奇跡のバッハ!
『Space Battleship ヤマト』以来、というか。あれが素晴らしかったからなのか、どうにもアニメを見て萌えない。現代のものが自分の嗜好と離れてきた所為もあるかもしれず、作り手の嗜好と離れていってるからかもしれず。それでも、先般、大好きな新海監督作品『星を追う子』を見て、それなりに感動したというのに、やっぱり個人的には『プリンセス・トヨトミ』の方が面白かったとか思っていたりする。
これは必然、やっぱアーティスト(この場合、役者さんや演出や脚本)とかが好きなんだろうなと思われる。
だからといって、「演劇が好き」という方々、いらっしゃる。私の友人にもいます。年間100本くらい舞台を見てる。学生時代は演劇部でした、当然。役者やろうと思わなかったの、ときくと、演じることは高校生の頃で卒業して大学でもやってみようという気はなかったんだそうな。だけど芝居がすきで、見て、応援して、そういう子たちがメジャーになっていくのが楽しいらしい。売れない自分にバイトしている飲食店なんかに行ったりもして、話をしたり、チケット買ってやったり、、、という、ある種、物凄くエラい演劇ファンである。
私なんか、もっと欲があってだめだなー。
結局、自分は「演奏したい」というのがどっかにあるので、そこまでひとつのジャンルに時間とお金がかけられないのだ。
だけど、「よいものは見たい」から、行く。もう重なってどんどん来ようが、どんどん行く。
そのためのびんぼ生活だっていいんだもん。
……とまぁ、そっちの方の友人もいるからまぁ楽しいである。
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ここんとこ、立て続けにバレエ、ミュージカル、ストレートプレイ(演劇)、と来て、どれもこれも大当たり。うわぁ幸せ、と思いつつ、本当ならそういう「凄い」ものって月1回くらいでいいんだよ。毎週見てると感激も受け取れるものも薄くなっちゃったり上書きされるのがとてもイヤなんで。…だけど仕方ない。どんどん来るし、それもどれもこれも一期一会。さらには、仕事でも行っちゃったりなんかするからね。
バレエ=ABT(アメリカン・バレエ・シアター)である。『ドンキ』と『ロミオとジュリエット』。もちろん、後者を見た(前者もバレエ的には素晴らしい作品だが、ともかくプロコフィエフの音楽に乗って踊られる後者は、最高傑作だと思っているので、何度でも、いろんな公演を見る、、まぁ世界中で、ですね)。
感想書くと本題にたどり着かないので、やめとく。ぶらっぼー、だった。
演劇=太陽に灼かれて。これはまぁ前のアーティクルで書いた。
コンサート=山ほどあり。ベルリン・フィルのコンサートマスターとして注目の日本人、樫本大進くん演奏するラロのスペイン協奏曲。N響さんとのツアー、これはまた面白かった(ちょいとご本人バテ気味のようでしたが)。上手くなったなぁ、と思い、聴くたびに成長していく音楽と人間に感動し、、、うるうる。嬉しいよぅ。
さて、表題の「バッハ」である。
最近、バッハの無伴奏パルティータとソナタ(全6曲で、ヴァイオリンとチェロにそれぞれある)を一気に演奏する人が結構増えてきた。特にここ2~3年は、まるで流行のように誰も彼もがやる。
けれどもちろん、どんなヴァイオリニストでもチェリストでも、これを「演奏しない」という人なんぞいないし、一生舞台で弾かないってのは、よほどの変態か弦楽器弾き失格である。…というような、曲だ。
前述の樫本くんも、一昨年の冬、帰国公演で挑戦し、素晴らしい成果を挙げた。
今回は、イザベラ・ファウストというドイツ人の中堅どころ。私が彼女を知ったのは、ジャン=ギアン・ケラスを通じてであったが、ともかくもう素晴らしいの一言、というような演奏をする。
本人はいたって気さくで、明るいおねーちゃん、という風情のドイツ女性で。ステージに立っても、演奏する直前まで笑顔を絶やさない。ごく自然にその場に立っている。
だけど、曲のアウフタクトが始まった途端、すぅっとその場の空気が変わる……まさに、変わるというか変えるというか。そんな力を持ったヴァイオリニストは、私は何人も知らないが、彼女はまさしくその一人であろう。
一日で6曲。これは体力も精神力も並大抵ではない。
私は仕事の都合で、第二部=後半だけ聴いたのだが、時間の経つのを忘れた、なんていうことは、コンサートではほとんどない(たいてい、途中で絶対眠くなるの。どんな良い演奏でも、です、はい)。だけど、これはまるで物語のように、3曲がつむがれて、しかも、完璧なのである。
貸与されているストラディヴァリウスを、なんとまぁバロック弓で演奏している。
当然、奏法も古楽のテイストを取り入れたものだし、より音程の取り方もボウイングも困難である。だが彼女はそれを逆手に取って、素晴らしい演奏効果を上げていたし、あれほど自然に行われるものを見せられて、まさに「目が点」というのを実感した。
実は、この日最後に演奏された、バッハのパルティータ第2番、の中の「シャコンヌ」だけを聴きに行ったのです、私。この曲は、単独で取り出して演奏されることも多い名曲で、でかい曲である。
ここのところずっと研究していただけに、どんなことが行われているのかよくわかり、それだけに驚き…そうしてただ曲を受け取っていればよいと思った。
アルペジオなんて、奇跡でしたよね~。会場の興奮と集中も凄かったし。。。あぁもう一度聴きたい、なんて思うことは、どんな演奏会でもめったにないのだけれども、そんな半日だったですよ。
会場で逢った何人かのスキモノの皆さまがた。
いいな、いいないいなぁ。8月はルツェルン音楽祭とザルツブルクっ! イタリアの音楽祭へ行ってるヤツもいれば、これからフランスよなんて人もいる。アメリカに稼ぎに行く(音楽祭とかで演奏するのだそうな)人もいれば。。。あぁみんな。いいわよいいわよ、日本から旅立っていってらっしゃい。
あ、日本国内を旅だってる人もいたなぁ、それもいいなぁ。
寂しくとーきょーでお仕事してます、私。バッハでも聴きながら。