甘い二十>No.18・1(出張Up)
自宅のPCの調子が悪く、とうとうだめな子になってしまいました。「温泉」の続きが(涙)。
ですので、web上に上げておいた「こちら」を先に公開することにします。とある事情で、【18】だけ、ここからスタートです。
[甘い二十之御題・出張Up]
突然ですが、ずっとウェッブで展開中であります この御題、この部分だけblogに出張です。
理由は…基本、“Original Charactorを出さない”&“本編side storyである”を縛りにしていた御題だったのですが、どうしても。どうしても、此処でこれを書きたくなったので、一部だけ、こちらへ出てきたというわけです。(本体はあちらへつながっています…予定です)
つまり。
新月worldの ★オリジナル・キャラクター が出ます★。なので、お厭な方は、スルーしてくださいね。
これも昔の執筆ものがベース(なんと1982年とかです・笑)なので、若干、プチパラレル気味ですが、まだ矛盾するほどではありません。
テーマは、ブレてないはずですが。
よろしければ、どうぞ(_ _)
・・・・・・・・
【18. 僕を叱って】
= 1 =
この訓練用小型艇は、ぎゅいん、と空中で旋回すると砂漠の真ん中にある中継基地の外れに着陸した。
強引ではあるがその空間に、ものの1mとズレることなく着け、さらにそのスピードときたら「急停止」と言ってもよいくらいだ。
しかもそれは大気圏外から戻ってきたばかりである。その証拠に、外郭が少し熱で黒く溶けていた。
訓練艇は貴重品であるし、本来なら咎められるか罰則である。だがそれどころではない規定破りはその艇を動かしていた若者にはしょっ中のことで、着陸した途端、スピーカーとインカムからのわめき声を無視すると、ひらりと艇から飛び降り、一目散に基地の中へ向かっていく。
またそのスピードたるや、地球に戻ってきたばかりとは思えなかった。
「おいっ、セイ! ――聖樹(せいじゅ)!! ま、待てよっ。待てったら」
一緒に遅れずになんとか飛び込んだ基地の中で、ロボット警備に止められる前にそれをすり抜けた若者を、その親友が追う。
が、こちらは息を切らしており、柱に手をついて、一息ついた。
「古代聖樹っ。当麻修(しゅう)! またお前らかっ!! いい加減にしろ」
飛んできた駐在の一人に呆れるように怒鳴られて、当麻はその場にへたり込みそうになった。
「――まぁた何か騒ぎ起こしにやってきやがったな、お前ら」
「そ、そんな……」
実直な当麻はいつも聖樹に振り回されっぱなしである。
なだめるのは俺の役目、と割り切ってもいるが、今回は止め切れなかった。
「どうした。何の騒ぎだ」そこへ通りかかった先任がいた。
はっ、と敬礼して身体を起こす警備員に、「なぁんだ、また聖樹かよ」親しい口を利く。
彼は同情するような気の毒がるような風情で両手を広げると、
「――あいつのは病気だ。……おめぇも苦労するね」
「大輔――なんとか止めてくれ。あいつ……あいつ。重大な軍規違反を」
「あぁ……でもな」
止めて聞くやつじゃあるめ? と彼は言って。
「行こう」と当麻を立たせた。
加藤大輔――2人より1年先輩の幼馴染。聖樹と自分は親友同士だと思っているが、時折、育った環境も、背負わされた運命も似ているこの大輔と聖樹の絆に、嫉妬めいた想いを持つことがある。
――入っていけない。とはいえこの加藤大輔は卒業し早くも実力遺憾なく発揮し始めている、自他共に認めるエリートだ。
自分――航法の先輩でもあり、それも引け目に思うこともある。だがそれも、“諸刃の刃”なのである。
当麻は加藤大輔に連れられ、奥へと歩いていった。
★
聖樹は、いくつかある訓練生用の通信室へ飛び込んだ。慣れた手つきでダイヤルをセットする。
防衛軍本部につながった。
《――受信。要件をどうぞ。所属と市民分類を》
