tit:龍の棲む26 [回天-開戦前夜]
龍の棲む 【回天-開戦前夜】
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入
= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
= 19 =
包囲網を簡単に突破したアリオスは(もちろん古河たち先行したCT隊の活躍のおかげもあり――どうやら敵は、だいぶんビビっている模様である。積極的に攻めてこようという気力が感じられなかった)、周りの小さな艦を撃破すると、艦隊の中心部へ向かっていた。
(なるべく犠牲は少なくしたいのだが――仕方あるまい)
防衛軍の威厳を見せ付けなければならない、という思いもある。
反乱軍なぞ許しておいてはいけないのだ――広い意味で。深い宇宙の平和のためには。
たとえそれがまやかしでも、父から聞かされて育ったような、そうして自分たちも繰り返し学んできたような、あんな歴史を繰り返すのはご免だった。そのためにこそ、自分たちは此処にいるのだから――。
(何としても、阻止する!)
父・進の援護と奪回。これがあくまでも守たちの第一義である。
だが、そのまま引き返すような父ではなかったし、彼の目的を遂げなければ、地球の、さらに古代進自身の明日も、無いのである。
(あぁ、父さん――無事でいてくれ)。
古代守は、出撃し艦橋に立って初めて、心の裡ででもそういう祈りをつぶやいた。
★
やる気のなさそうな砲撃が返ったが当たる気遣いはなさそうだった。
戦闘員の声にパネルに目を向けると、目前に迫った艦隊の中から旗艦がぐっとせり上がってくるのがわかった。その重量感は半端ではない。
「艇長っ!」悲鳴のような声があがり、「砲撃をっ!! ご許可ください」
「だめだ」古代守は断固としてそう言うと、その近づいてくる様を睨み付けた。
――似ている。何かに。
古代守が考えていたことは形にならなかったが、実際は進と同じであった。
そのあたりはさすがに親子である。
色を変え、外の形を多少はいじったとしても砲塔の位置や全体のフォルム、その艦の持つ雰囲気というものは変えられない。
戦いの歴史を持ち、人の汗が染みたものなら、なおのこと――まぁそれは感傷に過ぎるといわれてしまうかもしれないのだが。
守は無意識ながらも、これが既知の艦だと気づいていたことになる。
☆
「古代艇長! 司令からですっ、通信が入りましたっ!!」
爆撃が始まり、味方に損傷こそ出ないまでも、戦闘が混戦を帯び始めていた。
宇宙空間の戦闘は百人・千人単位があっさりと飛ばされる。
最小限の人数で出てきているとはいえ、父がゲリラ戦を挑んだのなら、なるべく早く奪回して戦線離脱したいのも本音だった。
「つなげ」
守の口調は落ち着いていたが、内心では、(待ってました)というところだっただろう。
いや、(遅いよ、父さん)だったかもしれない。
『――アリオス艦艇長、こちら、艦隊司令古代進』
「こちら、アリオス。ご無事ですか」
『遠路ご苦労です――この艦はわれわれが占拠した。敵リーダーを捕捉してある。至急、アクエリアス艦とイサス艦と協力し外から捕捉してくれ』
「了解――状況は」
『いま、データでそちらとアクエリアスへ送る。――ただいま艦橋で集中コントロールしている。外のハッチを開けるから突入して武装解除してほしい』
「了解――アクエリアス、聞こえましたか」
『――こちらアクエリアス。眞南、了解した。ただちに救援に向かう』
「こちらも2隊を向かわせます。――古河隊、周辺待機してください」
『おう! こっちも了解だ』
その間も、周辺からの攻撃は続いていたが、転じた旗艦の動きに相手が混乱した隙に防衛軍側の他艦が押さえた。
降伏を呼びかけたが投降した者はわずかだ。
中には乗員が中でもめたのか自爆したり、動かなくなった艦もあり、指揮系統の混乱――もしくは秩序立った指揮系統が無いことを物語っている。
戦闘は、短い時間で終わりを告げた。
(= 20 = へ続く)
= 0 = 序章
= 1 = 戦闘空域へ
= 2 = ワープアウト
= 3 = 初陣
= 4 = 邂逅
= 5 = 救出・1
= 6 = 拉致
= 7 = 救出・2
= 8 = 救出・3
= 9 = 再び
= 10 = 作戦始動
= 11 = 合流
= 12 = 怪我
= 13 = 隠された宙港
= 14 = 潜行
= 15 = 突入
= 16 = 占拠
= 17 = 過去
= 18 = 戦闘開始!
