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2011_05
19
(Thu)23:29

tit:龍の棲む14 [回天-開戦前夜]

 龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

= 9 =

 「揺れたな?」
「揺れましたねぇ」
「援軍かな?」「ならいいですけどねぇ」
 「お前ら何を暢気なこと言ってる。早く抜けるぞ」
技術員2人はそういいながらも手は休み無く動かしているのだ。
気をつけろよ、と日向が大きな体で隠すようにして3人が車座になっている。
土の下を掘り起こそうというのだから無謀だが、少しずつやればなんとかなりそうなのだった。
そこへ地鳴りのような揺れ。
「無駄な努力しないで待ってた方がいっすかね……」近藤が言い、柴田は
「発信してみますっす」と言ってシークレット通信を全開。
 「おや、来た」ひょと顔を上げると揺れと煙の中から見慣れたバイザー姿が現れた。
「下がれっ」
先頭のヤツに怒鳴られ3人は入り口から飛びのくと、檻は蒸発して溶ける。
「急げ」
「艦長は?」
「先に助けた。走るぞ」
「アイ・アイサー」元気な若者たちである。
 古代が救われたのなら何も考える必要はないのである。あとはともかく艦に戻る、それだけだ。
              ★
 外部からの攻撃の所為か、思うより抵抗なく分岐へ戻ってきたが、地上(?)まであと100mというところで三方から囲まれた様子である。
「あっちゃ~」これは日向。
「簡単すぎると思いました」生真面目に言うのは柴田である。
「お約束ってやつっすか?」と、近藤。
 救援隊の面々は果敢に敵とまみえ、突破しようと試みた。
「艇は?」「出た処の岩場に」「先導する。CT使えば援護できるからな」
古河の配下の1人がそう言って先行しようとし、彼らはそれを背に、退路を開こうとした。
武器その他は取り上げられてしまっていたので、日向は近くにいた者に近づき殴り倒すとその武器を取り上げ、それを利用して相手を武装解除していく。

 「こいつら、1人ずつは強くないぜ?」
「油断するな――逆にいえば集団行動には強いってことだ」
確かに、恐怖心というのがないのだろうかというように、殺されようが撃たれようが進んでくる様は、不気味なほどだ。
 「早く、行け」
「中央突破だ。続け」
日向と救援隊の1人が先頭に立ち、あとは撃ちながら続いた。

              ☆
 岩場から開けた場所へ出、そこにCT2機と小型艇を見つけた面々は、なおも続く攻撃の合間を縫って機体に近づこうとした。
機体を守る数人がコスモガンで応戦する中、火力が違いすぎるのか、敵方は近づくことができないでいる。

 その時、通信機に音声が入った。
『――古代だ』
「艦長っ!」「ご無事でしたね」
 「艦長、どちらですか、お早く」
『私は大丈夫だ。早く艦へ戻り、発進準備をしろ』
「艦長は!?」
柴田と古代のやり取りに日向ははっと振り返った。
『いいから早く行け。命令だ――私にはまだ、やることがある』
「艦長っ!」そこへ古河の隊の者たちが駆け込んできた。
「古河さんっ」だが、本人の姿は見えない。
「早く、発進しろ。CT1機だけ隠して残せといわれている」
「なに?」
 まさに扉を閉め発進しようとしていた瞬間、日向が隙間を付いて機外へ飛び出した。
「おいっ、何をする」「日向、莫迦なことはやめろ」
――咄嗟に行動に移った戦闘班長に彼らが呆然としたのは、一瞬だけだった。

= 10 = へ続く)

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