだ。
 そうして、ココス星系は、独自の結論を持つことになる。

 「父さん……僕。何をしたらいいんでしょう? 地球へ行って」
通路を地球高速艇の方へ向かって歩きながら大輔は四郎に問うた。声の中には不安そうな響きが
ある――だが、期待も確かに、あるのだ。――地球の危機を聞いた時、行きたい! その場へ、
あの蒼い惑星ほしへ。そう直感的に思ったのは確かだった。
生まれて、幼い頃育って――ただそれだけの星。だけど父さんや母さんや――島さんのお兄さん
たちが護ってきた、母なる星。
 「……心配するな。お前の思った通りにすればいいんだ」「父さん…でも、僕」
一つだけ頼みがある、と加藤四郎は言った。島くんについて、真田さんの処へ手紙を届けてほし
い、と父は言う。地球でどう動きたいか、動けばよいかは真田さんに相談してみるといい。
ひどく多忙な方だが、島と一緒に行き、自分の手紙を預かっているときけば、逢うことも話す
こともできるだろう、と。
「古代さん……古代の小父さんには?」
いいや、と四郎は首を振る。
行って、会っておいで。雪さんにも――美雪ちゃんにもな。
 古代夫妻の一人娘・美雪は幼馴染である。とはいえ、ほとんど互いの記憶はない。小学校が
違ったこともあり、加藤家が長く州都に暮らさなかったためもある。
だが一つ年上の幼馴染――利発で、かわいくて、きれいな声をしていた少女を、大輔は思い出
していた。
 約束してくれ、と父の声が追いかけた。
「どんなことがあっても――生き延びろ。見て、聞いて、伝えるのがお前の役割だ」

 本当は加藤四郎自身が飛ぼうかとも思ったのだった。だが現在、自身が動くことは立場上、
できない。見捨てる、切り離すという意見もあれば逆に――星系8,000万人が里心がついて、
地球へ押し寄せたら? そんな火種になることもできない。すでに独立した星系国家なのだ。
住民は固有の星籍を持ち、表面上、地球圏/太陽圏には戻らないと決めた存在だった。
ココス星系にそれが入植して20年あまり――政治的に独立したのはここ数年。少なくとも、
人望篤い基地司令であり政府参事官でもある加藤四郎が動けば、浮き足立つ者も多いだろう。
 頼む、大輔――俺の代わりに。目となり、足となって――地球を、助けてくれ。
 それが加藤四郎の、正直な気持ちでもあった。



(…(05)へ続く)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

トラックバック