tit:龍の棲む18 [回天-開戦前夜]
龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= まえがき =
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
= 13 =
岩場の影から顔を出し、下に空いた宇宙空間とそれを利用した優れた軍港を一行は眺めていた。
「こりゃすげーや」「まるで帝国軍基地ですねぇ」
「戦艦も駆逐艦も寄せ集めだけどな」
これだけ集めただけでもたいしたものである。
地球防衛軍の廃棄され、または行方不明になった艦やそれの類似品と同時に、船籍不明のものも多々ある。その数は半々といったところだろうか。
(異星人か――?)
それだけが意識の中に上った。
浮遊する艦。この空間に対して彼らはあまりに小さく、だからこそまだ見つからないでいるといえた。
「案外、警戒されてないんすね」
柴田がのほほんとした声を出したが、それには日向は否定的だ。
「泳がされてるだけかもしれん」その答えは古代の胸の裡にも一致する。
口には出さないが気力と本能で動かしている体である。
余分な口を利き部下たちを慮る余裕はリーダーにはすでに無い。
そんなことはわかっている古河以下であったが、古代の感覚がこういうとき研ぎ澄まされていくことは長い付き合いの彼には周知のことだった。
黙って彼の動く方へ続く。
意図を察して動いてくれる副官がそばにいる、ということはずいぶんラクだなと古代は思う(。むろん古代には常にそういった部下や仲間が周りに居たのだ。加藤や山本、豊橋たちヤマトの仲間はもちろん、それ以降も)。
岩の間を縫い、徐々に宙港の中に降りていきつつつも、慎重に歩を進めるタイミングやその他は古河が細かく示唆した。
どちらかというと反射と本能で動く古代である。
自分のそれが衰えていないことを古代は意識しないまでもどこかで冷静に把握している。
くい、と親指で方向を示されて日向、柴田、近藤は古河の後に続いた。
後続は背後を見ながら別の岩に取り付き、降りていくのが目の前に見える。
どれが本艦だかはわからなかった。
最も大きな艦がそうなのだとしたら、いままさに発進しようとしているところである。
「タラップ上がった瞬間を狙うしかねーな」
古河が言い、積荷らしきものが上げられていくそれを見上げた。
軍兵らしきものが列を作り上っていく様は、本当に蟻の行列のようで、だがその列はすぐに途切れる。
動きはまるで仕掛けられたコマのようで、その艦に吸い込まれた者、それが終わるとすすっと扇形に広がり、他の艦の乗り口へ移動していく。
指示を出しているのは地球人らしい姿で、明らかに装備や体型が異なるのでそれとわかる。
「うじゃうじゃいますね…」
柴田がつぶやいて、
「火とかで蹴散らしたらいんじゃね?」
近藤が乱暴なことを言い、
「いや、ともかくタイミングを見て突破だ。遅れるなよ」
幸い、崖は艦のすぐそばまで迫っており、此処を飛び降りて取り付くしかなかろうということになった。
★
「行けっ!」
タラップが荷積みが終わる頃を見計らって8人はバラバラと崖を飛び降り、駆け出した。
気づいた敵どもは隊列を崩し、慌てふためく様子が見事である。
しかしすぐに体制を立て直して一斉に正射をしてきた。
「古代、行けっ! ここは俺たちに任せて」
古河の言葉にイサス隊の面々が頷き、援護に回り、日向たちはそれを受けて全力で艦へ向かった。
まずは古代が転げ込み、柴田、近藤と続いて最後に日向が出入り口を警備していた兵を撃ち落して中へ飛び込んだ処でハッチが閉まる。荒い息をつきながらその格納庫らしき場所の闇に身を潜めた。
★
古河は、古代たちが無事に乗艦したのを見届けると「行くぞ」と別の方へ駆け出した。
目をつけておいた小型高速艇を目指す。
激しい掃討戦と肉弾戦ののち確保し、4人はそこへ乗り込み、大型艦を追って発進した。
激しい攻撃が周りから浴びせられたが、戦闘機乗りの本領を発揮する古河はそれにつかまるようなものではない。ふわりと浮くように大型艦の艦艇を舐めると、そのまま先行して宇宙空間へ飛び出した。
「ひょぉ~っ! いい眺めですねぇ、隊長」
部下たちはいつの間にか余裕すらもって前を眺め、そう言った。
索敵すれば岩塊の浮かぶこの空間を縫うようにゲリラたちの艦がある。
その向こうには、地球防衛軍艦隊と彼ら自らの艦(ふね)が待っているはずだった。
「行くぞ。艦長たちを支援する」
「アイ・サー!」
古河は通信回線を開くように指示し、回線を受け取った。
「――イサス…こちら、古河。いま、そちらへ向かっている。ただちにコスモタイガー、発進準備。発進準備のまま、待機せよ」
小型艇は一筋の光のように、イサスへ向け飛んでいった。
(= 14 = へ続く)
= まえがき =
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
= 13 =
岩場の影から顔を出し、下に空いた宇宙空間とそれを利用した優れた軍港を一行は眺めていた。
「こりゃすげーや」「まるで帝国軍基地ですねぇ」
「戦艦も駆逐艦も寄せ集めだけどな」
これだけ集めただけでもたいしたものである。
地球防衛軍の廃棄され、または行方不明になった艦やそれの類似品と同時に、船籍不明のものも多々ある。その数は半々といったところだろうか。
(異星人か――?)
