tit:龍の棲む24 [回天-開戦前夜]
龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入
= 16 = 占拠
= 17 = 過去
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
☆
「司令っ! 古代さん、CTがっ!」
「大丈夫だ――古河ならこの艦を避けてくれる」
真正面からぶつかってくるかと思い、
「わぁっ!」と叫び声を上げた柴田と日向だが、ひゅん、とそれらは艦橋を舐めて艦の底へ潜った。
「ひぃぃ、心臓に悪いよ」
「さっすがだなぁ、あの人たち」
その間もロデムは古代を見ながらにやにや笑っているだけだった。
長年の反体制暮らしで人も変わってしまったのか。ロデムといえば高潔な艦長として知られた男だったが、今の彼にはその見る影もない。
――彼は覚えていないだろうが、古代は若い頃、遠くから見知ったことがあったのだ。
それを少し悲しく思った。
だが同情するほど余裕もなく、また共感もしなかった。
売国奴――地球を最も苦境に落としいれ多くの人の命を奪った(ガルマン=)ガミラスと提携し、現在のオリオン腕の平和を守って貰っている地球。その盟約の要にいる古代進。
だがな。
古代は胸の裡で短くつぶやいた。
――われわれ“も”、ガミラス本星を滅ぼしたのだ。
そうして、地球が生き残るために幾つの星を死に追いやっただろう。
☆
「司令っ! OKです」
3分が少し過ぎ、近藤が喜色の声を上げた。
「ようし、よくやったっ」
同時に、ごぉん、ごぉんとうなるような音がし、艦橋の周りに遮蔽が降り、また周辺の明かりの色が変わった。 次々とコントロールパネルが反応し、防壁が降りていく。
「な、なにが……」
ロデムの顔色が変わり、逆光の古代の表情はわからない。
艦内を艦橋からの集中コントロールで制御していた。
直接、彼らが対峙した作業要員や戦闘員、亜人は拘束して手近な部屋に放り込み、こっそりと艦橋へ潜り込んだのだ。
素早い潜入だった。
まだ“そっち”方のフリをしたのは、艦内を騙すため――艦内からの問い合わせには、くみ上げたロデムの合成音声で柴田が対応しつつ、外にもそう気づかせない間、近藤がコントロール制御を少しずつ、しかも素早く切り替えていったのである。
現在、艦橋は完全に要塞化し、艦のコントロールは一手に此処に握られていた。
『どうした! 何があったんだ!!』
『制御不能! 艦は!?』
あちこちからノイズまじりの音声が入り、ばらばらと外に人の気配もしたが、彼らは動じなかった。
いずれにせよ、亜人たちが体温を保てる最低の室温に固定されているため、地球人以外は動けるものではない。
死にはしないが。
「何をした? どうして、お前たちは……」
そんなことができる? と、ロデムが初めて真剣な顔で古代を見上げた。
☆
古代がこの艦を見たときに、この作戦を思いついたにはワケがある。
辺境警備から独立艦ヤマト、太陽系外周艦隊。――長距離航行艦や戦艦を渡り歩き、若い頃から艦長も勤めてきた。その古代進である。
この艦は、防衛軍が廃艦にし、その後行方のわからなかった戦艦――おそらく[みらい]。
船名は削られていたが、フォルムを見れば艦の名やタイプなどわかる。
古代が乗艦していたことのある[ひかり]と双子艦で、システムも同じ。
どこに何があるか熟知しているといってもよく、それは格納庫からボイラー室へあがる間に確信となった。
だからこその強行突破でもあったのだ。
「貴方はこれ以上、話さないだろう――」
古代はそう言った。「だが、貴方を連れていけばほぼそれで終わる。ここまでの情報でも十分だからね――だから、死のうと思っても無駄ですよ。すでに私は、理解した」
これも古代のハッタリではあるが、自殺を留める力にはなるかもしれなかった。
「日向、代われ」
古代は指揮を自分が引き継ぐ前に、戦闘班長に指示を出す。
「絶対に、死なせるな。方法は、わかるな」
「はいっ」
「拘束しておけ。見張りをつける余裕はないからな――アクエリアスへ戻るまで、近藤に監視、頼めるか?」
「はい、了解」
