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【第一報・・・星の彼方より】(11)
・・・ようやく終わりが見えてきました。このお話、「第一部」となっていますが
これで完結です。もちろん「第二部」もございますが、ほぼ別の話なのです・・・
さて、大輔くん。どうするんでしょうか?
(例によってオリジナル度が高くなっています。最初の解説をお読みの上、
注意して開いてくださいね↓)
・・・ようやく終わりが見えてきました。このお話、「第一部」となっていますが
これで完結です。もちろん「第二部」もございますが、ほぼ別の話なのです・・・
さて、大輔くん。どうするんでしょうか?
(例によってオリジナル度が高くなっています。最初の解説をお読みの上、
注意して開いてくださいね↓)
【第一報・・・星の彼方より】(11)
【前のお話】 (01) (02) (03) (04) (05) (06) (07) (08) (09) (10)
= 10 =
「長官っ!」「真田さぁん!!」
わらわらと振り返り、手の空いている者が寄ってくる。
あちこちで機械の音、金属の音、様々な音が入り乱れ喧騒ともいえる騒ぎだ。
ふと違和感を覚える大輔――そんな時、あぁ空気があるというのはこういうこと
か、と実感するのだ。
故郷でもドームの中には空気があったし、作業場に入れば
やはりウワンウワンというような音が辺りを包む。宇宙空間やドームの外へ出て
の船外・館外作業とは違うのだ。
そんな風に思ってしまう大輔もまた、宇宙育ちなのであろう。
アクエリアス・ルナは記憶の中に浮かぶ氷惑星とは違っていた。
実際に彼はその地表(!?)へ降り立ったことがあるわけではない。氷惑星から
伸びたパイプに接続された小さな基地コロニー/緩衝地帯に設置された居住区に
住んでいたと聞かされていただけだ。目の前をいつもふさぐ不思議な色をした
美しい星。それがアクエリアス・ルナだった。――時折、父がそこへ出かけて
いくのが羨ましく、連れて行ってとねだったことがあったかもしれない。
現在のA-ルナは惑星表面の基地区は撤去され、連絡艇がその内部へ吸い込まれ
て行った時、大輔は思わず声を上げる処だった。
真田も徳川も無言で前を見つめたまま立っている。その表情には何も浮かんでいない。
☆
なんだかそこいらへんのストリートに座っていそうな兄ちゃんがすっ飛んできて
いろいろまくし立てていた。きょとんとそれを見つめる大輔に紹介されると、
ふぅん、と言ったまま皮肉っぽい笑みを浮かべるとじろじろと見回す。
「へぇ? この子が、あの、加藤四郎さんの息子? ふうん」
コバヤシと言ったその人は、おう、よろしくな。と大きな手で大輔の片手を掴むと、
ばんばん、と乱暴に背中を叩き、
「おっし。連れていっちゃる。だけど、邪魔すんなよ?」
と言って、ぐいぐいと奥へ引っ張っていった。慌ててそれに続く大輔である。
「いいんですか」徳川が苦笑しながら真田に向いた。
真田はやはり笑いながら、案外、小林はガキ大将みたいなところがあるからな。
上の者には生意気だろうがガキの面倒見はよかろう。そう言った。
――関わらせるつもりですか。とふと真面目な声になって徳川は言い、
「それは本人次第だ」と真田も答えた。
それよりも、済ませてしまおうじゃないか、と言い、真田の指示で積荷が開始される。
ようやく筐体の掘り出しが終わった処だった。成分の分離と、形として残って
いた内部の検索。これには若い人間を立ち会わせるわけにはいかない。
もしかして――遺体が残っているのではないか。最初に入った真田・徳川・島の間
にはその想いもあったからだ。
ほとんどの成分は粉砕されており、残っていたのは艦体の半分と装置の一部だった。
艦橋部分は水と他のものが渾然一体となっており、瞬間冷却したものか、まるで
氷の彫像に閉じ込められたようだった。そのまま再利用することは不可能だった。
現在、構築されようとしているヤマトは、似て非なるものだ。筐体だけが無事だった
のが不思議ともいえた。沖田や島大介の遺体は――発見されていない。
それもまた謎ともいえた。
