12月の日本。
早いところでは11月の末にスタートするこの“第九”シーズンですが、ここ2年ほど、ちょいとご縁がなかったであります。いやその前の年は、全国縦断第九を聴く旅、なんかやりましたが、これは結局仕事にならずに、、、あぁ申し訳ない(涙)(<これは、大概の場合と異なり、全面的に“私がイケナイ”んです)。
あ、ところで皆さん。第九っておわかりっすよね? ベートーヴェンの最後の交響曲:第9番「合唱付き」のことです。日本では12月になると、この曲の鳴らない日がないってくらい。アマチュアの合唱団も「いつかは第九を」とかやるものですから、おそらく凄い人数がこの曲を演奏し、聴き…しているはずです。
しかしプロ中のプロが万を辞して演奏するこの曲はまた、格別なものがあります。
どこまで本音かはわかりませんよ。オーケストラで演奏している知人に「ねぇ、日本の楽団員て、一生のうちにもう死ぬほど第九弾くでしょ」「あぁそうだねぇ。何百回かな」「飽きない? それにルーティンになっちゃわないの」「……ないなぁ」「ほんと?」なんて会話を交わすことがあります。
もちろん彼らだって人間んですから、ツマンネー指揮者と上手くないソリスト、音程の悪い合唱団なんぞ来た日にはそりゃ「はい、お仕事お仕事」と思って演奏しないとは申しませんが。
ある年。ベートーヴェンの第1番から9曲を、大晦日に演奏しようという企画がございました。これもプロ中のプロの楽団員が、自分たちの仕事を終えてから、また東京文化会館に集い、楽屋の廊下の机の上に置かれた差し入れを食ったりなんかしながら、年越しまで演奏し続けようという無謀な企画です。
最後の第九にかかったころの心境やいかに?
訊ねてみたところ「もうじき終わりや、という感動が…」というので「やっと終わるか、長く辛い道のりやった、ということかいな」と問うと、本気で「違う」といいます。
「第九は名曲です。何回弾いても到達するということがない。毎回毎回新鮮な発見がある。演奏し続けてきて、それでなにか到達する喜びっていうか。皆の気持ちも一つになる。感動ですよー、感動っ!!」と言われました。
音楽家って……絶対マゾです。
でもねー。そうなんですよ。アマチュアでしかない私だって、合唱で歌った数は10回を下らず、オーケストラでもすでに3回。うちのカレシのようにご幼少のみぎりからアマチュア楽団に居たなんて人間は、この年になれば10回や20回は弾いています。それでも毎回毎回。解釈が違い、難しいと悲鳴を上げ、良い曲だと練習しながら感動し……われわれ、おかしいですか?
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さて今年。本日、たぶん今年唯一の“第九”を聴いて参りました(仕事で・笑)。
土曜日のサントリーホール、日本フィルハーモニー交響楽団withピエタリ・インキネン(フィンランド人、活躍中の若手指揮者)。いやぁ素晴らしかったですねー。感動です~。
美しいぢゃないか。おおこの第二楽章の示唆に富んだことよ。さらに第三楽章の優美で内省的な美しさときたら(木管、もうちっとがんばれ~~!)。第四楽章のソリスト陣、抜群です。ぶらびー。
良い土曜日の午後でした。
そういえば、合唱は東京音楽大学合唱団。合唱が暗譜なのはわりと当たり前になってしまっているのですが、本日のソリスト陣も全員暗譜でした。日本人の第九の普及率ってどんなんなんでしょう? 完全にモノにして高らかに歌い上げるバリトンの声を聞いていて、なんだかジワりとしてしまった。確かに古典で、日本の歌でもなんでもない曲です。でも、こういうのを通して、皆、つながっているような気がしましてね。「歓喜の歌」と別名呼ばれるこの曲ですが、来年は明るい年になるといいな、皆が幸せだといいなと思います。
ちなみに、ワタクシもはばかりながら、全曲、暗譜で歌えます。ソロ部分もOKです。オケ仲間と宴会でやれといわれれば、全員、口三味線と合唱で第四楽章は通ると思います(笑)。学生時代に、渋谷のハチ公前(当時は噴水があった)でやりましたなー、NHKでの練習の帰りに。もう何十年前のことでしょう?
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明日はベルリン・フィルの第一コンサートマスターについに正式決定したヴァイオリニスト氏のリサイタルを、気の合った友人とともに聴きに行く。ランチしてコンサート(^.^)。なんかちょっと、幸せ♪