結局、手が足りないから艦橋にそのまま置いておくことにし、薬を打って眠らせた。
これで5時間は目覚めない――その間に、戦闘を終わらせて帰艦すればよいのだった。
「よし、行くぞ――」
背を向けて、戦闘指揮席に座る古代を見て、
(艦長――少し嬉しそうなんですけどねぇ…)
少し呆れた日向である。
ふと横を見ると、通信パネルに張り付いていた柴田がこっちを見て、同じことを考えていることがわかった。
元戦艦[みらい]は――だろう、きっと――古代進の指揮の下、防衛軍の艦隊に向かっていった。
……戦闘は混乱に突入するのか!? まさか。
古代は「急上昇する。全員、回転に備えろ」
ぐい、と(片手で)操縦桿を引き、その艦はスピードを上げた。
(= 18 = へ続く)
◆ ◆
コメント御礼、など。
素早い拍手コメントをいくつかいただき、ありがとうございます。
この古代くん、かっこいいですか??? らんぼーものなだけだったりして(笑)。
いやワタクシ、ただいま「パートI」マイブームなものですから、はい、こういう話になっております。
またこの「星の石事件」について書けなんてゆわないでくださいね~(^_^;)。話はすぐできるんですが(背景とかね)、民族闘争とか書くのは、本当にしんどいんで。まぁ「ネタ」ってことでどうぞご勘弁を。
それに、ヤマト関係ないですしねぇ。
“そっち方面”でいえば、佐々と古代がこの先、かかわった唯一の辺境区独立運動っつのが唯一の民族系闘争でしょうか。これやると、どうしても“体制側・官人”の古代くんたち、悪者にならざるを得ませんからね、書きませんて。
さて、「まにあなつっこみ」(^_^;)をいただいたTさま☆
……これ、連載なので前のを忘れてうっかり違うこと書いちゃったりすること、実はあります。
で、こっそり「あう!」って直したりしてます。
いま、直しました。ご指摘、ありがとうございました(_ _;)
扱いも、ですが。まず、大きさ違うやろ>自分 脱出する時に、「一番大きい旗艦らしきもの」って古河がゆってるぢゃんよね。
ということで、ありがとうございました。
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入
= 16 = 占拠
= 17 = 過去
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
☆
「司令っ! 古代さん、CTがっ!」
「大丈夫だ――古河ならこの艦を避けてくれる」
真正面からぶつかってくるかと思い、
「わぁっ!」と叫び声を上げた柴田と日向だが、ひゅん、とそれらは艦橋を舐めて艦の底へ潜った。
「ひぃぃ、心臓に悪いよ」
「さっすがだなぁ、あの人たち」
その間もロデムは古代を見ながらにやにや笑っているだけだった。
長年の反体制暮らしで人も変わってしまったのか。ロデムといえば高潔な艦長として知られた男だったが、今の彼にはその見る影もない。
――彼は覚えていないだろうが、古代は若い頃、遠くから見知ったことがあったのだ。
それを少し悲しく思った。
だが同情するほど余裕もなく、また共感もしなかった。
売国奴――地球を最も苦境に落としいれ多くの人の命を奪った(ガルマン=)ガミラスと提携し、現在のオリオン腕の平和を守って貰っている地球。その盟約の要にいる古代進。
だがな。
古代は胸の裡で短くつぶやいた。
――われわれ“も”、ガミラス本星を滅ぼしたのだ。
そうして、地球が生き残るために幾つの星を死に追いやっただろう。
☆
「司令っ! OKです」
3分が少し過ぎ、近藤が喜色の声を上げた。
「ようし、よくやったっ」
同時に、ごぉん、ごぉんとうなるような音がし、艦橋の周りに遮蔽が降り、また周辺の明かりの色が変わった。 次々とコントロールパネルが反応し、防壁が降りていく。
「な、なにが……」
ロデムの顔色が変わり、逆光の古代の表情はわからない。
艦内を艦橋からの集中コントロールで制御していた。
直接、彼らが対峙した作業要員や戦闘員、亜人は拘束して手近な部屋に放り込み、こっそりと艦橋へ潜り込んだのだ。
素早い潜入だった。