ロボットメッセージに、すぐにコードを打ち込み、いらいらしながら画面に人が現れるのを待った。
《宇宙戦士訓練生、本部所属訓練学校――名前と所属は××-コード▼▼》
「古代、聖樹。宇宙戦士訓練学校戦闘科5年。分類β……オヤジを呼べっ!!」
画面に映った相手は表情も動かさず、《もう一度、聞く。用件を、どうぞ》と返った。
若い局員だった。よく知っている男である。
「オヤジを、呼べ。と言った。ほかに用件はない。それも、すぐにだっ」
《古代聖樹! 上官を呼ぶのになんと言う言い草だ。きちんと、申告っ!》
「うるさい。さっさとしろ」
《切りますよ――》
これがもう少し年配の人間だったら即座に切られていただろう。
聖樹はムッとしたが、ギッと唇を噛む。ちくしょう。
「――太陽系外周第七艦隊司令、古代進少将に面談求めます」
《最初から、そうやれ――司令は来客中だ。ちょっと待っていろ》
言い残して画面から離れる――聖樹は内心を抑えてぐっとその数分を耐えた。
まもなく戻った管理官は、古代進の伝言を伝えると言った。
「何故、逢えないんだっ。5分でいい。――直接会って、話したいことがある」
係官は厳しい顔をすると聖樹に対した。
《――君のコードはC-XIIIのグリーンだ。司令にこちらからコンタクトを取るにはG-V以上、ブルーコードが必要なのは知っているはずだ。資格も階位も足りない》
「そ、そんなことは……」わかっている。
と言い放てないのは聖樹の側にも弱みがあるからだ。父親だから――いくら“雲の上の人”でも、血のつながった実の父だ。
現に、兄・守は訓練生の頃から頻繁にあの人と会っていたじゃないか。
だがその聖樹も内心の声を表に出せるほど子どもにはなれない。
《面談はできない――必要も無いと仰せだ》
「なにっ!? 俺の用件はまだ、話してない」
一瞬、画面が静止した。
古代進の顔がそこに映った。
《――司令》という声が背後で響くが、すぐに消えた。
《古代聖樹! 訓練生の身で何という態度を取る。秩序も訓練のうちだろう》
聖樹は、ようやく現れた数か月ぶりに見た父の顔に、一瞬、ひるんだが、次に怒りで顔を真っ赤にして言った。
「司令! 何故、俺を外すんですかっ。俺のオーロラII世号配属は、すでに決まっていたはずだっ」
古代進は表情も変えず、目の前の少年を見返した。
《決定は発表したとおりだ。お前はαケンウリ方面の主力戦艦ディオニソスに乗艦、訓練の最終行程を終える――そう聞かなかったかね》
「何故だっ! 横暴だ。俺は、そのために今期トップを取った。選抜試験も通過したはずだ。内定もしていたんだ――あんたが反対し、外したって言ってくれたやつがいる。何故だ」
《頭を冷やせ》
古代進は冷静だった。
「……納得、できない。すぐ、そこに行ってやるっ、待ってろ」
聖樹は父親の顔を指差して言ったが、古代は静かに見返すだけだった。
《――来る必要は、無い。来ても同じだ。それに君は、私には逢えんよ……此処ではな》
くそっ。わなわなと震えたが、面と向かっていない以上、通信を切られたら終わりだった。
「――何故、俺は外されたんだ。俺は、あの艦に乗るためだけに…、これまで」
《お前一人ではない。そういう者は沢山いる――それに》
古代聖樹、と父親は言った。
《外された、と言ったな。もしそれが事実だったとして……理由がわからんか。――わからんのならそれが理由だろう》
「なんっ! ……」
ザラリという音がして、画面は途切れ、管理官の声だけが追いかけた。
《面談は、終わりだ――古代聖樹。あとがつかえておられる。切るぞ》
「――」
くっ、と身体を折り曲げ、聖樹は屈辱に燃えた目を伏せた。
ばん、とドアを開け放ち、通路へ出たところで加藤大輔と当麻修に会う。
「聖樹--」「セイ……」
2人の心配はわかったが、くそっ、と彼はつぶやくと、それを押しのけてもときた方へ飛び出していった。