= 19 = 入電
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
= 19 =
包囲網を簡単に突破したアリオスは(もちろん古河たち先行したCT隊の活躍のおかげもあり――どうやら敵は、だいぶんビビっている模様である。積極的に攻めてこようという気力が感じられなかった)、周りの小さな艦を撃破すると、艦隊の中心部へ向かっていた。
(なるべく犠牲は少なくしたいのだが――仕方あるまい)
防衛軍の威厳を見せ付けなければならない、という思いもある。
反乱軍なぞ許しておいてはいけないのだ――広い意味で。深い宇宙の平和のためには。
たとえそれがまやかしでも、父から聞かされて育ったような、そうして自分たちも繰り返し学んできたような、あんな歴史を繰り返すのはご免だった。そのためにこそ、自分たちは此処にいるのだから――。
(何としても、阻止する!)
父・進の援護と奪回。これがあくまでも守たちの第一義である。
だが、そのまま引き返すような父ではなかったし、彼の目的を遂げなければ、地球の、さらに古代進自身の明日も、無いのである。
(あぁ、父さん――無事でいてくれ)。
古代守は、出撃し艦橋に立って初めて、心の裡ででもそういう祈りをつぶやいた。
★
やる気のなさそうな砲撃が返ったが当たる気遣いはなさそうだった。
戦闘員の声にパネルに目を向けると、目前に迫った艦隊の中から旗艦がぐっとせり上がってくるのがわかった。その重量感は半端ではない。
「艇長っ!」悲鳴のような声があがり、「砲撃をっ!! ご許可ください」
「だめだ」古代守は断固としてそう言うと、その近づいてくる様を睨み付けた。
――似ている。何かに。
古代守が考えていたことは形にならなかったが、実際は進と同じであった。
そのあたりはさすがに親子である。
色を変え、外の形を多少はいじったとしても砲塔の位置や全体のフォルム、その艦の持つ雰囲気というものは変えられない。
戦いの歴史を持ち、人の汗が染みたものなら、なおのこと――まぁそれは感傷に過ぎるといわれてしまうかもしれないのだが。
守は無意識ながらも、これが既知の艦だと気づいていたことになる。
☆
「古代艇長! 司令からですっ、通信が入りましたっ!!」
爆撃が始まり、味方に損傷こそ出ないまでも、戦闘が混戦を帯び始めていた。
宇宙空間の戦闘は百人・千人単位があっさりと飛ばされる。
最小限の人数で出てきているとはいえ、父がゲリラ戦を挑んだのなら、なるべく早く奪回して戦線離脱したいのも本音だった。
「つなげ」
守の口調は落ち着いていたが、内心では、(待ってました)というところだっただろう。
いや、(遅いよ、父さん)だったかもしれない。
『――アリオス艦艇長、こちら、艦隊司令古代進』
「こちら、アリオス。ご無事ですか」
『遠路ご苦労です――この艦はわれわれが占拠した。敵リーダーを捕捉してある。至急、アクエリアス艦とイサス艦と協力し外から捕捉してくれ』
「了解――状況は」
『いま、データでそちらとアクエリアスへ送る。――ただいま艦橋で集中コントロールしている。外のハッチを開けるから突入して武装解除してほしい』
「了解――アクエリアス、聞こえましたか」
『――こちらアクエリアス。眞南、了解した。ただちに救援に向かう』
「こちらも2隊を向かわせます。――古河隊、周辺待機してください」
『おう! こっちも了解だ』
その間も、周辺からの攻撃は続いていたが、転じた旗艦の動きに相手が混乱した隙に防衛軍側の他艦が押さえた。
降伏を呼びかけたが投降した者はわずかだ。
中には乗員が中でもめたのか自爆したり、動かなくなった艦もあり、指揮系統の混乱――もしくは秩序立った指揮系統が無いことを物語っている。
戦闘は、短い時間で終わりを告げた。
(= 20 = へ続く)