まだ“そっち”方のフリをしたのは、艦内を騙すため――艦内からの問い合わせには、くみ上げたロデムの合成音声で柴田が対応しつつ、外にもそう気づかせない間、近藤がコントロール制御を少しずつ、しかも素早く切り替えていったのである。
現在、艦橋は完全に要塞化し、艦のコントロールは一手に此処に握られていた。
『どうした! 何があったんだ!!』
『制御不能! 艦は!?』
あちこちからノイズまじりの音声が入り、ばらばらと外に人の気配もしたが、彼らは動じなかった。
いずれにせよ、亜人たちが体温を保てる最低の室温に固定されているため、地球人以外は動けるものではない。
死にはしないが。
「何をした? どうして、お前たちは……」
そんなことができる? と、ロデムが初めて真剣な顔で古代を見上げた。
☆
古代がこの艦を見たときに、この作戦を思いついたにはワケがある。
辺境警備から独立艦ヤマト、太陽系外周艦隊。――長距離航行艦や戦艦を渡り歩き、若い頃から艦長も勤めてきた。その古代進である。
この艦は、防衛軍が廃艦にし、その後行方のわからなかった戦艦――おそらく[みらい]。
船名は削られていたが、フォルムを見れば艦の名やタイプなどわかる。
古代が乗艦していたことのある[ひかり]と双子艦で、システムも同じ。
どこに何があるか熟知しているといってもよく、それは格納庫からボイラー室へあがる間に確信となった。
だからこその強行突破でもあったのだ。
「貴方はこれ以上、話さないだろう――」
古代はそう言った。「だが、貴方を連れていけばほぼそれで終わる。ここまでの情報でも十分だからね――だから、死のうと思っても無駄ですよ。すでに私は、理解した」
これも古代のハッタリではあるが、自殺を留める力にはなるかもしれなかった。
「日向、代われ」
古代は指揮を自分が引き継ぐ前に、戦闘班長に指示を出す。
「絶対に、死なせるな。方法は、わかるな」
「はいっ」
「拘束しておけ。見張りをつける余裕はないからな――アクエリアスへ戻るまで、近藤に監視、頼めるか?」
「はい、了解」
結局、手が足りないから艦橋にそのまま置いておくことにし、薬を打って眠らせた。
これで5時間は目覚めない――その間に、戦闘を終わらせて帰艦すればよいのだった。
「よし、行くぞ――」
背を向けて、戦闘指揮席に座る古代を見て、
(艦長――少し嬉しそうなんですけどねぇ…)
少し呆れた日向である。
ふと横を見ると、通信パネルに張り付いていた柴田がこっちを見て、同じことを考えていることがわかった。
元戦艦[みらい]は――だろう、きっと――古代進の指揮の下、防衛軍の艦隊に向かっていった。
……戦闘は混乱に突入するのか!? まさか。
古代は「急上昇する。全員、回転に備えろ」
ぐい、と(片手で)操縦桿を引き、その艦はスピードを上げた。
(= 18 = へ続く)
◆ ◆
コメント御礼、など。
素早い拍手コメントをいくつかいただき、ありがとうございます。
この古代くん、かっこいいですか??? らんぼーものなだけだったりして(笑)。
いやワタクシ、ただいま「パートI」マイブームなものですから、はい、こういう話になっております。
またこの「星の石事件」について書けなんてゆわないでくださいね~(^_^;)。話はすぐできるんですが(背景とかね)、民族闘争とか書くのは、本当にしんどいんで。まぁ「ネタ」ってことでどうぞご勘弁を。
それに、ヤマト関係ないですしねぇ。
“そっち方面”でいえば、佐々と古代がこの先、かかわった唯一の辺境区独立運動っつのが唯一の民族系闘争でしょうか。これやると、どうしても“体制側・官人”の古代くんたち、悪者にならざるを得ませんからね、書きませんて。
さて、「まにあなつっこみ」(^_^;)をいただいたTさま☆
……これ、連載なので前のを忘れてうっかり違うこと書いちゃったりすること、実はあります。
で、こっそり「あう!」って直したりしてます。
いま、直しました。ご指摘、ありがとうございました(_ _;)
扱いも、ですが。まず、大きさ違うやろ>自分 脱出する時に、「一番大きい旗艦らしきもの」って古河がゆってるぢゃんよね。
ということで、ありがとうございました。