(= 2 = へ続く)
ですので、web上に上げておいた「こちら」を先に公開することにします。とある事情で、【18】だけ、ここからスタートです。
[甘い二十之御題・出張Up]
突然ですが、ずっとウェッブで展開中であります この御題、この部分だけblogに出張です。
理由は…基本、“Original Charactorを出さない”&“本編side storyである”を縛りにしていた御題だったのですが、どうしても。どうしても、此処でこれを書きたくなったので、一部だけ、こちらへ出てきたというわけです。(本体はあちらへつながっています…予定です)
つまり。
新月worldの ★オリジナル・キャラクター が出ます★。なので、お厭な方は、スルーしてくださいね。
これも昔の執筆ものがベース(なんと1982年とかです・笑)なので、若干、プチパラレル気味ですが、まだ矛盾するほどではありません。
テーマは、ブレてないはずですが。
よろしければ、どうぞ(_ _)
・・・・・・・・
【18. 僕を叱って】
= 1 =
この訓練用小型艇は、ぎゅいん、と空中で旋回すると砂漠の真ん中にある中継基地の外れに着陸した。
強引ではあるがその空間に、ものの1mとズレることなく着け、さらにそのスピードときたら「急停止」と言ってもよいくらいだ。
しかもそれは大気圏外から戻ってきたばかりである。その証拠に、外郭が少し熱で黒く溶けていた。
訓練艇は貴重品であるし、本来なら咎められるか罰則である。だがそれどころではない規定破りはその艇を動かしていた若者にはしょっ中のことで、着陸した途端、スピーカーとインカムからのわめき声を無視すると、ひらりと艇から飛び降り、一目散に基地の中へ向かっていく。
またそのスピードたるや、地球に戻ってきたばかりとは思えなかった。
「おいっ、セイ! ――聖樹(せいじゅ)!! ま、待てよっ。待てったら」
一緒に遅れずになんとか飛び込んだ基地の中で、ロボット警備に止められる前にそれをすり抜けた若者を、その親友が追う。
が、こちらは息を切らしており、柱に手をついて、一息ついた。
「古代聖樹っ。当麻修(しゅう)! またお前らかっ!! いい加減にしろ」
飛んできた駐在の一人に呆れるように怒鳴られて、当麻はその場にへたり込みそうになった。
「――まぁた何か騒ぎ起こしにやってきやがったな、お前ら」
「そ、そんな……」
実直な当麻はいつも聖樹に振り回されっぱなしである。
なだめるのは俺の役目、と割り切ってもいるが、今回は止め切れなかった。
「どうした。何の騒ぎだ」そこへ通りかかった先任がいた。
はっ、と敬礼して身体を起こす警備員に、「なぁんだ、また聖樹かよ」親しい口を利く。
彼は同情するような気の毒がるような風情で両手を広げると、
「――あいつのは病気だ。……おめぇも苦労するね」
「大輔――なんとか止めてくれ。あいつ……あいつ。重大な軍規違反を」
「あぁ……でもな」
止めて聞くやつじゃあるめ? と彼は言って。
「行こう」と当麻を立たせた。
加藤大輔――2人より1年先輩の幼馴染。聖樹と自分は親友同士だと思っているが、時折、育った環境も、背負わされた運命も似ているこの大輔と聖樹の絆に、嫉妬めいた想いを持つことがある。
――入っていけない。とはいえこの加藤大輔は卒業し早くも実力遺憾なく発揮し始めている、自他共に認めるエリートだ。
自分――航法の先輩でもあり、それも引け目に思うこともある。だがそれも、“諸刃の刃”なのである。
当麻は加藤大輔に連れられ、奥へと歩いていった。
★
聖樹は、いくつかある訓練生用の通信室へ飛び込んだ。慣れた手つきでダイヤルをセットする。
防衛軍本部につながった。
《――受信。要件をどうぞ。所属と市民分類を》
ロボットメッセージに、すぐにコードを打ち込み、いらいらしながら画面に人が現れるのを待った。