現在、アクエリアス・ルナの内部は、まるきりの造船所に趣を変え、その姿は外に
対して厳しくカモフラージュされ、出入りは厳しく監視されセキュリティがかけられた。
地球の眼前に常に浮いている存在――17年間。常に地球人類に重圧を与え続け、伝説
がそのまま風化するのを防いできた宙空の星だ。
それだけに“見えている忘れられた存在”――それをまた真田は、新たに生み
なおそうとしていた。
「真田さん――これが必要になるでしょうか」…徳川がつぶやくように言った。
「あぁ、必ず」科学的論拠はない。だが真田は頷いた。――自身はもはや別れを告げた船。
だが、最初に戻ろう。俺はもともと乗艦し乗組員である予定ではなかったのだ。
これを造り、新しい地球の何かを生み出すために、“計画”に参加したのではなかったか。
最初そのプロジェクトに抜擢された20代の頃を思い出した。最も若いメンバーとして
参加を要請され――そうして実行者の一人として艦に送り込まれた。
総てを知り、総てを見届ける役割として。だが力を合わせ、共に戦い……いつかその
艦(ふね)の乗組員そのものとなっていった自分。
大切なものを得、また失い――そうして此処まで来た。
最初に戻ろう。これは未来を託す艦だ。
「必要になるよ、きっと」
真田は徳川に言うともなくそう言った。声には力強さがある。
「――信じているんですね、あのひとを」
「あぁ」彼は頷いた。「彼と――そうして、この艦をだ」
★
西暦2218年。氷惑星アクエリアス・ルナでは極秘プロジェクトが進行していた。
かたや地球は。島次郎本部長を中心に、来たりくる地球滅亡への秒読みのために、地球
脱出のための移民船団が組まれようとし、その動きは急速に活発化していった。
あと3年を待たずに、この地球は失われてしまうのか――?
誰もが信じたくないと思い、悪夢を実感しながらやれるべきことは何かを模索し
始めていた。だがどれだけ急いでも急ぎすぎるということはないのだ。
地球の全人類を救うために。彼らは今、自分たちにできる最大のことをしようと
している。地球で。月で。そうしてこのアクエリアス・ルナでも。
そうしてまた――地球人類の兄弟たち――遠く、惑星マーメイドを含む星系ココス
でも、ただ地球の危機の前に手をこまねいていたわけではない。皆、多くの大切なもの
を地球に残してきていた。母なる故故郷。父なる太陽。それあればこそ、
子らは新天地を求め、宇宙に拡がっていくことができるのだから――。
西暦2218年。太陽圏は激動の時節を迎えている。
☆
(…(12)へ続く)
【前のお話】 (01) (02) (03) (04) (05) (06) (07) (08) (09) (10)
= 10 =
「長官っ!」「真田さぁん!!」
わらわらと振り返り、手の空いている者が寄ってくる。
あちこちで機械の音、金属の音、様々な音が入り乱れ喧騒ともいえる騒ぎだ。
ふと違和感を覚える大輔――そんな時、あぁ空気があるというのはこういうこと
か、と実感するのだ。
故郷でもドームの中には空気があったし、作業場に入れば
やはりウワンウワンというような音が辺りを包む。宇宙空間やドームの外へ出て
の船外・館外作業とは違うのだ。
そんな風に思ってしまう大輔もまた、宇宙育ちなのであろう。
アクエリアス・ルナは記憶の中に浮かぶ氷惑星とは違っていた。
実際に彼はその地表(!?)へ降り立ったことがあるわけではない。氷惑星から
伸びたパイプに接続された小さな基地コロニー/緩衝地帯に設置された居住区に
住んでいたと聞かされていただけだ。目の前をいつもふさぐ不思議な色をした
美しい星。それがアクエリアス・ルナだった。――時折、父がそこへ出かけて
いくのが羨ましく、連れて行ってとねだったことがあったかもしれない。
現在のA-ルナは惑星表面の基地区は撤去され、連絡艇がその内部へ吸い込まれ
て行った時、大輔は思わず声を上げる処だった。
真田も徳川も無言で前を見つめたまま立っている。その表情には何も浮かんでいない。
なんだかそこいらへんのストリートに座っていそうな兄ちゃんがすっ飛んできて
いろいろまくし立てていた。きょとんとそれを見つめる大輔に紹介されると、