それだけが意識の中に上った。
浮遊する艦。この空間に対して彼らはあまりに小さく、だからこそまだ見つからないでいるといえた。
「案外、警戒されてないんすね」
柴田がのほほんとした声を出したが、それには日向は否定的だ。
「泳がされてるだけかもしれん」その答えは古代の胸の裡にも一致する。
口には出さないが気力と本能で動かしている体である。
余分な口を利き部下たちを慮る余裕はリーダーにはすでに無い。
そんなことはわかっている古河以下であったが、古代の感覚がこういうとき研ぎ澄まされていくことは長い付き合いの彼には周知のことだった。
黙って彼の動く方へ続く。
意図を察して動いてくれる副官がそばにいる、ということはずいぶんラクだなと古代は思う(。むろん古代には常にそういった部下や仲間が周りに居たのだ。加藤や山本、豊橋たちヤマトの仲間はもちろん、それ以降も)。
岩の間を縫い、徐々に宙港の中に降りていきつつつも、慎重に歩を進めるタイミングやその他は古河が細かく示唆した。
どちらかというと反射と本能で動く古代である。
自分のそれが衰えていないことを古代は意識しないまでもどこかで冷静に把握している。
くい、と親指で方向を示されて日向、柴田、近藤は古河の後に続いた。
後続は背後を見ながら別の岩に取り付き、降りていくのが目の前に見える。
どれが本艦だかはわからなかった。
最も大きな艦がそうなのだとしたら、いままさに発進しようとしているところである。
「タラップ上がった瞬間を狙うしかねーな」
古河が言い、積荷らしきものが上げられていくそれを見上げた。
軍兵らしきものが列を作り上っていく様は、本当に蟻の行列のようで、だがその列はすぐに途切れる。
動きはまるで仕掛けられたコマのようで、その艦に吸い込まれた者、それが終わるとすすっと扇形に広がり、他の艦の乗り口へ移動していく。
指示を出しているのは地球人らしい姿で、明らかに装備や体型が異なるのでそれとわかる。
「うじゃうじゃいますね…」
柴田がつぶやいて、
「火とかで蹴散らしたらいんじゃね?」
近藤が乱暴なことを言い、
「いや、ともかくタイミングを見て突破だ。遅れるなよ」
幸い、崖は艦のすぐそばまで迫っており、此処を飛び降りて取り付くしかなかろうということになった。
★
「行けっ!」
タラップが荷積みが終わる頃を見計らって8人はバラバラと崖を飛び降り、駆け出した。
気づいた敵どもは隊列を崩し、慌てふためく様子が見事である。
しかしすぐに体制を立て直して一斉に正射をしてきた。
「古代、行けっ! ここは俺たちに任せて」
古河の言葉にイサス隊の面々が頷き、援護に回り、日向たちはそれを受けて全力で艦へ向かった。
まずは古代が転げ込み、柴田、近藤と続いて最後に日向が出入り口を警備していた兵を撃ち落して中へ飛び込んだ処でハッチが閉まる。荒い息をつきながらその格納庫らしき場所の闇に身を潜めた。
★
古河は、古代たちが無事に乗艦したのを見届けると「行くぞ」と別の方へ駆け出した。
目をつけておいた小型高速艇を目指す。
激しい掃討戦と肉弾戦ののち確保し、4人はそこへ乗り込み、大型艦を追って発進した。
激しい攻撃が周りから浴びせられたが、戦闘機乗りの本領を発揮する古河はそれにつかまるようなものではない。ふわりと浮くように大型艦の艦艇を舐めると、そのまま先行して宇宙空間へ飛び出した。
「ひょぉ~っ! いい眺めですねぇ、隊長」
部下たちはいつの間にか余裕すらもって前を眺め、そう言った。
索敵すれば岩塊の浮かぶこの空間を縫うようにゲリラたちの艦がある。
その向こうには、地球防衛軍艦隊と彼ら自らの艦(ふね)が待っているはずだった。
「行くぞ。艦長たちを支援する」
「アイ・サー!」
古河は通信回線を開くように指示し、回線を受け取った。
「――イサス…こちら、古河。いま、そちらへ向かっている。ただちにコスモタイガー、発進準備。発進準備のまま、待機せよ」
小型艇は一筋の光のように、イサスへ向け飛んでいった。
(= 14 = へ続く)