《宇宙戦士訓練生、本部所属訓練学校――名前と所属は××-コード▼▼》
「古代、聖樹。宇宙戦士訓練学校戦闘科5年。分類β……オヤジを呼べっ!!」
画面に映った相手は表情も動かさず、《もう一度、聞く。用件を、どうぞ》と返った。
若い局員だった。よく知っている男である。
「オヤジを、呼べ。と言った。ほかに用件はない。それも、すぐにだっ」
《古代聖樹! 上官を呼ぶのになんと言う言い草だ。きちんと、申告っ!》
「うるさい。さっさとしろ」
《切りますよ――》
これがもう少し年配の人間だったら即座に切られていただろう。
聖樹はムッとしたが、ギッと唇を噛む。ちくしょう。
「――太陽系外周第七艦隊司令、古代進少将に面談求めます」
《最初から、そうやれ――司令は来客中だ。ちょっと待っていろ》
言い残して画面から離れる――聖樹は内心を抑えてぐっとその数分を耐えた。
まもなく戻った管理官は、古代進の伝言を伝えると言った。
「何故、逢えないんだっ。5分でいい。――直接会って、話したいことがある」
係官は厳しい顔をすると聖樹に対した。
《――君のコードはC-XIIIのグリーンだ。司令にこちらからコンタクトを取るにはG-V以上、ブルーコードが必要なのは知っているはずだ。資格も階位も足りない》
「そ、そんなことは……」わかっている。
と言い放てないのは聖樹の側にも弱みがあるからだ。父親だから――いくら“雲の上の人”でも、血のつながった実の父だ。
現に、兄・守は訓練生の頃から頻繁にあの人と会っていたじゃないか。
だがその聖樹も内心の声を表に出せるほど子どもにはなれない。
《面談はできない――必要も無いと仰せだ》
「なにっ!? 俺の用件はまだ、話してない」
一瞬、画面が静止した。
古代進の顔がそこに映った。
《――司令》という声が背後で響くが、すぐに消えた。
《古代聖樹! 訓練生の身で何という態度を取る。秩序も訓練のうちだろう》
聖樹は、ようやく現れた数か月ぶりに見た父の顔に、一瞬、ひるんだが、次に怒りで顔を真っ赤にして言った。
「司令! 何故、俺を外すんですかっ。俺のオーロラII世号配属は、すでに決まっていたはずだっ」
古代進は表情も変えず、目の前の少年を見返した。
《決定は発表したとおりだ。お前はαケンウリ方面の主力戦艦ディオニソスに乗艦、訓練の最終行程を終える――そう聞かなかったかね》
「何故だっ! 横暴だ。俺は、そのために今期トップを取った。選抜試験も通過したはずだ。内定もしていたんだ――あんたが反対し、外したって言ってくれたやつがいる。何故だ」
《頭を冷やせ》
古代進は冷静だった。
「……納得、できない。すぐ、そこに行ってやるっ、待ってろ」
聖樹は父親の顔を指差して言ったが、古代は静かに見返すだけだった。
《――来る必要は、無い。来ても同じだ。それに君は、私には逢えんよ……此処ではな》
くそっ。わなわなと震えたが、面と向かっていない以上、通信を切られたら終わりだった。
「――何故、俺は外されたんだ。俺は、あの艦に乗るためだけに…、これまで」
《お前一人ではない。そういう者は沢山いる――それに》
古代聖樹、と父親は言った。
《外された、と言ったな。もしそれが事実だったとして……理由がわからんか。――わからんのならそれが理由だろう》
「なんっ! ……」
ザラリという音がして、画面は途切れ、管理官の声だけが追いかけた。
《面談は、終わりだ――古代聖樹。あとがつかえておられる。切るぞ》
「――」
くっ、と身体を折り曲げ、聖樹は屈辱に燃えた目を伏せた。
ばん、とドアを開け放ち、通路へ出たところで加藤大輔と当麻修に会う。
「聖樹--」「セイ……」
2人の心配はわかったが、くそっ、と彼はつぶやくと、それを押しのけてもときた方へ飛び出していった。
(= 2 = へ続く)