ふぅん、と言ったまま皮肉っぽい笑みを浮かべるとじろじろと見回す。
「へぇ? この子が、あの、加藤四郎さんの息子? ふうん」
コバヤシと言ったその人は、おう、よろしくな。と大きな手で大輔の片手を掴むと、
ばんばん、と乱暴に背中を叩き、
「おっし。連れていっちゃる。だけど、邪魔すんなよ?」
と言って、ぐいぐいと奥へ引っ張っていった。慌ててそれに続く大輔である。
「いいんですか」徳川が苦笑しながら真田に向いた。
真田はやはり笑いながら、案外、小林はガキ大将みたいなところがあるからな。
上の者には生意気だろうがガキの面倒見はよかろう。そう言った。
――関わらせるつもりですか。とふと真面目な声になって徳川は言い、
「それは本人次第だ」と真田も答えた。
それよりも、済ませてしまおうじゃないか、と言い、真田の指示で積荷が開始される。
ようやく筐体の掘り出しが終わった処だった。成分の分離と、形として残って
いた内部の検索。これには若い人間を立ち会わせるわけにはいかない。
もしかして――遺体が残っているのではないか。最初に入った真田・徳川・島の間
にはその想いもあったからだ。
ほとんどの成分は粉砕されており、残っていたのは艦体の半分と装置の一部だった。
艦橋部分は水と他のものが渾然一体となっており、瞬間冷却したものか、まるで
氷の彫像に閉じ込められたようだった。そのまま再利用することは不可能だった。
現在、構築されようとしているヤマトは、似て非なるものだ。筐体だけが無事だった
のが不思議ともいえた。沖田や島大介の遺体は――発見されていない。
それもまた謎ともいえた。
現在、アクエリアス・ルナの内部は、まるきりの造船所に趣を変え、その姿は外に
対して厳しくカモフラージュされ、出入りは厳しく監視されセキュリティがかけられた。
地球の眼前に常に浮いている存在――17年間。常に地球人類に重圧を与え続け、伝説
がそのまま風化するのを防いできた宙空の星だ。
それだけに“見えている忘れられた存在”――それをまた真田は、新たに生み
なおそうとしていた。
「真田さん――これが必要になるでしょうか」…徳川がつぶやくように言った。
「あぁ、必ず」科学的論拠はない。だが真田は頷いた。――自身はもはや別れを告げた船。
だが、最初に戻ろう。俺はもともと乗艦し乗組員である予定ではなかったのだ。
これを造り、新しい地球の何かを生み出すために、“計画”に参加したのではなかったか。
最初そのプロジェクトに抜擢された20代の頃を思い出した。最も若いメンバーとして
参加を要請され――そうして実行者の一人として艦に送り込まれた。
総てを知り、総てを見届ける役割として。だが力を合わせ、共に戦い……いつかその
艦(ふね)の乗組員そのものとなっていった自分。
大切なものを得、また失い――そうして此処まで来た。
最初に戻ろう。これは未来を託す艦だ。
「必要になるよ、きっと」
真田は徳川に言うともなくそう言った。声には力強さがある。
「――信じているんですね、あのひとを」
「あぁ」彼は頷いた。「彼と――そうして、この艦をだ」
西暦2218年。氷惑星アクエリアス・ルナでは極秘プロジェクトが進行していた。
かたや地球は。島次郎本部長を中心に、来たりくる地球滅亡への秒読みのために、地球
脱出のための移民船団が組まれようとし、その動きは急速に活発化していった。
あと3年を待たずに、この地球は失われてしまうのか――?
誰もが信じたくないと思い、悪夢を実感しながらやれるべきことは何かを模索し
始めていた。だがどれだけ急いでも急ぎすぎるということはないのだ。
地球の全人類を救うために。彼らは今、自分たちにできる最大のことをしようと
している。地球で。月で。そうしてこのアクエリアス・ルナでも。
そうしてまた――地球人類の兄弟たち――遠く、惑星マーメイドを含む星系ココス
でも、ただ地球の危機の前に手をこまねいていたわけではない。皆、多くの大切なもの
を地球に残してきていた。母なる故故郷。父なる太陽。それあればこそ、
子らは新天地を求め、宇宙に拡がっていくことができるのだから――。
西暦2218年。太陽圏は激動の時節を迎えている。
(…(12)へ続く)