甘い二十>No.20 【再び巡り合えたから】
20.【再び巡り合えたから】
・・西暦2221年、辺境開拓宙域より・・
♪このお話は、『宇宙戦艦ヤマト・復活篇ディレクターズカット版』を元にしています。その感想文のようなものです。ネタバレは含んでいませんが、復活篇をご覧になっていない方にはわからない部分もあるかもしれません(ストーリーの説明は省いていますので)ので、ご了承ください。
これまで短編は、本編がわからなくてもお楽しみいただけるように書いてきましたが、これは、唯一の例外となりますのでご了承いただければ幸いです。それでもよろしいという方のみ、お読みください。2回完結です♪
・・・
= 1 =
(ヤマトよ、さらばだ――)
島と沖田さんの魂を乗せて、ヤマトは水没した。宇宙に生まれた、新しい水の星の中に。その凍り付いた光は17年の間、見上げれば其処にあって、己の罪と、後悔を見せつけ続ける。一方で、英雄の名ばかりが一人歩きし、軍の中にも、世間にも、居場所はなくなっていった。
大切な同志・そしてすべてをわかちあってきた妻と。最愛の娘。子の生まれた喜びと共に、仕事よりむしろ美雪と過ごした日々は充実していた。自分でも命を生み出せるのだ、という救い…そして、幸せ。
この幸福を、やつらにも知って欲しかったと、そうしてまたその想いは自らを苛む。
逃げてはならない。
沖田さんも、島も。そうしてもっと以前の戦いで失われていった加藤たちだって、そう言うに違いない。加藤、山本、揚羽。そうして多くの多くの仲間たち、、、大切な兄さんと慈愛の女神。そして姪。
★
ほぉと息を吐いて、古代進は自室の固い木の椅子に斜めに座ると、折り目の形まで覚えてしまった手紙をまた、胸ポケットから出して眺めた。
“――あなた、宇宙はいかが?”
ユキからの手紙が、彼女の声が、文字を伝わって聞こえてくるように思い、しばしの幸福に包まれる。
(大丈夫だ――遠く離れていても)
そう思う安寧と、だが少しの複雑な思いと不安。
(――お前たちを放り出して。俺は宇宙を彷徨っている)
古代の魂は安らぐ場所を得ず、だがやはり宇宙の闇と、そこで得た仕事とは、彼を救っていた。――そして彼を船長と仰ぐ、ベテラン・若者の入り混じった貨物船の仲間たちも。
(地球か――)
遠くに想うのは、その蒼い星ばかりではない。過ぎてきた時間と、だが苦しさは遠くに離れれば少しは癒える。だがそれも故郷(ちきゅう)が平和であるとわかっているからこそなのだ。
彼女のやわらかな声と髪を思い出し、娘の愛らしい瞳を思い出す--だがそれもこの星の海の中では現実感に乏しい。
☆
その時、びぃと警報が鳴った。
この辺境開拓区域で、めったに鳴ることはない非常警報は、だが鳴った時は迅速な対応が求められる。そうでなければ単独の古い宇宙船一隻。宇宙の藻屑になっても、誰も助けてはくれないからだ。
古代はさっと衣服を取ると、艦橋へ登っていった。
「船長、難破船です!」
こんなところに、難破船? ふと疑問が浮かぶ。同時に、胸騒ぎも。これは、“カン”だろうか?
「全速前進っ! 生存者の救助に向かう」
心なしか張りのある声が響き、《貨物船ゆき》は、再び古代を運命の手に――地球の命運そのものへといざなう場へ向かっていった。
待っていたのは「Blue Noah」……地球防衛軍の護衛艦であった。そしてそこにかつての自分や土門竜介のように、家族を理不尽な敵に奪われた戦闘士官・上条了がいたのである。
(……何かが起こっている)
「地球へ、向かえ」
古代進が即座にそう命じたのは、当然のことだっただろうか。
(= 2 = へ続く)
・・西暦2221年、辺境開拓宙域より・・
♪このお話は、『宇宙戦艦ヤマト・復活篇ディレクターズカット版』を元にしています。その感想文のようなものです。ネタバレは含んでいませんが、復活篇をご覧になっていない方にはわからない部分もあるかもしれません(ストーリーの説明は省いていますので)ので、ご了承ください。
これまで短編は、本編がわからなくてもお楽しみいただけるように書いてきましたが、これは、唯一の例外となりますのでご了承いただければ幸いです。それでもよろしいという方のみ、お読みください。2回完結です♪
・・・
= 1 =
(ヤマトよ、さらばだ――)
島と沖田さんの魂を乗せて、ヤマトは水没した。宇宙に生まれた、新しい水の星の中に。その凍り付いた光は17年の間、見上げれば其処にあって、己の罪と、後悔を見せつけ続ける。一方で、英雄の名ばかりが一人歩きし、軍の中にも、世間にも、居場所はなくなっていった。
大切な同志・そしてすべてをわかちあってきた妻と。最愛の娘。子の生まれた喜びと共に、仕事よりむしろ美雪と過ごした日々は充実していた。自分でも命を生み出せるのだ、という救い…そして、幸せ。
この幸福を、やつらにも知って欲しかったと、そうしてまたその想いは自らを苛む。
逃げてはならない。
沖田さんも、島も。そうしてもっと以前の戦いで失われていった加藤たちだって、そう言うに違いない。加藤、山本、揚羽。そうして多くの多くの仲間たち、、、大切な兄さんと慈愛の女神。そして姪。
ほぉと息を吐いて、古代進は自室の固い木の椅子に斜めに座ると、折り目の形まで覚えてしまった手紙をまた、胸ポケットから出して眺めた。
“――あなた、宇宙はいかが?”
ユキからの手紙が、彼女の声が、文字を伝わって聞こえてくるように思い、しばしの幸福に包まれる。
(大丈夫だ――遠く離れていても)
そう思う安寧と、だが少しの複雑な思いと不安。
(――お前たちを放り出して。俺は宇宙を彷徨っている)
古代の魂は安らぐ場所を得ず、だがやはり宇宙の闇と、そこで得た仕事とは、彼を救っていた。――そして彼を船長と仰ぐ、ベテラン・若者の入り混じった貨物船の仲間たちも。
(地球か――)
遠くに想うのは、その蒼い星ばかりではない。過ぎてきた時間と、だが苦しさは遠くに離れれば少しは癒える。だがそれも故郷(ちきゅう)が平和であるとわかっているからこそなのだ。
彼女のやわらかな声と髪を思い出し、娘の愛らしい瞳を思い出す--だがそれもこの星の海の中では現実感に乏しい。
その時、びぃと警報が鳴った。
この辺境開拓区域で、めったに鳴ることはない非常警報は、だが鳴った時は迅速な対応が求められる。そうでなければ単独の古い宇宙船一隻。宇宙の藻屑になっても、誰も助けてはくれないからだ。
古代はさっと衣服を取ると、艦橋へ登っていった。
「船長、難破船です!」
こんなところに、難破船? ふと疑問が浮かぶ。同時に、胸騒ぎも。これは、“カン”だろうか?
「全速前進っ! 生存者の救助に向かう」
心なしか張りのある声が響き、《貨物船ゆき》は、再び古代を運命の手に――地球の命運そのものへといざなう場へ向かっていった。
待っていたのは「Blue Noah」……地球防衛軍の護衛艦であった。そしてそこにかつての自分や土門竜介のように、家族を理不尽な敵に奪われた戦闘士官・上条了がいたのである。
(……何かが起こっている)
「地球へ、向かえ」
古代進が即座にそう命じたのは、当然のことだっただろうか。
(= 2 = へ続く)